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君に溺れてしまうのは僕だから.13
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カラオケボックスに入り、飲み物が運ばれてくると、伊織はさっそく話はじめた。
「変なお願いなんだけど、理由は聞かないで欲しいの。私の彼氏のふりをしてもらえないかな」
「そ、それはかまわないけど、彼氏のふりっていったいなにをすればいいのかだけ教えてくれないかな」
いくら伊織のお願いでも、ヤバいことに足を突っ込むのは御免こうむりたい。
「私の父に彼氏として会ってもらいたいの」
「え、それだけ?」
「うん。それだけ」
ものすごくヤバいことまで想像していた坂口は拍子抜けした。
それとともに今度は少し欲が出てきた。
「彼氏のふりっていうのはOKだけど。それって、その日限りってことでしょ」
「うん、その予定」
「じゃあさ、その日は本当につきあってるって考えてもいいの?」
「うん?どういうこと」
「だから、その日は普通の彼氏と彼女がするようなことしてもいいかってこと」
「はあ?そこまでしなくていいよ。家に来て父にあいさつしてくれればそれで十分だから」
「いや、俺としてはせっかく村井とお近づきになれたんだから、一日彼氏を全うしたいな」
「なんでよ。わけわかんない」
「わかんないなら教えてあげるよ。俺、村井のこと好きなんだ」
「えっ、ちょっと待って。なんでこのタイミングで告ってんの?私は、彼氏のふりしてって言ってるんだよ」
「だってさ、俺を指名したってことは、村井の彼氏としてそこそこ合格点ってことだろ?」
確かに容姿や性格は武彦に紹介するのに申し分ないと踏んで坂口を選んだ。
だからといって別に伊織の好みという訳ではない。
というより、伊織にとって男性イコール武彦なのだから、それ以外は目に入らないのだけれど。
「なんなら、そのまま本当の彼氏ってのも全然アリだけど」
「けっこうです」
「まあ、そう言わないで。俺の方は全然かまわないからさ、村井が彼氏に使いたいときにどんどん使ってくれていいよ」
まさかこんな展開になるとは…。
伊織はその日限りでサラッと終わりにしたかったのに、ちょっと面倒なことになってしまったと思わざるを得なかった。
おじさまと自分の関係を知られるわけにはいかない。
自分のまわりにあまり親しい人間関係を作らないのは全てそのためだった。
しかし、いくらお礼といっても自分の頼んでいることはお礼の範疇を越えているだろう。
そうであれば、ある程度相手の希望も受け入れなければならない。
「じゃあ一応そういうことにしとく」
伊織はこの場は譲歩するしかないと判断した。
「やったぁ!今日から俺は村井の彼氏だ~」
「だから、違うって。ちょっと、学校とかでは今まで通りだからね。彼氏役は家に来るときだけだから、そこんところ間違えないでよ」
「分かってる分かってる」
坂口は浮かれた様子で答えた。
ちょっと本当に分かってるのかな。
学校とかで変な噂が立つのとか本当に勘弁なんだから。
もっと一緒にいたいと言う坂口を振り切って、カラオケボックスを出ると伊織は一目散に家へ向かった。
疲れた…。
だけど、一応彼氏役はなんとか見つけることができた。
ただ、あのお調子者が一体どんなことを言い出すのかそれが気がかりだ。
おじさまに会わせる前には絶対打ち合わせが必要だ。
伊織は家に帰みちすがら、坂口をちゃんとした彼氏役に調教する方法を頭の中で念入りに考えるのだった。
「変なお願いなんだけど、理由は聞かないで欲しいの。私の彼氏のふりをしてもらえないかな」
「そ、それはかまわないけど、彼氏のふりっていったいなにをすればいいのかだけ教えてくれないかな」
いくら伊織のお願いでも、ヤバいことに足を突っ込むのは御免こうむりたい。
「私の父に彼氏として会ってもらいたいの」
「え、それだけ?」
「うん。それだけ」
ものすごくヤバいことまで想像していた坂口は拍子抜けした。
それとともに今度は少し欲が出てきた。
「彼氏のふりっていうのはOKだけど。それって、その日限りってことでしょ」
「うん、その予定」
「じゃあさ、その日は本当につきあってるって考えてもいいの?」
「うん?どういうこと」
「だから、その日は普通の彼氏と彼女がするようなことしてもいいかってこと」
「はあ?そこまでしなくていいよ。家に来て父にあいさつしてくれればそれで十分だから」
「いや、俺としてはせっかく村井とお近づきになれたんだから、一日彼氏を全うしたいな」
「なんでよ。わけわかんない」
「わかんないなら教えてあげるよ。俺、村井のこと好きなんだ」
「えっ、ちょっと待って。なんでこのタイミングで告ってんの?私は、彼氏のふりしてって言ってるんだよ」
「だってさ、俺を指名したってことは、村井の彼氏としてそこそこ合格点ってことだろ?」
確かに容姿や性格は武彦に紹介するのに申し分ないと踏んで坂口を選んだ。
だからといって別に伊織の好みという訳ではない。
というより、伊織にとって男性イコール武彦なのだから、それ以外は目に入らないのだけれど。
「なんなら、そのまま本当の彼氏ってのも全然アリだけど」
「けっこうです」
「まあ、そう言わないで。俺の方は全然かまわないからさ、村井が彼氏に使いたいときにどんどん使ってくれていいよ」
まさかこんな展開になるとは…。
伊織はその日限りでサラッと終わりにしたかったのに、ちょっと面倒なことになってしまったと思わざるを得なかった。
おじさまと自分の関係を知られるわけにはいかない。
自分のまわりにあまり親しい人間関係を作らないのは全てそのためだった。
しかし、いくらお礼といっても自分の頼んでいることはお礼の範疇を越えているだろう。
そうであれば、ある程度相手の希望も受け入れなければならない。
「じゃあ一応そういうことにしとく」
伊織はこの場は譲歩するしかないと判断した。
「やったぁ!今日から俺は村井の彼氏だ~」
「だから、違うって。ちょっと、学校とかでは今まで通りだからね。彼氏役は家に来るときだけだから、そこんところ間違えないでよ」
「分かってる分かってる」
坂口は浮かれた様子で答えた。
ちょっと本当に分かってるのかな。
学校とかで変な噂が立つのとか本当に勘弁なんだから。
もっと一緒にいたいと言う坂口を振り切って、カラオケボックスを出ると伊織は一目散に家へ向かった。
疲れた…。
だけど、一応彼氏役はなんとか見つけることができた。
ただ、あのお調子者が一体どんなことを言い出すのかそれが気がかりだ。
おじさまに会わせる前には絶対打ち合わせが必要だ。
伊織は家に帰みちすがら、坂口をちゃんとした彼氏役に調教する方法を頭の中で念入りに考えるのだった。
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