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君に溺れてしまうのは僕だから.52
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「きれいだな」
「うん」
坂口とはこんな経験ができるんだな。
おじさまとは…。
伊織は夜身体を重ねるだけの武彦との関係を、それだけで十分だと思っていた。
それは今でも変わらないつもりだ。
だけど、伊織の中で少しだけ何かが変わりつつあった。
それは武彦との関係性をさらに深めたいという思いなのか、それとも坂口という存在が武彦に対する想いでいっぱいだった伊織の気持ちの隙間に入りこんできたのか。
今はまだよくわからない。
「そろそろ帰ろうか」
坂口に言われ、伊織は立ち上がった。
二人は生暖かい潮風に吹かれながら別荘への道を並んで歩いた。
「明日は朝から海に行く?村井って泳ぎは得意なの」
別荘に戻ると、坂口は立て続けに質問してきた。
海に来たのに、今日は一日潰れてしまったことを今になって後悔しているのだろうか。
「泳ぐのは得意って訳じゃないけど、泳げるよ。坂口君はどうなの?」
「俺は泳ぐの得意だよ。まあ、運動全般が得意なんだけど」
ちゃっかり自慢してくるあたり、坂口は自分に自信がある人種なんだと思う。
「坂口君が決めていいよ」
「えっ、ほんと?」
「ほんと」
伊織はヤケになったわけじゃないけど、なんとなく坂口に全権を委ねる方が面白いのではないかと思った。
たとえそれがどんな自堕落な一日になってしまったとしても。
「うわあ、それはそれで悩むな~」
坂口は頭を抱えている。
「おっと、その前に早く飯食べようぜ。村井昼飯もまともに食べてないし。アッツアツのお好み焼きが冷めちゃうよ」
「うん」
お昼は焼きそば、夜はお好み焼きとあまり変わり映えのしない食事だが、坂口が楽しそうならそれでいいかと伊織は思った。
二人は夕食を済まし、一緒にテレビを見た。
「花火とか買って来ればよかったな。せっかく海に来たのに。あ、コンビニで買ってこようかな」
「そんな無理しなくてもいいよ」
伊織にたしなめられ、坂口はまだ自分が浮かれているんだと自覚する。
「そ、そうだな」
だけど、なにもすることがないと、つい伊織の身体に触れたくなってしまう。
そんな訳で坂口はあれこれと用事を作ってみるのだが、伊織から却下されるので実は困っているのだ。
「坂口君、せっかく二人っきりなんだから、好きなように過ごそうよ」
「い、いや、そう言われても…」
そんな悪魔のささやきをしないで欲しい。
薄着の伊織が同じ空間にいるというだけで、たやすく理性が吹き飛んでしまいそうなのに…。
「なに?やらしいこと考えてる?」
頭の中で考えていることを言い当てられて、坂口はドギマギする。
「いや、その…」
「流れに任せてみようかなって」
「えっ?」
またしても伊織の口から意外な言葉が飛び出し坂口を驚かせた。
「うん」
坂口とはこんな経験ができるんだな。
おじさまとは…。
伊織は夜身体を重ねるだけの武彦との関係を、それだけで十分だと思っていた。
それは今でも変わらないつもりだ。
だけど、伊織の中で少しだけ何かが変わりつつあった。
それは武彦との関係性をさらに深めたいという思いなのか、それとも坂口という存在が武彦に対する想いでいっぱいだった伊織の気持ちの隙間に入りこんできたのか。
今はまだよくわからない。
「そろそろ帰ろうか」
坂口に言われ、伊織は立ち上がった。
二人は生暖かい潮風に吹かれながら別荘への道を並んで歩いた。
「明日は朝から海に行く?村井って泳ぎは得意なの」
別荘に戻ると、坂口は立て続けに質問してきた。
海に来たのに、今日は一日潰れてしまったことを今になって後悔しているのだろうか。
「泳ぐのは得意って訳じゃないけど、泳げるよ。坂口君はどうなの?」
「俺は泳ぐの得意だよ。まあ、運動全般が得意なんだけど」
ちゃっかり自慢してくるあたり、坂口は自分に自信がある人種なんだと思う。
「坂口君が決めていいよ」
「えっ、ほんと?」
「ほんと」
伊織はヤケになったわけじゃないけど、なんとなく坂口に全権を委ねる方が面白いのではないかと思った。
たとえそれがどんな自堕落な一日になってしまったとしても。
「うわあ、それはそれで悩むな~」
坂口は頭を抱えている。
「おっと、その前に早く飯食べようぜ。村井昼飯もまともに食べてないし。アッツアツのお好み焼きが冷めちゃうよ」
「うん」
お昼は焼きそば、夜はお好み焼きとあまり変わり映えのしない食事だが、坂口が楽しそうならそれでいいかと伊織は思った。
二人は夕食を済まし、一緒にテレビを見た。
「花火とか買って来ればよかったな。せっかく海に来たのに。あ、コンビニで買ってこようかな」
「そんな無理しなくてもいいよ」
伊織にたしなめられ、坂口はまだ自分が浮かれているんだと自覚する。
「そ、そうだな」
だけど、なにもすることがないと、つい伊織の身体に触れたくなってしまう。
そんな訳で坂口はあれこれと用事を作ってみるのだが、伊織から却下されるので実は困っているのだ。
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「い、いや、そう言われても…」
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「なに?やらしいこと考えてる?」
頭の中で考えていることを言い当てられて、坂口はドギマギする。
「いや、その…」
「流れに任せてみようかなって」
「えっ?」
またしても伊織の口から意外な言葉が飛び出し坂口を驚かせた。
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