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君に溺れてしまうのは僕だから.42

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「得意って…」

 そんなつもりはなかったけど、いつの間にか身についてしまったのだろうか。

 毎日の様に濃厚なセックスをしているせいで、その辺の感覚が麻痺している可能性は否めない。



「いやあ、嬉しい誤算」

 坂口はついさっきの情景を思い出して顔を緩めた。

「バカッ!いやらしい顔しないでよね」

「だって、村井めっちゃうまいし、エロいんだもん。初心者の俺なんかイチコロだよ」

 正直、体の熱はまだおさまっていない。

「もう絶対しない」

 エロいなんて言われたのは生まれて初めてだ。

 武彦はそんな言葉は決して口にしない。

 武彦とのセックスは濃厚だが、決して下品な感じがしないのだ。

「そ、そんなあ」

「知らない」

「でもカップルの付き合いする約束だろ」

 坂口は必死で食い下がる。

「もうっ!私が約束とか破れないって知っててそれにつけ込むなんて」

「そ、そんなの知らないよ。だけど、村井なら約束はちゃんと守ってくれると信じてる」

 坂口も伊織の扱い方を習得してきたようだ。

「あ~、もう、守る、守るよ。どうせ、そうなるんだよ」

 伊織は自分の性格を呪った。



「ねえ、話はそろそろやめにしよう」

 坂口は言いたいことを全て話してスッキリしたのか、やっと長い話から解放してもらえそうだ。

「で、なにするの?海に行く」

「わけないじゃん。もう一回する」

「はあ?」

 気楽に尋ねた伊織の耳に予想外の言葉が飛び込んできた。

「いや、したい」
 
 坂口の声には熱いものがこもっている。



「はいはい、わかりましたよ。じゃ、ベッド行こ」

「もう、話が早くて助かるな~」

「こっちも、坂口君は早くて助かるわ」

「うわっ、ひどっ。侮辱だ!」

「それくらい言わせてよ」

「くそっ、今度はさすがにそんなに早くないはずだ」

「そうね、もう二回イッたんだから、三回目だもんね」

「そうハッキリ言うなよ」

 二人はいま着たばかりの服を脱ぎ捨てた。

「ねえ、今度は俺が触っていい?」

「うん…」

 嫌と言っても、どうせあれこれいちゃもんをつけられて、結局坂口の言うとおりになるのだ。

「もう少し色っぽい言い方ないの?」

「ちょっと、注文が多すぎ。本当の恋人じゃないんだから、これが限界です」

「そう、残念」

 坂口は本当にしょんぼりした様子でそう言ったが、すぐに気持ちを切り替えて伊織に触れてきた。
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