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君に溺れてしまうのは僕だから.101
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「私はそこの旦那様と恋仲になってしまいました。そのせいでそのご家族を滅茶苦茶にするところでした。私は奥様に気付かれる前にお暇をもらいました。奥様はもしかしたら気づかれていたのかもしれません。それでも、それ以来旦那様には一度も会っていませんから、今は元通りの生活を送っていらっしゃると思います」
今まで一度だって田所さんの過去の話なんて聞いたことはなかった。
そして初めて聞かされた内容にしてはあまりにヘビーで、家庭的で穏やかな田所さんにそんな過去があったことをすぐに受け入れることは難しかった。
「ごめんなさいね、こんな話急にされても伊織さん困りますよね」
「い、いえ…」
だけど、それを今打ち明けたのはどういう理由があるのだろう。
「旦那様と伊織さんのこと、私が気づいていなかったと思いますか?」
「えっ!」
武彦と身体を重ねるのはいつも田所さんが帰った後だ。
いくら同じ屋根のしたで暮らしているといっても、決定的な場面を見られたわけではないはずだ。
「私も女です。そして許されない人を愛したことがあります。それに、伊織さんよりも旦那様の方が隠し事が苦手みたいですから…」
田所さんは何だかわからないけれど、思い出し笑いをしている。
「旦那様が何とおっしゃったかわかりませんけど、旦那様は伊織さんのことを女性として愛していらっしゃいますよ。ただ、伊織さんが自分のことを愛してくれるか自信がないんでしょうね」
「そんな、まさか…。おじさまが自信がないなんて…」
伊織は田所さんの言葉をとても信じることができない。
あんなに才能があって、そのうえカッコよくて、女性からモテる武彦が、自分に自信がないなんて…。
「惚れた弱みですよ。本当に好きな相手には臆病になるものです。旦那様はそれくらい伊織さんのことを本気で愛してるっていうことですよ」
「分かりません…、おじさまは私のことを娘としか見れないっておっしゃいました」
伊織はさっきの場面を思い出していた。
「まったく、しょうがないですね。そばで見ていて本当にヤキモキしてしまいます。お二人とも早く本心を打ち明けて恋を成就なさったらいいのにとどれだけ思ったことか…」
本当に世話が焼けますねと言われているようで、伊織の頭は混乱する。
だって、おじさまが自分のことを好きだなんて、どこに証拠があるんだろう?
おじさまの口から聞くまではやはり信じることが出来ない。
そんな時、玄関がバタンと閉まる音が聞こえた。
武彦が帰ってきたのだ。
「伊織さん、私ちょっと旦那様とお話ししてきます」
「え、えっ、ちょっと待って、田所さん…」
伊織は田所さんの後を追いかけた。
「旦那様、おかえりなさいませ」
「ああ、ただいま…」
田所さんの後ろから伊織は不安げな表情で二人のことを見ていた。
「少しお話ししたいことがございます」
「何だか穏やかじゃないな…」
武彦は汗を拭いながら答えた。
「こちらで」
田所さんと武彦はリビングに入っていった。
伊織はさすがに一緒に入る勇気はなくて、仕方なく隣のキッチンで二人の様子を伺うことにした。
今まで一度だって田所さんの過去の話なんて聞いたことはなかった。
そして初めて聞かされた内容にしてはあまりにヘビーで、家庭的で穏やかな田所さんにそんな過去があったことをすぐに受け入れることは難しかった。
「ごめんなさいね、こんな話急にされても伊織さん困りますよね」
「い、いえ…」
だけど、それを今打ち明けたのはどういう理由があるのだろう。
「旦那様と伊織さんのこと、私が気づいていなかったと思いますか?」
「えっ!」
武彦と身体を重ねるのはいつも田所さんが帰った後だ。
いくら同じ屋根のしたで暮らしているといっても、決定的な場面を見られたわけではないはずだ。
「私も女です。そして許されない人を愛したことがあります。それに、伊織さんよりも旦那様の方が隠し事が苦手みたいですから…」
田所さんは何だかわからないけれど、思い出し笑いをしている。
「旦那様が何とおっしゃったかわかりませんけど、旦那様は伊織さんのことを女性として愛していらっしゃいますよ。ただ、伊織さんが自分のことを愛してくれるか自信がないんでしょうね」
「そんな、まさか…。おじさまが自信がないなんて…」
伊織は田所さんの言葉をとても信じることができない。
あんなに才能があって、そのうえカッコよくて、女性からモテる武彦が、自分に自信がないなんて…。
「惚れた弱みですよ。本当に好きな相手には臆病になるものです。旦那様はそれくらい伊織さんのことを本気で愛してるっていうことですよ」
「分かりません…、おじさまは私のことを娘としか見れないっておっしゃいました」
伊織はさっきの場面を思い出していた。
「まったく、しょうがないですね。そばで見ていて本当にヤキモキしてしまいます。お二人とも早く本心を打ち明けて恋を成就なさったらいいのにとどれだけ思ったことか…」
本当に世話が焼けますねと言われているようで、伊織の頭は混乱する。
だって、おじさまが自分のことを好きだなんて、どこに証拠があるんだろう?
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そんな時、玄関がバタンと閉まる音が聞こえた。
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「伊織さん、私ちょっと旦那様とお話ししてきます」
「え、えっ、ちょっと待って、田所さん…」
伊織は田所さんの後を追いかけた。
「旦那様、おかえりなさいませ」
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「少しお話ししたいことがございます」
「何だか穏やかじゃないな…」
武彦は汗を拭いながら答えた。
「こちらで」
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伊織はさすがに一緒に入る勇気はなくて、仕方なく隣のキッチンで二人の様子を伺うことにした。
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