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ケダモノのように愛して.63
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「おい、それ本当か?だったらなおさらDNA鑑定しないと。相手の女性だって、本当の父親と一緒に育てた方が絶対幸せに決まってる」
「でも、そうだとしたら、女性の方は分かってるんじゃない?桔平さんとの間にできた子じゃないってこと」
まりあの一言でその場の空気はシンとなる。
「それでも桔平さんの子だって言ってるってことは、何か訳アリなんじゃないかしら」
「そうだな。こりゃ困ったことになったぞ、桔平」
「まあ、俺がまいた種だから自分で何とかするよ。ごめんな、帰って来て早々こんな話して…」
桔平は洋平たちに申し訳なくて、話を切り上げようとした。
「いや、俺は全然かまわない。むしろ頼って欲しい。ひとりで何とかするなんて言うな。ちゃんと俺に報告するんだぞ」
バカ兄は桔平のことが可愛くて仕方ないのだ。
「まったく、兄きは変わらないな。わかったよ、ちゃんと報告するから。今日はもう帰るわ」
桔平はまりあに礼を言うと、「咲那、おやすみ」と言って帰っていった。
「お、おやすみ」
咲那はやっとのことで桔平の後ろ姿に声を届けることが出来た。
もう、あまりの急展開?に頭がついていかない。
つ、疲れた…。
何も言えず、心の中で格闘するのは想像以上に体力を消耗する。
咲那は洋平との久しぶりの再会をこれ以上楽しむ余裕もなく、早々に自分の部屋へ引っ込んだ。
次の日、洋平はまりあが予約しておいた歯医者に早速出かけていった。
まりあはいつも通り仕事に出かけたけれど、しばらくはいつもより早く帰ってくると言っていた。
帰ってくれば手が焼ける父だけど、やはりまりあは洋平がそばにいるのが嬉しいようだ。
咲那は夕べの疲れがスッキリしないまま学校に向かった。
放課後はまたしてもひなたと滝口につかまってしまったけれど、菊池先生から今週中に父と会う約束を取り付けたと聞き、早々に開放してもらえた。
写真甲子園の一次審査の締め切りまであと一週間しかない。
父に写真を見てもらってからでは本当にギリギリになてしまうけれど、ひなたも滝口もそんなことは気にならない様だ。
家に帰ると、父が苦虫を噛み潰したような顔でリビングにいた。
「ただいま~、大丈夫?お父さん」
「いやあ、まだちょっと痺れてるな…。うまくしゃべれない」
洋平はあまり衛生環境のよくないところに長い間滞在していたせいで、どうやらひどい虫歯が三本ほどできていたらしい。
歯医者というところは毎日いくものではないから、三本もひどい虫歯があれば三カ月はかかる計算になる。
「三ヶ月も日本にいるなんて何年ぶり?」
咲那の記憶にはそんなに長い間洋平と過ごした記憶はない。
「忘れるくらい久しぶりだな。もしかしたら、写真で食えるようになってから初めてかもな」
「ふ~ん、そんなに長い間お母さんのことほったらかしにしてたんだ」
「何言ってるんだ、母さんと俺は離れてたってちゃんと愛し合ってるから大丈夫だ」
「そう思ってるのお父さんだけだったりして」
「お前…、そんなこと言うようになったのか」
洋平は笑いながら、クッションをぶつけてきた。
咲那はいつもひとりぼっちの家に洋平がいるのが嬉しくて、子どもの様にじゃれてしまった。
「そう言えば、菊池が今週写真部の子を連れて家に来るんだって?」
「うん、そうみたい」
そのせいで、随分暑苦しい写真談義に付き合わされたんだけどね…。
久しぶりにあった父にそんなことは言えないけど。
「でも、そうだとしたら、女性の方は分かってるんじゃない?桔平さんとの間にできた子じゃないってこと」
まりあの一言でその場の空気はシンとなる。
「それでも桔平さんの子だって言ってるってことは、何か訳アリなんじゃないかしら」
「そうだな。こりゃ困ったことになったぞ、桔平」
「まあ、俺がまいた種だから自分で何とかするよ。ごめんな、帰って来て早々こんな話して…」
桔平は洋平たちに申し訳なくて、話を切り上げようとした。
「いや、俺は全然かまわない。むしろ頼って欲しい。ひとりで何とかするなんて言うな。ちゃんと俺に報告するんだぞ」
バカ兄は桔平のことが可愛くて仕方ないのだ。
「まったく、兄きは変わらないな。わかったよ、ちゃんと報告するから。今日はもう帰るわ」
桔平はまりあに礼を言うと、「咲那、おやすみ」と言って帰っていった。
「お、おやすみ」
咲那はやっとのことで桔平の後ろ姿に声を届けることが出来た。
もう、あまりの急展開?に頭がついていかない。
つ、疲れた…。
何も言えず、心の中で格闘するのは想像以上に体力を消耗する。
咲那は洋平との久しぶりの再会をこれ以上楽しむ余裕もなく、早々に自分の部屋へ引っ込んだ。
次の日、洋平はまりあが予約しておいた歯医者に早速出かけていった。
まりあはいつも通り仕事に出かけたけれど、しばらくはいつもより早く帰ってくると言っていた。
帰ってくれば手が焼ける父だけど、やはりまりあは洋平がそばにいるのが嬉しいようだ。
咲那は夕べの疲れがスッキリしないまま学校に向かった。
放課後はまたしてもひなたと滝口につかまってしまったけれど、菊池先生から今週中に父と会う約束を取り付けたと聞き、早々に開放してもらえた。
写真甲子園の一次審査の締め切りまであと一週間しかない。
父に写真を見てもらってからでは本当にギリギリになてしまうけれど、ひなたも滝口もそんなことは気にならない様だ。
家に帰ると、父が苦虫を噛み潰したような顔でリビングにいた。
「ただいま~、大丈夫?お父さん」
「いやあ、まだちょっと痺れてるな…。うまくしゃべれない」
洋平はあまり衛生環境のよくないところに長い間滞在していたせいで、どうやらひどい虫歯が三本ほどできていたらしい。
歯医者というところは毎日いくものではないから、三本もひどい虫歯があれば三カ月はかかる計算になる。
「三ヶ月も日本にいるなんて何年ぶり?」
咲那の記憶にはそんなに長い間洋平と過ごした記憶はない。
「忘れるくらい久しぶりだな。もしかしたら、写真で食えるようになってから初めてかもな」
「ふ~ん、そんなに長い間お母さんのことほったらかしにしてたんだ」
「何言ってるんだ、母さんと俺は離れてたってちゃんと愛し合ってるから大丈夫だ」
「そう思ってるのお父さんだけだったりして」
「お前…、そんなこと言うようになったのか」
洋平は笑いながら、クッションをぶつけてきた。
咲那はいつもひとりぼっちの家に洋平がいるのが嬉しくて、子どもの様にじゃれてしまった。
「そう言えば、菊池が今週写真部の子を連れて家に来るんだって?」
「うん、そうみたい」
そのせいで、随分暑苦しい写真談義に付き合わされたんだけどね…。
久しぶりにあった父にそんなことは言えないけど。
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