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御曹司のやんごとなき恋愛事情.76
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「何か人間不信になりそうだな~」
俊介は自室に戻ると、さっそく栗本をつかまえて尋問をはじめた。
「ついこの間は優子と話せるようセッティングしてくれたのに、今度は優子と三年も会えない渡米のセッティングって・・・、いったいどういうつもり?」
「最初の件は、副社長からのご依頼で、次の件は社長からのご依頼でしたので・・・。どういうつもりと聞かれましても、私は指示された仕事をしたまでです」
「それはないんじゃな~い」
俊介は頭の後ろで手を組むと、ビジネスチェアの背もたれに思いきり体重をかけて伸びをした。
「そう言われましても・・・、副社長のご依頼を他言していないのと同じで、社長からのご依頼も他言しなかったまでのことです」
栗本を口で言い負かそうとするのは、上手いやり方ではないのは分かっている。
だが、今回のことはどうにも腹の虫がおさまらないだけで・・・。
「私の行動が副社長のお気に召さなかったことは、申し訳なく存じます」
「あ~、もういい・・・。そんな口先だけの謝罪なんて聞きたくもないよ」
俊介はこれ以上話しても、まともな会話にならないと話を切り上げようとした。
「ただ・・・、私は常に社長よりも副社長の秘書の業務に重きを置いて行動しているつもりです」
「だったら・・・」
なぜ、優子と離れ離れになる渡米の手筈をスムーズに進めちゃったりするんだよ・・・。
そう言いたかったがやめた。
確かに腹は立つけれど、栗本は秘書になって以来、常に俊介の味方でいてくれたからだ。
自分は人格者でもないし、ただ行成の息子というだけで、尊敬に値するような人間じゃないことは自分が一番分かっている。
そんな俊介のことを、もしかしたら俊介より何もかも優秀かもしれない栗本は、馬鹿にすることなく常に献身的に支えてくれた。
だから、今回のこともいずれは俊介のためになると、彼女なりに判断しての行動だったのだろう・・・。
それが分かっても、優子と離れることが辛いことに変わりはないのだが。
「少し一人にしてくれ」
「はい・・・、ではご用がありましたらお呼びください」
栗本は隣室へと下がった。
まだ、頭の中はごちゃごちゃだ。
だが、どんなことも社長になれば避けて通れないことばかりなのだ。
こんなことで揺らいでいたら、社長業は務まらない。
三年が何だ!
三年経って、もっとビッグな男になって帰ってこればいい。
そして、その時はどんな手を使ってでも優子のことを奪いに行く。
そうやって現実的に考えて行くと、俊介の考えは少しづつ変化していった。
それを他人にとやかく言われないためにも、やはり自分が社長として皆から認められるようになる必要があるということ。
栗本が俊介の心境の変化まで見越していたとしたら、空恐ろしいことだが、とりあえず今回のことを現実のこととして受けとめられそうだ。
俊介は立ち上がると、ビルからの景色を見渡した。
遠くアメリカに行ったとしても、自分の気持ちは変わらない。
必ず優子を自分のものにする。
そのためだったら、少々の遠回りなんてクソくらえだ。
俊介はさっきとは打って変わって清々しい気持ちでそこに立っていた。
俊介は自室に戻ると、さっそく栗本をつかまえて尋問をはじめた。
「ついこの間は優子と話せるようセッティングしてくれたのに、今度は優子と三年も会えない渡米のセッティングって・・・、いったいどういうつもり?」
「最初の件は、副社長からのご依頼で、次の件は社長からのご依頼でしたので・・・。どういうつもりと聞かれましても、私は指示された仕事をしたまでです」
「それはないんじゃな~い」
俊介は頭の後ろで手を組むと、ビジネスチェアの背もたれに思いきり体重をかけて伸びをした。
「そう言われましても・・・、副社長のご依頼を他言していないのと同じで、社長からのご依頼も他言しなかったまでのことです」
栗本を口で言い負かそうとするのは、上手いやり方ではないのは分かっている。
だが、今回のことはどうにも腹の虫がおさまらないだけで・・・。
「私の行動が副社長のお気に召さなかったことは、申し訳なく存じます」
「あ~、もういい・・・。そんな口先だけの謝罪なんて聞きたくもないよ」
俊介はこれ以上話しても、まともな会話にならないと話を切り上げようとした。
「ただ・・・、私は常に社長よりも副社長の秘書の業務に重きを置いて行動しているつもりです」
「だったら・・・」
なぜ、優子と離れ離れになる渡米の手筈をスムーズに進めちゃったりするんだよ・・・。
そう言いたかったがやめた。
確かに腹は立つけれど、栗本は秘書になって以来、常に俊介の味方でいてくれたからだ。
自分は人格者でもないし、ただ行成の息子というだけで、尊敬に値するような人間じゃないことは自分が一番分かっている。
そんな俊介のことを、もしかしたら俊介より何もかも優秀かもしれない栗本は、馬鹿にすることなく常に献身的に支えてくれた。
だから、今回のこともいずれは俊介のためになると、彼女なりに判断しての行動だったのだろう・・・。
それが分かっても、優子と離れることが辛いことに変わりはないのだが。
「少し一人にしてくれ」
「はい・・・、ではご用がありましたらお呼びください」
栗本は隣室へと下がった。
まだ、頭の中はごちゃごちゃだ。
だが、どんなことも社長になれば避けて通れないことばかりなのだ。
こんなことで揺らいでいたら、社長業は務まらない。
三年が何だ!
三年経って、もっとビッグな男になって帰ってこればいい。
そして、その時はどんな手を使ってでも優子のことを奪いに行く。
そうやって現実的に考えて行くと、俊介の考えは少しづつ変化していった。
それを他人にとやかく言われないためにも、やはり自分が社長として皆から認められるようになる必要があるということ。
栗本が俊介の心境の変化まで見越していたとしたら、空恐ろしいことだが、とりあえず今回のことを現実のこととして受けとめられそうだ。
俊介は立ち上がると、ビルからの景色を見渡した。
遠くアメリカに行ったとしても、自分の気持ちは変わらない。
必ず優子を自分のものにする。
そのためだったら、少々の遠回りなんてクソくらえだ。
俊介はさっきとは打って変わって清々しい気持ちでそこに立っていた。
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