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初恋がこじれにこじれて困ってます.32
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「ほら、ボッーっと突っ立ってないで中に入れよ。」
「はい。」
沙耶は相変わらず自分から余計なことを話してはいけないという約束を守っているため、ここまで何も話していない。
「その辺、適当に座って。」
「はい…。」
なに?この状況は。どうして私は瞬ちゃんの部屋に?小野寺君のことをあんな状態でほったらかしにして来ちゃったし。沙耶はもう何が何だか分からない。
「ほら、オレンジジュースだ。お前好きだろう。」
「あ、うん。」
そうだ、昔はこんなふうに私の好きなものをさり気なく覚えていてくれて、瞬ちゃんはいつも優しかった。
沙耶は昔のことを思い出すともうダメだ。涙が止められない。
「ビックリさせちゃったか?ゴメンな。」
沙耶は首を横に振る。泣いても怒られなかったことに少し驚きながら。
「それと、今までのこと全部謝る。すまなかった。」
そんなこと急に言われても、余計にパニクるだけで、沙耶は結局何もまともに話せない。
「もう、ふつうに話せよ。俺が悪かった。」
「…。」
これまで言いたいことはことごとく我慢してきた。そんな変な癖がついてしまって、話したいのになかなか言葉が出ない。
「えっと、あの、どうして瞬ちゃんは公園にいたの?」
やっと言えた言葉はそんな中身のない質問になってしまった。
「ああ、部内の情報は色んな所から入って来るからな。小野寺みたいに大っぴらにやってれば、すぐ俺の耳に入る。でもって、あいつは悪い奴じゃないんだがちょっと思い込みが激しいっていうのも聞いてたからな。それで、昨日沙耶が自主トレ自分でやるって言いだしたからさ、こりゃあ小野寺が何かやらかすの決定ということで、公園で張ってたんだ。」
「だけど、何で瞬ちゃんは私にそこまで親切にしてくれるの?」
沙耶はごく自然な気持ちを口にした。
「おおっ、いきなり核心を突いて来るな。まあ、俺もそろそろ観念しないとな。」
瞬ちゃんは向かい合って座っていたのだが、ふいに立ち上がると沙耶のすぐ横に腰をおろした。え、え、瞬ちゃん、何?近い、近いよ。さらに瞬ちゃんの腕が沙耶の肩に回されて、そのままギュッと引き寄せられ二人の身体は密着する。ええーっ!!どうしよう、どうしよう、死ぬ、死んじゃう!!
「沙耶」
「はいっ!」
「俺はお前が好きだよ。」
「はいっ!ええーっ??」
驚く沙耶の唇に瞬ちゃんの唇が重なった。う、うそ、うそ、き、キスしてる。
「そんなに硬くなるなよ。中学の頃の方が反応よかったぞ。」
そんなこと言われたって、展開が激しすぎて…。もうなにがなんだか…。あっ…。
二度目のキスはさっきより濃厚で…、沙耶は意識が遠のきそうになる。
「沙耶、かわいいな。好きだよ。」
そう言ってまたついばむようにキスをする。
もう、これ以上与えられたらキャパを越えてしまうよ、瞬ちゃん。
色々聞きたいことがあったはずなのに、もう何も思い出せない。
しかし、薄れていく思考の中で、沙耶の意識を現実に引き戻す何かが働いた。
「こ、こんなの駄目だよ瞬ちゃん。」
沙耶は瞬ちゃんから、そっと体を離した。
「どうして?沙耶は俺のこと嫌い?」
そんなはずはない。でも、沙耶は未だに自分の気持ちが分からないのだ。
そんな状態でこういうことをしていると、つい昔のことを思い出してしまう。
そして、あの日瞬ちゃんのことを拒んでしまった様に、また自分の身体が勝手に動いてしまうような気がして怖いのだ。
心と体がしっかりと繋がっていないままではいけないのだ。
瞬ちゃんと会えなくなるのはもちろん耐えられないし、ずっとそばにいられたらと考えない日はない。
だけど、それを恋愛感情だとはっきり自分で確信するまでは、そこから先に進めない。
「嫌いじゃない…。でも、好きかって聞かれると…、自分でもよく分からない。」
こんな状況になってもそんなあやふやなことしか言えない自分が情けない。
「そっか。俺、早まったかなー。」
瞬ちゃんは頭の後ろで手を組んで伸びをすると、そのまま上を向いていた。
「ごめんなさい。私のしてることメチャクチャだよね。こんなとこまで追いかけてきといて好きか分からないなんて、あり得ないよね…。」
「あ、待てよ、沙耶。」
瞬ちゃんの制止を振り切って、沙耶は部屋を飛び出した。
もう、瞬ちゃんに会わす顔が無いよ。
絶対軽蔑された。だけど、昔のあの場面を再現するようなことだけは避けたかった。
今の自分にはこれが最善の選択だったのだと、沙耶は自分に言い聞かせた。
部屋に一人残された瞬は、予想していた展開とはかなり違った今の状況に少なからず動揺していた。
嘘だろ?俺、意を決して告ったよな。
それであの反応って。
あいつ、ずっと俺を追いかけてきたのは一体どういうつもりだったんだ?
これから俺はあいつにどう接すればいいんだ?正解がわからない。
「はい。」
沙耶は相変わらず自分から余計なことを話してはいけないという約束を守っているため、ここまで何も話していない。
「その辺、適当に座って。」
「はい…。」
なに?この状況は。どうして私は瞬ちゃんの部屋に?小野寺君のことをあんな状態でほったらかしにして来ちゃったし。沙耶はもう何が何だか分からない。
「ほら、オレンジジュースだ。お前好きだろう。」
「あ、うん。」
そうだ、昔はこんなふうに私の好きなものをさり気なく覚えていてくれて、瞬ちゃんはいつも優しかった。
沙耶は昔のことを思い出すともうダメだ。涙が止められない。
「ビックリさせちゃったか?ゴメンな。」
沙耶は首を横に振る。泣いても怒られなかったことに少し驚きながら。
「それと、今までのこと全部謝る。すまなかった。」
そんなこと急に言われても、余計にパニクるだけで、沙耶は結局何もまともに話せない。
「もう、ふつうに話せよ。俺が悪かった。」
「…。」
これまで言いたいことはことごとく我慢してきた。そんな変な癖がついてしまって、話したいのになかなか言葉が出ない。
「えっと、あの、どうして瞬ちゃんは公園にいたの?」
やっと言えた言葉はそんな中身のない質問になってしまった。
「ああ、部内の情報は色んな所から入って来るからな。小野寺みたいに大っぴらにやってれば、すぐ俺の耳に入る。でもって、あいつは悪い奴じゃないんだがちょっと思い込みが激しいっていうのも聞いてたからな。それで、昨日沙耶が自主トレ自分でやるって言いだしたからさ、こりゃあ小野寺が何かやらかすの決定ということで、公園で張ってたんだ。」
「だけど、何で瞬ちゃんは私にそこまで親切にしてくれるの?」
沙耶はごく自然な気持ちを口にした。
「おおっ、いきなり核心を突いて来るな。まあ、俺もそろそろ観念しないとな。」
瞬ちゃんは向かい合って座っていたのだが、ふいに立ち上がると沙耶のすぐ横に腰をおろした。え、え、瞬ちゃん、何?近い、近いよ。さらに瞬ちゃんの腕が沙耶の肩に回されて、そのままギュッと引き寄せられ二人の身体は密着する。ええーっ!!どうしよう、どうしよう、死ぬ、死んじゃう!!
「沙耶」
「はいっ!」
「俺はお前が好きだよ。」
「はいっ!ええーっ??」
驚く沙耶の唇に瞬ちゃんの唇が重なった。う、うそ、うそ、き、キスしてる。
「そんなに硬くなるなよ。中学の頃の方が反応よかったぞ。」
そんなこと言われたって、展開が激しすぎて…。もうなにがなんだか…。あっ…。
二度目のキスはさっきより濃厚で…、沙耶は意識が遠のきそうになる。
「沙耶、かわいいな。好きだよ。」
そう言ってまたついばむようにキスをする。
もう、これ以上与えられたらキャパを越えてしまうよ、瞬ちゃん。
色々聞きたいことがあったはずなのに、もう何も思い出せない。
しかし、薄れていく思考の中で、沙耶の意識を現実に引き戻す何かが働いた。
「こ、こんなの駄目だよ瞬ちゃん。」
沙耶は瞬ちゃんから、そっと体を離した。
「どうして?沙耶は俺のこと嫌い?」
そんなはずはない。でも、沙耶は未だに自分の気持ちが分からないのだ。
そんな状態でこういうことをしていると、つい昔のことを思い出してしまう。
そして、あの日瞬ちゃんのことを拒んでしまった様に、また自分の身体が勝手に動いてしまうような気がして怖いのだ。
心と体がしっかりと繋がっていないままではいけないのだ。
瞬ちゃんと会えなくなるのはもちろん耐えられないし、ずっとそばにいられたらと考えない日はない。
だけど、それを恋愛感情だとはっきり自分で確信するまでは、そこから先に進めない。
「嫌いじゃない…。でも、好きかって聞かれると…、自分でもよく分からない。」
こんな状況になってもそんなあやふやなことしか言えない自分が情けない。
「そっか。俺、早まったかなー。」
瞬ちゃんは頭の後ろで手を組んで伸びをすると、そのまま上を向いていた。
「ごめんなさい。私のしてることメチャクチャだよね。こんなとこまで追いかけてきといて好きか分からないなんて、あり得ないよね…。」
「あ、待てよ、沙耶。」
瞬ちゃんの制止を振り切って、沙耶は部屋を飛び出した。
もう、瞬ちゃんに会わす顔が無いよ。
絶対軽蔑された。だけど、昔のあの場面を再現するようなことだけは避けたかった。
今の自分にはこれが最善の選択だったのだと、沙耶は自分に言い聞かせた。
部屋に一人残された瞬は、予想していた展開とはかなり違った今の状況に少なからず動揺していた。
嘘だろ?俺、意を決して告ったよな。
それであの反応って。
あいつ、ずっと俺を追いかけてきたのは一体どういうつもりだったんだ?
これから俺はあいつにどう接すればいいんだ?正解がわからない。
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