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君に溺れてしまうのは僕だから.04
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伊織はいわゆる名門私立高校に通っていた。
小さい頃から続けていたこともあり、テニス部に入っている。
「村井~!最近調子どう?」
同じクラスで男子テニス部の坂口壮が話しかけてきた。
「普通」
坂口は普通の女子と違ってキャアキャアさわぐこともなく、妙に大人びたところのある伊織に好意を持っていた。
「普通ってなんだよ。つれないな~」
坂口は顔のレベルもそこそこで、高身長、成績も、運動神経もいい。
どちらかというと女子からはモテる坂口としては、伊織に冷たくされればされるほど逆に燃えるという、悲しいサイクルに巻き込まれていた。
「ねえ、今度の休み一緒に練習しないか?」
こう冷たくあしらわれていて、いきなり告るのは無謀というものだ。
「なんで私が坂口くんと練習しなくちゃいけないの?」
「いや、村井って昔からテニスやってたんだろ?俺、高校から始めたばっかりだから中々うまくならなくて、色々教えてもらいたいな~って」
坂口は見え見えの嘘をついてでも伊織を誘い出したかった。
「そんなの、コーチに教えてもらえばいいじゃない」
「もちろんコーチには教えてもらってるけど、コーチは俺につきっきりで教えるわけにはいかないじゃん」
「なによ、それじゃあ私が坂口くんにつきっきりで教えなきゃならないの?」
「いや、つきっきりは大げさだけど、出来るだけ早く上手くなりたいんだよ。俺以外みんな経験者だからさ、せめてみんなに追いつきたいんだ」
「だったら、その経験者のみんなに教えてもらえばいいじゃない」
そこまで拒否されれば、さすがに坂口も凹むかと思ったのだが、彼はまだ食い下がる。
「いやあ、男に教えてもらうより、やっぱり女子に教えてもらった方が、やる気が出るっていうか、吸収するスピードが違うと思うんだ」
「なにそれ。軽くセクハラなんだけど」
「ええ~、頼むよ~。俺もみんなに追いつきたいんだよ~」
坂口はついに伊織に泣きついた。
「仕方ないな。一回だけなら付き合ってあげるよ」
「ほんと?やったー!!」
「大げさね。坂口君てそんなにテニスが好きなの?」
坂口はそれには答えない。
伊織の気が変わらないうちに話を切り上げようと必死だったのだ。
「じゃあさ、佐多川公園のテニスコート予約するからさ、時間は予約できたら教える」
「ふうん、わかった」
伊織は話が終わると、さっさと荷物をまとめて帰っていった。
坂口はダメ元で臨んだ誘いに、伊織が乗ってくれて、天にも昇る気持ちだった。
まだ告白もしていないし、告白が成功したわけでもないのに。
坂口にとって伊織は高くそびえた絶壁にかこまれた要塞のように攻め込む場所が見つからない存在だ。
その要塞の一部がようやく崩れたのだ。
大げさだが、坂口にとってはそのくらいの出来事なのだ。
「今日はどこかへ出かけるのか?」
武彦に聞かれ、伊織は本当のことを言うべきか迷った。
「テニスをやりに佐多川公園へ行ってきます」
「誰と?」
武彦は伊織に鋭い視線を向けた。
「同じクラスの子です」
「男か」
伊織は迷ったが、はいと答えた。
武彦は何も言わず、ただ射抜くような視線を伊織に向けた。
伊織は行ってきますと挨拶をして、家を出た。
おじさま…、怒っていらっしゃった。
どうしよう…。
伊織はうっかり坂口の口車に乗ってしまったことを後悔した。
小さい頃から続けていたこともあり、テニス部に入っている。
「村井~!最近調子どう?」
同じクラスで男子テニス部の坂口壮が話しかけてきた。
「普通」
坂口は普通の女子と違ってキャアキャアさわぐこともなく、妙に大人びたところのある伊織に好意を持っていた。
「普通ってなんだよ。つれないな~」
坂口は顔のレベルもそこそこで、高身長、成績も、運動神経もいい。
どちらかというと女子からはモテる坂口としては、伊織に冷たくされればされるほど逆に燃えるという、悲しいサイクルに巻き込まれていた。
「ねえ、今度の休み一緒に練習しないか?」
こう冷たくあしらわれていて、いきなり告るのは無謀というものだ。
「なんで私が坂口くんと練習しなくちゃいけないの?」
「いや、村井って昔からテニスやってたんだろ?俺、高校から始めたばっかりだから中々うまくならなくて、色々教えてもらいたいな~って」
坂口は見え見えの嘘をついてでも伊織を誘い出したかった。
「そんなの、コーチに教えてもらえばいいじゃない」
「もちろんコーチには教えてもらってるけど、コーチは俺につきっきりで教えるわけにはいかないじゃん」
「なによ、それじゃあ私が坂口くんにつきっきりで教えなきゃならないの?」
「いや、つきっきりは大げさだけど、出来るだけ早く上手くなりたいんだよ。俺以外みんな経験者だからさ、せめてみんなに追いつきたいんだ」
「だったら、その経験者のみんなに教えてもらえばいいじゃない」
そこまで拒否されれば、さすがに坂口も凹むかと思ったのだが、彼はまだ食い下がる。
「いやあ、男に教えてもらうより、やっぱり女子に教えてもらった方が、やる気が出るっていうか、吸収するスピードが違うと思うんだ」
「なにそれ。軽くセクハラなんだけど」
「ええ~、頼むよ~。俺もみんなに追いつきたいんだよ~」
坂口はついに伊織に泣きついた。
「仕方ないな。一回だけなら付き合ってあげるよ」
「ほんと?やったー!!」
「大げさね。坂口君てそんなにテニスが好きなの?」
坂口はそれには答えない。
伊織の気が変わらないうちに話を切り上げようと必死だったのだ。
「じゃあさ、佐多川公園のテニスコート予約するからさ、時間は予約できたら教える」
「ふうん、わかった」
伊織は話が終わると、さっさと荷物をまとめて帰っていった。
坂口はダメ元で臨んだ誘いに、伊織が乗ってくれて、天にも昇る気持ちだった。
まだ告白もしていないし、告白が成功したわけでもないのに。
坂口にとって伊織は高くそびえた絶壁にかこまれた要塞のように攻め込む場所が見つからない存在だ。
その要塞の一部がようやく崩れたのだ。
大げさだが、坂口にとってはそのくらいの出来事なのだ。
「今日はどこかへ出かけるのか?」
武彦に聞かれ、伊織は本当のことを言うべきか迷った。
「テニスをやりに佐多川公園へ行ってきます」
「誰と?」
武彦は伊織に鋭い視線を向けた。
「同じクラスの子です」
「男か」
伊織は迷ったが、はいと答えた。
武彦は何も言わず、ただ射抜くような視線を伊織に向けた。
伊織は行ってきますと挨拶をして、家を出た。
おじさま…、怒っていらっしゃった。
どうしよう…。
伊織はうっかり坂口の口車に乗ってしまったことを後悔した。
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