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御曹司のやんごとなき恋愛事情.73
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「ええ・・・、その方が副社長が実際社長に就任されてからのお仕事もスムーズになると・・・、はいそうです」
その日の午後、栗本がいたのは、俊介の部屋よりさらに上の階にある、現社長である行成の部屋だった。
「そうだな・・・、あいつには社会勉強のつもりで、好きなデザイン会社で修業を積ませたが、やはり実際に商社の仕事の経験も積んでおいた方があいつのためにもいいだろう」
「アメリカの事業所と話しを進めさせていただいてよろしいでしょうか?」
「他の者に担当させてもいいが、どうせ君も一緒に渡米することになるのなら、君が動いてくれた方が、向こうの受け入れもスムーズだろう。任せたよ」
「ありがとうございます」
「私も、少し焦りすぎていた。万一私が倒れても、今なら佐竹君が代役として十分仕事を任せることができる」
「さようでございますね。佐竹さんと、俊介様、このお二人がいらっしゃる桑原商事の将来は安泰ですね」
「いや、もう一人忘れてるぞ」
「えっ・・・?」
「君だ、栗本君」
「私なんて・・・、ただの元銀座のママです。皆様の足元にも及びません」
「君を初めて見たのは・・・、私がよく接待に使っていたクラブ”胡蝶蘭”だったな。たしか、君はまだ二十歳になったばかりじゃなかったかな」
当時から、優子は行成と行動を共にすることも多かった。
そして二人はそんな栗本の成長を見て来たことになる。
「ええ・・・。今の私があるのは、胡蝶蘭の静香ママのおかげですから。接客も、政治や経済のことも、英会話も、全て静香ママが私に指導してくれましたから」
「だが、それを成し遂げるのは誰もができる訳じゃない。君は優秀だ。何よりも優れているのは、男と変な問題を起こさないというところだ」
「それは・・・、女として褒められているのか・・・。あまり魅力がないと言われてるようにも聞こえますよ?」
「おいおい、私をいじめないでくれ。とにかく、俊介のことは君に任せた。また、詳しいスケジュールが決まったら随時私に報告してくれ」
「承知いたしました」
栗本は社長室を出ると、俊介の部屋の隣にある自室(といっても控室のような小さな部屋だ)に籠り、アメリカの事業所に連絡を入れた。
それから二週間ほど経ったある日の午後、俊介と優子、そして栗本が社長室に集められていた。
例のごとく優子は硬い表情を崩さない。
「実は、海外視察が終わった頃から進めていたことがあるんだが・・・」
行成はおもむろに話し始めた。
話の内容を知っているのは栗本だけで、俊介と優子は何事かという顔で行成のことを見つめている。
「副社長と栗本君には三年を目途にアメリカの事業所に出向してもらおうと思う」
「はあっ?」
俊介は素っとん狂な声をあげた。
優子は驚いた表情をしたものの、声は一切出さない。
その日の午後、栗本がいたのは、俊介の部屋よりさらに上の階にある、現社長である行成の部屋だった。
「そうだな・・・、あいつには社会勉強のつもりで、好きなデザイン会社で修業を積ませたが、やはり実際に商社の仕事の経験も積んでおいた方があいつのためにもいいだろう」
「アメリカの事業所と話しを進めさせていただいてよろしいでしょうか?」
「他の者に担当させてもいいが、どうせ君も一緒に渡米することになるのなら、君が動いてくれた方が、向こうの受け入れもスムーズだろう。任せたよ」
「ありがとうございます」
「私も、少し焦りすぎていた。万一私が倒れても、今なら佐竹君が代役として十分仕事を任せることができる」
「さようでございますね。佐竹さんと、俊介様、このお二人がいらっしゃる桑原商事の将来は安泰ですね」
「いや、もう一人忘れてるぞ」
「えっ・・・?」
「君だ、栗本君」
「私なんて・・・、ただの元銀座のママです。皆様の足元にも及びません」
「君を初めて見たのは・・・、私がよく接待に使っていたクラブ”胡蝶蘭”だったな。たしか、君はまだ二十歳になったばかりじゃなかったかな」
当時から、優子は行成と行動を共にすることも多かった。
そして二人はそんな栗本の成長を見て来たことになる。
「ええ・・・。今の私があるのは、胡蝶蘭の静香ママのおかげですから。接客も、政治や経済のことも、英会話も、全て静香ママが私に指導してくれましたから」
「だが、それを成し遂げるのは誰もができる訳じゃない。君は優秀だ。何よりも優れているのは、男と変な問題を起こさないというところだ」
「それは・・・、女として褒められているのか・・・。あまり魅力がないと言われてるようにも聞こえますよ?」
「おいおい、私をいじめないでくれ。とにかく、俊介のことは君に任せた。また、詳しいスケジュールが決まったら随時私に報告してくれ」
「承知いたしました」
栗本は社長室を出ると、俊介の部屋の隣にある自室(といっても控室のような小さな部屋だ)に籠り、アメリカの事業所に連絡を入れた。
それから二週間ほど経ったある日の午後、俊介と優子、そして栗本が社長室に集められていた。
例のごとく優子は硬い表情を崩さない。
「実は、海外視察が終わった頃から進めていたことがあるんだが・・・」
行成はおもむろに話し始めた。
話の内容を知っているのは栗本だけで、俊介と優子は何事かという顔で行成のことを見つめている。
「副社長と栗本君には三年を目途にアメリカの事業所に出向してもらおうと思う」
「はあっ?」
俊介は素っとん狂な声をあげた。
優子は驚いた表情をしたものの、声は一切出さない。
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