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ケダモノのように愛して.22

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「あれ、咲那。来てたのか」

 後姿を見つめながら妄想を繰り広げていた咲那は、急に振り返った桔平の言葉にすぐ反応できない。



「あ、えっと…、お、おかず持ってきた」

「え、おかず?」

「あれ、さっきお母さんがLINEで連絡したはずなんだけど」

「ああ…、俺ずっとアトリエにいたから。スマホ二階におきっぱだった」

「そっか…。お母さんがこの間のお礼におかず持って行きなさいって。はい、これ」

「おお、助かる」

 桔平は嬉しそうにタッパーを受け取った。



「茶でも飲んでく?」

「え…、いいの」

「ああ、今日はこれで終わり」

 桔平は絵の具のついた上っ張りを脱いだ。



 桔平の後について二階に上がったけれど、咲那の気持ちは複雑だった。

 この間のこと、桔平はやっぱりなんとも思ってないんだ。

 自分だけが自意識過剰で恥ずかしい。



「お、うまそう!」

 まりあの作ったおかずはつまみにちょうどよかったらしく、桔平はいつものように冷蔵庫から缶ビールを取り出した。

 例のごとくビールを飲みながら、ポイポイと食べ物を口の中に放り込んだ。



「咲那はもう食ったのか」

「うん食べてきた…」

 咲那は出されたお茶を一口飲んだ。



「まりあさんの飯うまいよな」

「うん。最近は南国系の料理にハマってるんだよ。ロコモコ丼とかタコライス作ってくれる」

「うわ、それ食いたい!」

「今度うちに来れば。あ、そういえばお父さん帰ってくるんだ」

「らしいな」

「知ってるの?」

「夕べまりあさんからLINEもらった」

「そっか」



 桔平とセックスしちゃったこと、お父さんたちにバレるはずなんてないけど、やっぱりちょっと怖い。

 でも桔平はそんなこと気にしないんだろうな…。



「咲那、お前うっかり口すべらすなよ」

「えっ…」

「俺とセックスしたこと。お前嘘つくのとか下手そうだからな」

「い、言うわけないじゃん、そんなの」

 そんな風に脅かさないで欲しい。

 余計に動揺して挙動不審になりそうだ。



「お父さん帰ってきた時、絶対うちに来ないでね」

「なんだそれ」

「だって…、やっぱ普通じゃいられない…かも」

「ふうん」

 桔平は会話をしながらもどんどん箸をすすめ、タッパーの中はもう空っぽだ。



「あ~うまかった。ごちそうさん」

「いいえ、どういたしまして」

「お前が作ったんじゃないだろう?」

「持ってきたのは私だもん」

「サルでもできるし」

「ひどーい」



 桔平に向けて冗談で手を挙げた。

 その腕を急に捕まれ、次の瞬間、咲那の体は桔平の胸の中にあった。



「えっ…」

 そして、そのままキスされた。
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