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初恋がこじれにこじれて困ってます.02
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沙耶がひとり部屋でぼやいているとチャイムが鳴った。
「はーい。」
「俺ー。開けてー。」
声の主は瞬ちゃんだ。実は、中学に入ったら瞬ちゃんが沙耶の家庭教師をしてくれるというおかしな取り決めが、沙耶の知らないうちに両親たちの間で交わされていたのだ。一樹という兄はいるものの、成績は瞬ちゃんの方が断然上だし、兄妹で教えあうというのは難しいものだ。
そんな訳で、塾や家庭教師を雇うくらいなら、瞬ちゃんにお願いしようということになったらしい。
というのも、沙耶は小学生の時から懇談のたびに、「沙耶ちゃんは、やればできると思うんですけどね。勿体ないなー。」と担任になった先生には必ず言われていたのだ。成績は中の上というモヤっとしたポジションというのも、両親の気持ちを刺激したのかもしれない。何をやっても余りパッとしない沙耶を、中学からは変えてやりたいという親心らしいのだが、沙耶としては、瞬ちゃんに勉強を教えてもらうのは少し恥ずかしいのだ。
それに、この間あんなところを見てしまったせいで、今までとは違って瞬ちゃんに男性の部分を感じてしまって何だか居心地が悪いのだった。
「俺の教え方で分かる?」
「う、うん。分かりやすいよ。」
沙耶は正直な気持ちを伝えた。瞬ちゃんは沙耶が分からないところを根気よく丁寧に教えてくれる。時には小学校の勉強まで遡ることもある。そのおかげで、基礎がしっかり理解できて、難しい応用問題も理解しやすくなった。
「そうか。よかった。」
学校でも瞬ちゃんは人気がある。そんな瞬ちゃんに家庭教師をしてもらってるなんてバレたら大変なことになるだろう。しかし、お隣同士という隠れ蓑のおかげで、本人が口外しない限りバレることはないだろう。そんな贅沢を味わっているのに、沙耶は時々瞬ちゃんが直だったらな、なんて想像してしまう。
「沙耶、聞いてる?」
「あ、ごめん。ちょっと、ボーっとしてた。」
「こらっ!人が一生懸命説明してるのに、なに考えてたの?」
瞬ちゃんは沙耶の額を軽くデコピンした。
「いったー、別にいいじゃん。」
「何だ?好きな奴でもできたか。」
「ち、違うよ、そんなんじゃない。」
「へえ、じゃあ何?」
「い、いいじゃん別に。いろいろあるの。」
瞬ちゃんが相手では、沙耶は歯が立たない。
「沙耶は直のことが好きなんだろう?」
まさかのストレートな言葉に沙耶はアタフタする。
「え、ち、違うよ、何言ってるの瞬ちゃん。」
「俺が知らなかったと思う?」
そう言われると、最も近いところで沙耶と直のことを見ていたのは、瞬ちゃんと一樹の二人であることに間違いない。そんな瞬ちゃんに沙耶の気持ちが100%バレていなかったかと問われれば、正直自信はない。
沙耶は身近なひとを騙せるほど器用な人間ではない。ましてや、小学生の初恋なのだ。バレない方が難しいだろう。だからと言って、直の兄である瞬ちゃんに自分から「そうです。」というのもはばかられる。沙耶は何と答えたらよいのかと途方に暮れた。
「俺が協力してやろうか?」
瞬ちゃんからの思いがけない提案に、沙耶の頭の中はさらに混乱する。
「え、ど、どうして?」
そう答えたら、もうYESと言っているようなものなのだが、今はそんなことを考えている余裕がない。
「だって、俺の可愛い沙耶の初恋だからさ。」
「は、初恋って…。」
言葉にされるとメチャクチャ恥ずかしい。
「それでさ、直を落とすために色々とレッスンしてあげようと思うんだけど、やってみる?」
レッスンと聞いて、沙耶は先日目撃したあの場面を思い出してしまう。
「沙耶は恋愛経験がないわけだろう?どうやって直を落としたらいいか分かるの?」
「…、分かんない…。」
「あいつ俺みたいに取っつきにくくないし、どっちかっていえば人気者キャラだろ。結構ライバル多いんじゃない?」
それは、今まさに沙耶が頭を悩ませていることで…。
「瞬ちゃん、私どうしたらいいのかな!」
沙耶は思わず、瞬ちゃんの提案をのむような答えをしてしまった。
「大丈夫、俺に任せとけば。直の気持ちをゲットできるようないい女にしてやるから。」
いい女なんて言われて、沙耶はそれが自分の望む姿なのかもよく分からない。でも、今の自分では直を落とせる自信など全くないのだ。瞬ちゃんには申し訳ないけど、直の気持ちを自分に向けることができるのなら、利用できるものは何でも利用したいというのが沙耶のいまの気持ちだった。
「瞬ちゃん、私のことレッスンしてください。」
沙耶は決意を秘めた瞳で瞬ちゃんのことを見つめた。
「よーし、決まりだ。じゃあ、さっそく始めようか。こっちへおいで。」
そう言って瞬ちゃんは沙耶のベッドに腰をおろした。
(え、べ、ベッド?瞬ちゃん、何するの?)
沙耶は恐る恐る瞬ちゃんの隣に少し離れて腰をおろした。
「もっと近くに来ないと、キス出来ないだろ。」
そう言うと、瞬ちゃんは沙耶の腰に手を回してグッと自分の方に引き寄せた。
「あっ!」
ふわりといい香りがしたその瞬間、沙耶の唇に瞬ちゃんの唇が重なっていた。沙耶は、必死で抵抗するのだが、後頭部と腰は瞬ちゃんの大きな手でガッチリとホールドされている。瞬ちゃんは沙耶を抱きしめたまま、気持ちが落ち着くのを待っている様だった。無理にキスを進めないことを理解した沙耶は、抵抗をやめフッと体の力を抜いた。
すると、瞬ちゃんはそれを待っていたかのように、キスを再開する。ついばむように何度も軽く口づけられるうちに、沙耶の頭は何が何だか分からなくなってくる。そして、ついに瞬ちゃんの舌が沙耶の歯列を割って侵入してきた。
「んんっ!」
沙耶は最初ほどではないが、やはり抵抗した。瞬ちゃんのキスは、抵抗する沙耶をあやすように優しくて、沙耶の体はキスだけでとろけてしまったように力が入らない。沙耶の口腔を優しくなだめるように愛撫した瞬ちゃんの舌が、ついに沙耶の舌を求めてきた。正直、沙耶の脳はもう正常に機能していない。求められるまま、沙耶は瞬ちゃんの舌に自分の舌を絡ませた。すると、より強く抱きしめられる。
名残惜しそうに瞬ちゃんの唇が離れていく。レッスンと言っていたのに、瞬ちゃんの呼吸は乱れていて、その瞳が熱を帯びている様に見えるのは、沙耶の目の錯覚だろうか。
「キスはどうだった?」
「う、うん…。」
正直、落ち着いて感想が言える状態ではない。
「大丈夫、最初はだれでも緊張するけど、じきに慣れて気持ちよくなるから。そしたら、直とするときも自然でいられるだろ。」
「そ、そうかな…。」
沙耶は、まともに働かない頭で答える。
「それじゃ、また明日ね。」
瞬ちゃんはそう言うと、もう一度軽く口づけて部屋を出て行った。一人部屋に残された沙耶は、今起きたことは現実なのか、そこら辺から復習しなければならないくらい頭が混乱していた。
初めてのキスだよね。ファーストキスって好きな人とするのが夢だったんだけどな…。こんなにあっけなく終わっちゃうなんて…。だけど、他の誰かだったらきっとショックでおかしくなっていたかもしれない。そう考えると、直とファーストキスができなかったのはそれは残念だけど、瞬ちゃんがファーストキスの相手っていうのは世界で2番目の相手と言っても過言ではないくらい贅沢な話だ。
いいのか悪いのか分からないけど、嫌悪感はなかった。レッスンという目的、そして直を落という最終目標のための試練なのだ。贅沢を言っている場合ではないのだ。沙耶は自分にそう言い聞かせた。
「はーい。」
「俺ー。開けてー。」
声の主は瞬ちゃんだ。実は、中学に入ったら瞬ちゃんが沙耶の家庭教師をしてくれるというおかしな取り決めが、沙耶の知らないうちに両親たちの間で交わされていたのだ。一樹という兄はいるものの、成績は瞬ちゃんの方が断然上だし、兄妹で教えあうというのは難しいものだ。
そんな訳で、塾や家庭教師を雇うくらいなら、瞬ちゃんにお願いしようということになったらしい。
というのも、沙耶は小学生の時から懇談のたびに、「沙耶ちゃんは、やればできると思うんですけどね。勿体ないなー。」と担任になった先生には必ず言われていたのだ。成績は中の上というモヤっとしたポジションというのも、両親の気持ちを刺激したのかもしれない。何をやっても余りパッとしない沙耶を、中学からは変えてやりたいという親心らしいのだが、沙耶としては、瞬ちゃんに勉強を教えてもらうのは少し恥ずかしいのだ。
それに、この間あんなところを見てしまったせいで、今までとは違って瞬ちゃんに男性の部分を感じてしまって何だか居心地が悪いのだった。
「俺の教え方で分かる?」
「う、うん。分かりやすいよ。」
沙耶は正直な気持ちを伝えた。瞬ちゃんは沙耶が分からないところを根気よく丁寧に教えてくれる。時には小学校の勉強まで遡ることもある。そのおかげで、基礎がしっかり理解できて、難しい応用問題も理解しやすくなった。
「そうか。よかった。」
学校でも瞬ちゃんは人気がある。そんな瞬ちゃんに家庭教師をしてもらってるなんてバレたら大変なことになるだろう。しかし、お隣同士という隠れ蓑のおかげで、本人が口外しない限りバレることはないだろう。そんな贅沢を味わっているのに、沙耶は時々瞬ちゃんが直だったらな、なんて想像してしまう。
「沙耶、聞いてる?」
「あ、ごめん。ちょっと、ボーっとしてた。」
「こらっ!人が一生懸命説明してるのに、なに考えてたの?」
瞬ちゃんは沙耶の額を軽くデコピンした。
「いったー、別にいいじゃん。」
「何だ?好きな奴でもできたか。」
「ち、違うよ、そんなんじゃない。」
「へえ、じゃあ何?」
「い、いいじゃん別に。いろいろあるの。」
瞬ちゃんが相手では、沙耶は歯が立たない。
「沙耶は直のことが好きなんだろう?」
まさかのストレートな言葉に沙耶はアタフタする。
「え、ち、違うよ、何言ってるの瞬ちゃん。」
「俺が知らなかったと思う?」
そう言われると、最も近いところで沙耶と直のことを見ていたのは、瞬ちゃんと一樹の二人であることに間違いない。そんな瞬ちゃんに沙耶の気持ちが100%バレていなかったかと問われれば、正直自信はない。
沙耶は身近なひとを騙せるほど器用な人間ではない。ましてや、小学生の初恋なのだ。バレない方が難しいだろう。だからと言って、直の兄である瞬ちゃんに自分から「そうです。」というのもはばかられる。沙耶は何と答えたらよいのかと途方に暮れた。
「俺が協力してやろうか?」
瞬ちゃんからの思いがけない提案に、沙耶の頭の中はさらに混乱する。
「え、ど、どうして?」
そう答えたら、もうYESと言っているようなものなのだが、今はそんなことを考えている余裕がない。
「だって、俺の可愛い沙耶の初恋だからさ。」
「は、初恋って…。」
言葉にされるとメチャクチャ恥ずかしい。
「それでさ、直を落とすために色々とレッスンしてあげようと思うんだけど、やってみる?」
レッスンと聞いて、沙耶は先日目撃したあの場面を思い出してしまう。
「沙耶は恋愛経験がないわけだろう?どうやって直を落としたらいいか分かるの?」
「…、分かんない…。」
「あいつ俺みたいに取っつきにくくないし、どっちかっていえば人気者キャラだろ。結構ライバル多いんじゃない?」
それは、今まさに沙耶が頭を悩ませていることで…。
「瞬ちゃん、私どうしたらいいのかな!」
沙耶は思わず、瞬ちゃんの提案をのむような答えをしてしまった。
「大丈夫、俺に任せとけば。直の気持ちをゲットできるようないい女にしてやるから。」
いい女なんて言われて、沙耶はそれが自分の望む姿なのかもよく分からない。でも、今の自分では直を落とせる自信など全くないのだ。瞬ちゃんには申し訳ないけど、直の気持ちを自分に向けることができるのなら、利用できるものは何でも利用したいというのが沙耶のいまの気持ちだった。
「瞬ちゃん、私のことレッスンしてください。」
沙耶は決意を秘めた瞳で瞬ちゃんのことを見つめた。
「よーし、決まりだ。じゃあ、さっそく始めようか。こっちへおいで。」
そう言って瞬ちゃんは沙耶のベッドに腰をおろした。
(え、べ、ベッド?瞬ちゃん、何するの?)
沙耶は恐る恐る瞬ちゃんの隣に少し離れて腰をおろした。
「もっと近くに来ないと、キス出来ないだろ。」
そう言うと、瞬ちゃんは沙耶の腰に手を回してグッと自分の方に引き寄せた。
「あっ!」
ふわりといい香りがしたその瞬間、沙耶の唇に瞬ちゃんの唇が重なっていた。沙耶は、必死で抵抗するのだが、後頭部と腰は瞬ちゃんの大きな手でガッチリとホールドされている。瞬ちゃんは沙耶を抱きしめたまま、気持ちが落ち着くのを待っている様だった。無理にキスを進めないことを理解した沙耶は、抵抗をやめフッと体の力を抜いた。
すると、瞬ちゃんはそれを待っていたかのように、キスを再開する。ついばむように何度も軽く口づけられるうちに、沙耶の頭は何が何だか分からなくなってくる。そして、ついに瞬ちゃんの舌が沙耶の歯列を割って侵入してきた。
「んんっ!」
沙耶は最初ほどではないが、やはり抵抗した。瞬ちゃんのキスは、抵抗する沙耶をあやすように優しくて、沙耶の体はキスだけでとろけてしまったように力が入らない。沙耶の口腔を優しくなだめるように愛撫した瞬ちゃんの舌が、ついに沙耶の舌を求めてきた。正直、沙耶の脳はもう正常に機能していない。求められるまま、沙耶は瞬ちゃんの舌に自分の舌を絡ませた。すると、より強く抱きしめられる。
名残惜しそうに瞬ちゃんの唇が離れていく。レッスンと言っていたのに、瞬ちゃんの呼吸は乱れていて、その瞳が熱を帯びている様に見えるのは、沙耶の目の錯覚だろうか。
「キスはどうだった?」
「う、うん…。」
正直、落ち着いて感想が言える状態ではない。
「大丈夫、最初はだれでも緊張するけど、じきに慣れて気持ちよくなるから。そしたら、直とするときも自然でいられるだろ。」
「そ、そうかな…。」
沙耶は、まともに働かない頭で答える。
「それじゃ、また明日ね。」
瞬ちゃんはそう言うと、もう一度軽く口づけて部屋を出て行った。一人部屋に残された沙耶は、今起きたことは現実なのか、そこら辺から復習しなければならないくらい頭が混乱していた。
初めてのキスだよね。ファーストキスって好きな人とするのが夢だったんだけどな…。こんなにあっけなく終わっちゃうなんて…。だけど、他の誰かだったらきっとショックでおかしくなっていたかもしれない。そう考えると、直とファーストキスができなかったのはそれは残念だけど、瞬ちゃんがファーストキスの相手っていうのは世界で2番目の相手と言っても過言ではないくらい贅沢な話だ。
いいのか悪いのか分からないけど、嫌悪感はなかった。レッスンという目的、そして直を落という最終目標のための試練なのだ。贅沢を言っている場合ではないのだ。沙耶は自分にそう言い聞かせた。
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