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君に溺れてしまうのは僕だから.43

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 ベッドに入ることなく、立ったまま坂口は伊織の肩に手をかけた。
 
 ぎこちなく唇をおしつけ、舌を侵入させる。

 伊織が応じてしまえば、それはすぐに濃厚なものに変わっていく。

 だけどそれではさっきと同じになってしまう。

 何でこんな加減をしなくちゃならないんだろう?

 伊織はこの恋人ごっこのさじ加減が面倒くさくなった。



 伊織は坂口の舌に自分の舌をねっとりと絡ませた。

「んんっ!」

 途端に坂口は反応する。

 伊織は角度を変え、何度も何度もくちづけを施した。

 その度にチュッ、チュッという水音が耳を刺激する。



 キスを続けながら、伊織は坂口の身体に手を這わせた。

 厚い胸板をなで、その先端をいじると、坂口は「ふっ…」と吐息をもらした。

 もうさっきから坂口のあれは完全に勃ち上がっている。

 坂口はこのままでは、またやられっぱなしになると思ったのか、おもむろに伊織の身体に手を伸ばしてきた。

 伊織の乳房にそっと触れると、ぎこちなく先端をいじり始めた。

 触ればいいというものではないが、外的刺激が加われば身体というものはそれなりに反応する。

 伊織の先端もしだいに硬くなり、じんわりとした感覚がそこから広がりはじめる。

 坂口はそんな些細な反応だけでも嬉しかった。



 伊織は坂口の乳首をいじりながら、もう片方の手を下半身に移動させる。

「ちょ、ちょっと、そこはダメだって」

 坂口は口づけを解くと、伊織の動きを阻止しようとした。 

 しかし真っ裸という無防備な状態で、そこを守るのは至難の業だ。

「どうして?」

 伊織としては、ことを早く終わらせてしまいたい。

「だって、またすぐイッちゃうから…」

 坂口は恥ずかしいけれど、もう開き直って本心を告げた。

「どうせイクんだから同じじゃない」

「いや、その、せ、セックスしたいから」

 ついに言ってしまった。

 さすがにこれは賭けだ。

 最後の砦は簡単には落ちないだろう。



「セックスは無理…」

「どうしても?」

「どうしても…」

 そうだよな~。

 さすがにこれは拒絶されるよな。

 坂口はあきらめるつもりはないが、キッパリ拒絶されるのはやっぱりショックだった。
 
 さらに、伊織にはもうバレていると思うが、坂口は童貞だ。

 男にだってそれなりに初めてに対するイメージは抱いている。

 それはやっぱり好きな子と初めて結ばれる神聖なものだった。

 今回のチャンスを逃したら、伊織とセックスできる可能性は限りなくゼロに近い。

 そして、今伊織に拒絶されたということは、坂口にとってみればもう伊織とは一生結ばれないと宣告されたも同然だった。

 すると突然坂口の目から涙が溢れだした。
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