上 下
62 / 86

ケダモノのように愛して.62

しおりを挟む
「んっ?何だ?ちゃんとお付き合いしてたわけじゃないのか」

「違うよ。俺が決まった相手作らないって知ってるだろ」



 こんな話を堂々としてしまうのはどうかと思うのだけれど、男同士は平気なものなのだろうか。

 いや、今はお母さんも一緒にいるんだけど…。



「まあ…、それでどうするつもりなの?」

 まりあは女性として複雑な気持ちなのだろう。



「一応俺が責任取るとは言ったけど、どうするかな~。特に好きじゃない女とうまくやってく自信ないしな…」

 佳乃さんが聞いたら往復ビンタをくらいそうなダメダメ発言にも洋平の答えは甘かった。



「お前、それ騙されてないか?本当にお前の子だって証拠はあるのか」

「い、いや、そこまでは確認してないよ。だいたいどうやればいいのか分からないし」

 本来なら女性にだらしないその態度を責められそうなものなのに、洋平の激甘な思考は違う方向へ舵を切った。



「そんなもの簡単だ。DNA鑑定だよ。海外じゃあもう普通だよ。父親がだれかだバッチリ分かるぞ」

「そ、そうか…、そういう方法があるのか」

「その女性には悪いが、お前はいくら女性にだらしなくても肝心なところはちゃんとしてると俺は信じてるからな」



 もう、親バカならぬ兄バカが過ぎるけど…、でも、そっか…、まだ本当に桔平の子供だって決まったわけじゃないんだ。

 咲那は一縷の望みがあると思っただけで、急にその子供は桔平の子ではないような気がしてしょうがなくなった。



 お願い、そのDNA鑑定っていうの、やってよ桔平!

 自分が必死になる理由なんてなくて、口に出して言うことは出来ない。

 でも咲那は心の中で必死に叫んだ。



「だけど、彼女が俺を頼って来てくれてるのに、なんか可哀そうだな…」



 な、何言ってんの?

 好きでもない相手の子供育てられるの、桔平!

 咲那はもう思っていることが今にも口から出てしまいそうだ。



「そんな情けで応えてもらったって女性は幸せじゃないわ」

 まりあはポツリと言った。



「そうだ、そうだぞ。本気で好きな女なら責任をとらなきゃならんし、そうじゃなければ、相手と話し合って別の方法を考える必要があると思うぞ」

 洋平は事態がどうなろうと、最後はやっぱり桔平の味方に納まるのだろう。



「一度、彼女と話し合ってみるよ。…って、あれ、俺そう言えば佳乃とは最後までしてないような…」

「なに!!」

「ええっ!」



 ちょ、ちょっと待って…。

 いい加減にも程がある…。

 それを今思い出すって一体どうなってるの…。



 散々振り回された咲那の気持ちはどうしてくれるのだと言いたかった。

 しかし、自分はそんな立場にないことも重々分かっている。



 悔しい…。

 桔平が誰かに奪われそうでも何も言えない、何も出来ない自分が…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。

猫足02
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。 『ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる』 一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見犯罪とは無縁そうな彼は、狂っていた。

お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?

さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。 私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。 見た目は、まあ正直、好みなんだけど…… 「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」 そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。 「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」 はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。 こんなんじゃ絶対にフラれる! 仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの! 実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。 

秘密 〜官能短編集〜

槙璃人
恋愛
不定期に更新していく官能小説です。 まだまだ下手なので優しい目で見てくれればうれしいです。 小さなことでもいいので感想くれたら喜びます。 こここうしたらいいんじゃない?などもお願いします。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

【R18完結】エリートビジネスマンの裏の顔

白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます​─​──​。 私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。 同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが…… この生活に果たして救いはあるのか。 ※サムネにAI生成画像を使用しています

見知らぬ男に監禁されています

月鳴
恋愛
悪夢はある日突然訪れた。どこにでもいるような普通の女子大生だった私は、見知らぬ男に攫われ、その日から人生が一転する。 ――どうしてこんなことになったのだろう。その問いに答えるものは誰もいない。 メリバ風味のバッドエンドです。 2023.3.31 ifストーリー追加

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

処理中です...