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なりゆきで、君の体を調教中.15
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日曜日の今日、真は近くのコミュニティセンターで行われている数学教師の勉強会に参加していた。
現役の教員がほとんどだが、真の様に春から新しく教員になるという者も数名参加していた。
今回は昨年まで現役の数学教師で定年退職したばかりというベテランOBの方による授業の進め方講座だった。
一通り仮の授業を行い、重要となるポイントは詳しく説明が入る。
その後、数人ずつグループに分かれ、検討会が行われた。
グループごとに参考になった点や、自分の場合はこうしているなど、さまざまな意見の交換が行われた。
やはり、現役の教師の方々と一緒に行う勉強会は、短時間で学べることが多い。
何かと忙しいであろう現職の教師の中でも、特に授業をもっといいものにしたいという思いを持った人が集まっているだけのことはある。
ネットで有名講師の授業風景を見ているのも、もちろん勉強になるが、それ以外の、俺も若い頃はこんな失敗したな、とかいうちょっと脱線した話なども聞けて、それはそれで勉強になる。
充実した時間を終え、真は家に帰った。今日もメイドのバイトに行っている優菜は、まだ帰ってきていない。
真は帰りにスーパーで買ってきた食材を取り出すと、夕食の準備に取り掛かった。
いつもまかないばかりだと、カロリーばっかりで栄養が摂れないだろうと、今日は真が作った夕食を食べることになっている。
ガチャと玄関の扉が開く音がした。
いつもだったら、ただいまーという優菜の元気な声が聞こえるはずなのに。
どうしたのだろうと、真は玄関まで様子を伺いに行った。
「優菜ちゃん、どうしたの?具合でも悪い?」
「いえ、大丈夫です。」
口ではそう言っても、視線は床に落としたままだ。明らかに様子がおかしい。
しかし、直球で尋ねても素直に答えてくれる雰囲気ではない。
「今日は、優菜ちゃんの好きなカレイの煮つけと、ひじきの煮物に具だくさんの粕汁だよ。口に合うといいんだけどな。」
真は優菜の表情を伺いながら話しかけるが、優菜の反応は薄い。
「あ、ありがとうございます。優菜の大好物です。」
全部棒読みだよ、優菜ちゃん。何があったのか、教えてくれないかな。
優菜ちゃんの隠し事は、結構とんでもない事だから、俺は怖いよ。
二人は食卓につくと、いただきますと言ったあとは会話もほとんど無いまま、箸の上げ下ろしだけがひたすら続く。
ポトリ、食卓に水滴が落ちた。ハッと見上げると、優菜の瞳からは大粒の涙が溢れている。
「ど、どうしたの、優菜ちゃん。料理、まずかったかな?無理しなくていいんだよ。残したって、全然いいんだから。」
「ち、違います。お料理、美味しいです。」
「じゃ、じゃあ、どうして…。」
「わ、私、好きな人がいるんです。」
「えっ!」
突然の告白に、真は己の耳を疑った。
そ、そんな話、今まで一度だってしたことないじゃなか。
年頃の優菜に好きな人の一人や二人いても当然だ。
しかし、優菜はそんな素振りをみせたことは一度も無かった。
思い人がいるなんて知らなかった。
真に知らせる義務などないけれど、無性に腹が立つ。まるで裏切られたような気持ちになる。
「でも、その人はお客さんで。優菜たちメイドは、お客さんと恋愛とかしちゃダメって、店長に言われてるんです。だから、優菜、ずっと告白とかしないで我慢してたんです。でも、今日、アンジェリカちゃんが、こっそりその人に連絡先を渡してたの見ちゃったんです。そしたら、その人、すっごく嬉しそうな顔してて。きっと、アンジェリカちゃんとくっついちゃうんです。だって、アンジェリカちゃんすっごく可愛いから。」
優菜は、もう気持ちが抑えられなくなってしまったようだ。食卓に伏せると大声で泣き始めた。
「だ、だけど、その人がアンジェリカちゃんの事を選ぶとは限らないと思うよ。だって、優菜ちゃんは、自分の気持ち伝えてないんでしょ?」
優菜の答えは無い。まだ泣き続けている。
何で俺がこんなフォローをしなくちゃいけないんだ。
優菜ちゃんが失恋して、それで、俺に気持ちが移ってくれたらそれが理想じゃないか。
余計なアドバイスなんて、自分で自分の首をしめるようなものだ。
それなのに、いい子ぶってつい助言めいたことを言ってしまう。くそ、俺のバカ、いいかっこしい。
「優菜ちゃん。世の中言われた通りにしてたら、自分の生きたいように生きる事なんて出来ないよ。店長がダメって言ったって、アンジェリカちゃんに彼を奪われるのを黙って見てる必要なんてないと僕は思うよ。もし、その彼と付き合うことになったら、彼はもう店に来ない様にしてもらえばいいんだし、付き合ってることだって内緒にすればいいじゃない。プライベートまで制限されるなんておかしいと僕は思うよ。」
真は何を熱く語ってるんだと自分にツッコミを入れたくなる。
何でもかんでも優菜ちゃんの味方をしてればいいって訳じゃないだろう。
自分の気持ちはどうなるんだよ。
そりゃ、優菜ちゃんに彼氏が出来たら、すんなり身を引く気ではいた。
でも、人の気持ちなんて変わっていくんだ。
今、俺は確信した。優菜ちゃんが好きだ。
バカ、ダメだ。彼女はまだ高校生だ。
取りあえず、今の俺が彼女に告白することも、付き合う事も出来ないのは事実だ。
だったら、どうすれば。
現役の教員がほとんどだが、真の様に春から新しく教員になるという者も数名参加していた。
今回は昨年まで現役の数学教師で定年退職したばかりというベテランOBの方による授業の進め方講座だった。
一通り仮の授業を行い、重要となるポイントは詳しく説明が入る。
その後、数人ずつグループに分かれ、検討会が行われた。
グループごとに参考になった点や、自分の場合はこうしているなど、さまざまな意見の交換が行われた。
やはり、現役の教師の方々と一緒に行う勉強会は、短時間で学べることが多い。
何かと忙しいであろう現職の教師の中でも、特に授業をもっといいものにしたいという思いを持った人が集まっているだけのことはある。
ネットで有名講師の授業風景を見ているのも、もちろん勉強になるが、それ以外の、俺も若い頃はこんな失敗したな、とかいうちょっと脱線した話なども聞けて、それはそれで勉強になる。
充実した時間を終え、真は家に帰った。今日もメイドのバイトに行っている優菜は、まだ帰ってきていない。
真は帰りにスーパーで買ってきた食材を取り出すと、夕食の準備に取り掛かった。
いつもまかないばかりだと、カロリーばっかりで栄養が摂れないだろうと、今日は真が作った夕食を食べることになっている。
ガチャと玄関の扉が開く音がした。
いつもだったら、ただいまーという優菜の元気な声が聞こえるはずなのに。
どうしたのだろうと、真は玄関まで様子を伺いに行った。
「優菜ちゃん、どうしたの?具合でも悪い?」
「いえ、大丈夫です。」
口ではそう言っても、視線は床に落としたままだ。明らかに様子がおかしい。
しかし、直球で尋ねても素直に答えてくれる雰囲気ではない。
「今日は、優菜ちゃんの好きなカレイの煮つけと、ひじきの煮物に具だくさんの粕汁だよ。口に合うといいんだけどな。」
真は優菜の表情を伺いながら話しかけるが、優菜の反応は薄い。
「あ、ありがとうございます。優菜の大好物です。」
全部棒読みだよ、優菜ちゃん。何があったのか、教えてくれないかな。
優菜ちゃんの隠し事は、結構とんでもない事だから、俺は怖いよ。
二人は食卓につくと、いただきますと言ったあとは会話もほとんど無いまま、箸の上げ下ろしだけがひたすら続く。
ポトリ、食卓に水滴が落ちた。ハッと見上げると、優菜の瞳からは大粒の涙が溢れている。
「ど、どうしたの、優菜ちゃん。料理、まずかったかな?無理しなくていいんだよ。残したって、全然いいんだから。」
「ち、違います。お料理、美味しいです。」
「じゃ、じゃあ、どうして…。」
「わ、私、好きな人がいるんです。」
「えっ!」
突然の告白に、真は己の耳を疑った。
そ、そんな話、今まで一度だってしたことないじゃなか。
年頃の優菜に好きな人の一人や二人いても当然だ。
しかし、優菜はそんな素振りをみせたことは一度も無かった。
思い人がいるなんて知らなかった。
真に知らせる義務などないけれど、無性に腹が立つ。まるで裏切られたような気持ちになる。
「でも、その人はお客さんで。優菜たちメイドは、お客さんと恋愛とかしちゃダメって、店長に言われてるんです。だから、優菜、ずっと告白とかしないで我慢してたんです。でも、今日、アンジェリカちゃんが、こっそりその人に連絡先を渡してたの見ちゃったんです。そしたら、その人、すっごく嬉しそうな顔してて。きっと、アンジェリカちゃんとくっついちゃうんです。だって、アンジェリカちゃんすっごく可愛いから。」
優菜は、もう気持ちが抑えられなくなってしまったようだ。食卓に伏せると大声で泣き始めた。
「だ、だけど、その人がアンジェリカちゃんの事を選ぶとは限らないと思うよ。だって、優菜ちゃんは、自分の気持ち伝えてないんでしょ?」
優菜の答えは無い。まだ泣き続けている。
何で俺がこんなフォローをしなくちゃいけないんだ。
優菜ちゃんが失恋して、それで、俺に気持ちが移ってくれたらそれが理想じゃないか。
余計なアドバイスなんて、自分で自分の首をしめるようなものだ。
それなのに、いい子ぶってつい助言めいたことを言ってしまう。くそ、俺のバカ、いいかっこしい。
「優菜ちゃん。世の中言われた通りにしてたら、自分の生きたいように生きる事なんて出来ないよ。店長がダメって言ったって、アンジェリカちゃんに彼を奪われるのを黙って見てる必要なんてないと僕は思うよ。もし、その彼と付き合うことになったら、彼はもう店に来ない様にしてもらえばいいんだし、付き合ってることだって内緒にすればいいじゃない。プライベートまで制限されるなんておかしいと僕は思うよ。」
真は何を熱く語ってるんだと自分にツッコミを入れたくなる。
何でもかんでも優菜ちゃんの味方をしてればいいって訳じゃないだろう。
自分の気持ちはどうなるんだよ。
そりゃ、優菜ちゃんに彼氏が出来たら、すんなり身を引く気ではいた。
でも、人の気持ちなんて変わっていくんだ。
今、俺は確信した。優菜ちゃんが好きだ。
バカ、ダメだ。彼女はまだ高校生だ。
取りあえず、今の俺が彼女に告白することも、付き合う事も出来ないのは事実だ。
だったら、どうすれば。
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