32 / 107
君に溺れてしまうのは僕だから.32
しおりを挟む
「ねえ、急に誘ったけど、水着とかサンダルとか持ってる?」
「うわあ、そういうのは全く持ってないな」
「そっか、じゃあこれから買いに行こう」
「でも、今日そんなにお金持ってきてないよ」
「いいからいいから。俺、ちょっと臨時収入があって今お金持ちなんだ」
「なによ、臨時収入って」
「いやあ、実は俺いとこの家庭教師やってるんだけど、そこの家お金持ちでさ、つい先週一ヶ月分まとめてもらったんだけどいくらだったと思う?」
「さあ」
伊織はつい気のない返事をしてしまった。
「じゃ~ん、なんと5万円ですぅ」
「ええっ!家庭教師一ヶ月分にしてはちょっと多すぎない?」
「だろ?でも、うちの高校名門だからさ、他の高校に比べて時給はいいんだよ。まあ、それにしても多すぎるけどね。余ってるところは使いたくて仕方ないんでしょ。だからありがたく貰っちゃった」
坂口はペロリと舌を出す。
確かに坂口の成績は学年でもトップクラスだ。
名門校でトップクラスであれば、それなりに箔がつくのだろうか。
バイトなどやろうと思ったこともないお嬢様育ちの伊織には分からない世界だった。
「誘ったのも俺だし、今日は俺のおごり。さ、そうと決まったら買い出しにしゅっぱ~つ」
同じ体育会系の部活に入ってはいるが、坂口のテンションの高さは生まれ持ったものだろう。
体力的についていくことは可能だが、武彦のような落ち着いた大人の男性が好みの伊織に、そのテンションの高さは不要なものだった。
伊織は半ば無理やり買い物に連れていかれた。
「いやぁ、いかにもデートって感じで最高」
坂口は上機嫌だ。
「それはよかったね」
「ちょっと、それはないんじゃない?一応付き合ってる体でいてくれないと雰囲気出ないじゃん」
「ん?なに、会話までそうしなくちゃいけないの?」
「そりゃそうでしょ。じゃなきゃ、一緒にいる意味ないでしょ」
そうか?そうなのか?なんとなく騙されている様な気がしないでもないけど。
「でも、それじゃあ演技だよ。本心じゃなくてもいいの?」
「いいのいいの。どうせ一ヶ月しか味わえない恋人気分なんだからさ、俺は目一杯満喫したいの」
「ふうん、わかった…。できるだけやってみる」
そうは言ったものの、恋人同士のセリフをお芝居でもないのに日常生活で話さなければいけないなんて、実際はとんでもなく気持ちが悪いものだ。
「お、水着が置いてあるお店発見、行こう行こう」
坂口に引っ張られる様にして店内に入るが、レディースの店に男性と入るのはあまり気分のいいものではない。
しかも一緒に選ぶとなるとよほど親しくない限り無理だ。
「ねえ、自分で選ぶから待っててくれない?」
「あ、そう?でも試着したら見せてね」
「うっ…、わかった」
まったく…、ちゃっかりしてるわね。
「うわあ、そういうのは全く持ってないな」
「そっか、じゃあこれから買いに行こう」
「でも、今日そんなにお金持ってきてないよ」
「いいからいいから。俺、ちょっと臨時収入があって今お金持ちなんだ」
「なによ、臨時収入って」
「いやあ、実は俺いとこの家庭教師やってるんだけど、そこの家お金持ちでさ、つい先週一ヶ月分まとめてもらったんだけどいくらだったと思う?」
「さあ」
伊織はつい気のない返事をしてしまった。
「じゃ~ん、なんと5万円ですぅ」
「ええっ!家庭教師一ヶ月分にしてはちょっと多すぎない?」
「だろ?でも、うちの高校名門だからさ、他の高校に比べて時給はいいんだよ。まあ、それにしても多すぎるけどね。余ってるところは使いたくて仕方ないんでしょ。だからありがたく貰っちゃった」
坂口はペロリと舌を出す。
確かに坂口の成績は学年でもトップクラスだ。
名門校でトップクラスであれば、それなりに箔がつくのだろうか。
バイトなどやろうと思ったこともないお嬢様育ちの伊織には分からない世界だった。
「誘ったのも俺だし、今日は俺のおごり。さ、そうと決まったら買い出しにしゅっぱ~つ」
同じ体育会系の部活に入ってはいるが、坂口のテンションの高さは生まれ持ったものだろう。
体力的についていくことは可能だが、武彦のような落ち着いた大人の男性が好みの伊織に、そのテンションの高さは不要なものだった。
伊織は半ば無理やり買い物に連れていかれた。
「いやぁ、いかにもデートって感じで最高」
坂口は上機嫌だ。
「それはよかったね」
「ちょっと、それはないんじゃない?一応付き合ってる体でいてくれないと雰囲気出ないじゃん」
「ん?なに、会話までそうしなくちゃいけないの?」
「そりゃそうでしょ。じゃなきゃ、一緒にいる意味ないでしょ」
そうか?そうなのか?なんとなく騙されている様な気がしないでもないけど。
「でも、それじゃあ演技だよ。本心じゃなくてもいいの?」
「いいのいいの。どうせ一ヶ月しか味わえない恋人気分なんだからさ、俺は目一杯満喫したいの」
「ふうん、わかった…。できるだけやってみる」
そうは言ったものの、恋人同士のセリフをお芝居でもないのに日常生活で話さなければいけないなんて、実際はとんでもなく気持ちが悪いものだ。
「お、水着が置いてあるお店発見、行こう行こう」
坂口に引っ張られる様にして店内に入るが、レディースの店に男性と入るのはあまり気分のいいものではない。
しかも一緒に選ぶとなるとよほど親しくない限り無理だ。
「ねえ、自分で選ぶから待っててくれない?」
「あ、そう?でも試着したら見せてね」
「うっ…、わかった」
まったく…、ちゃっかりしてるわね。
0
お気に入りに追加
207
あなたにおすすめの小説


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる