上 下
15 / 106

御曹司のやんごとなき恋愛事情.15

しおりを挟む
 そのあとも、手早く綺麗に処理され、俊介は床屋に行った後の様にスッキリさっぱりしていた。



「こんな感じでよろしいでしょうか」

 服を着て身だしなみを整えた栗本は俊介に答えを求める。

「あ、ああ・・・、結構だ」

 確かに体はスッキリした。

 いや、素直に結構よかったと言ってもいい。

 ただ、そこには気持ちなど全く存在しなくて。

 俊介の心は体とは反対に、余計にモヤモヤして・・・。



 こんなことで、優子を求める自分の気持ちが埋まるはずなどないのに。

 優子はそれを分かっていても、こんな指示したのだろうか。

 ひどいな・・・、ひどいよ・・・優子。

 俺のこと、本当はどう思ってたの?

 そして今はどう思ってる?

 永遠に問うことなど出来ないかもしれない問いを、俊介は心の中で繰り返していた。



「伊波君のマンションも私のマンションもワンルームでしょ?やっぱり一緒に住むのは無理ね」

「そうだな~、新しい物件探すか~」

 優子は伊波との関係を深めるために、着々と行動を始めていた。

「ここなんかどう?どっちの会社からも同じ位の場所だし」

「うん、さっそく明日見に行ってみよう」

 優子と伊波は同棲することに決まり、家探しの最中だった。



「しかし、優子の方から一緒に住もうなんて、正直今でもまだ信じられないよ」

「あら、嫌だったら止めてもいいのよ」

「そういうこと言ってるんじゃないよ」

 伊波はうっかり機嫌を損ねられてはたまらないと慌てる。

 優子は伊波の車でマンションの前まで送ってもらうと、キスをして別れた。



「優子!」

 エントランスに向かおうとしたところで、後ろから声を掛けられた。

「坊ちゃん・・・」

 優子は社外では昔の癖で俊介のことをこう呼んでしまう。



「あいつ、この間の男だよな!アメリカ帰りかなんか知らないけどキスなんてしやがって。俺が一発ぶん殴ってやる!」

「ちょ、ちょっと坊ちゃん、静かにしてください」

「じゃあ、部屋に入れろ!」

「まったく相変わらずですね」

 俊介がこんな風に訪ねてくるのは想定内だ。

 優子は俊介を部屋へ招き入れた。



「俺はお前に色々と聞きたいことがある!それに全部答えるまで帰らないからな!」

「そんなこと言って・・・」

 相変わらず優子の前では駄々っ子の様な俊介に閉口する。

「まず、何で急に秘書を辞めたんだ!しかも黙って辞めるなんてどういうつもりだ」

「それは、社長にお聞きになったとおりです」

 どうやら父からはすでに優子に連絡が行っているらしい。

「親父とはそうやってちゃんと連絡を取り合うくせに、どうして俺にはちゃんとしないんだ!」

「だからそれは・・・」

 あなたがそんな風だからですよ・・・、とは言えない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

秘密 〜官能短編集〜

槙璃人
恋愛
不定期に更新していく官能小説です。 まだまだ下手なので優しい目で見てくれればうれしいです。 小さなことでもいいので感想くれたら喜びます。 こここうしたらいいんじゃない?などもお願いします。

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

今、夫と私の浮気相手の二人に侵されている

ヘロディア
恋愛
浮気がバレた主人公。 夫の提案で、主人公、夫、浮気相手の三人で面会することとなる。 そこで主人公は男同士の自分の取り合いを目の当たりにし、最後に男たちが選んだのは、先に主人公を絶頂に導いたものの勝ち、という道だった。 主人公は絶望的な状況で喘ぎ始め…

処理中です...