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しおりを挟む「そ、そうだな、で、仕事って言うのは?」
「ファストファッションの店長だって。郊外にあるデカいショッピングモールに入ってるらしい」
元貴の言葉で美世と服部が嘘をついていたことがほぼ確定したことになる。
「早速今日行ってみるか?」
「俺も行く!!」
出来るだけスムーズにことを進めたい時、徳馬の存在はあまり有り難くない。
しかしこれは徳馬のおかげで得た情報だ。
「仕方ないな、だけど大人しくしててくれよ」
元貴はしぶしぶという表情でOKを出した。
徳馬は持ち上げられたと思ったら、またいつものようにお荷物扱いされて少し気分を害したようだが、連れて行ってもらえるのならそれでも構わない様ですぐに立ち直った。
店を出ると三人は自転車でショッピングモールに向かった。
逸子がいるはずの店を見つけ店内に入った。
とりあえず何か買わないと不審がられると思い、元貴が適当に品物を選んだ。
店内をうろうろしてみたが、逸子らしき人物は店に出ていなかった。
「あの、すいません」
元貴が服を畳んでいる若い店員に話しかけた。
「僕、店長の梶逸子さんの知り合いの村田元貴って言うんですが、今、逸子さんっていらっしゃいますか」
「今店長は裏におりますので、村田元貴さんですね、少々お待ちください」
「わぁ~、なんか緊張するな元貴~」
徳馬が元貴の服の裾を引っ張った。
「シィーッ、黙ってろ。普通に振る舞わないと怪しいと思われるだろう」
元貴は徳馬の手を振り払った。
「ご、ごめん」
徳馬はしょんぼりとした様子で下を向いたが、どうにも落ち着かないようで、目線が泳いでいる。
「えーっと、あ、元貴君?久しぶり!大きくなったね」
「お久しぶりです」
逸子は元貴の姿を見つけると小走りでやってきた。
美世の話では子供を産んだばかりで、子育て真っ最中のはずの逸子が目の前にいる。
これで美世と服部が嘘をついていたことが確定した。
「だけど、どうしたの?私がここで働いてるって美世から聞いたの?」
「いえ、実はこいつ俺の友達の恩田徳馬っていうんですけど、こいつの母さんと逸子さんのお母さんが友達でこの間徳馬のところに遊びに来てて、逸子さんがここで店長やってるって偶然知ったんです」
「それでわざわざ来てくれたの?」
「そんな大げさなんじゃないんですけど、大学受験も終わって、ちょうどここに遊びに来ることにしてたんで・・・」
元貴の苦しい説明が続く。
「そうなんですよ、この辺じゃこのモールが一番デカいから、つい来ちゃうんです」
怪しまれない様、高広も元貴に加勢する。
「で、おばさんの話によると仕事が楽しすぎて彼氏も結婚も二の次だって。やっぱ好きな仕事ってそんなに楽しいもんですか?まあ、うちの姉ちゃんも俺のために仕事ばっかしてて、彼氏もいないんで、弟としては申し訳ないなって思うんですよ」
元貴は何とか逸子から確信的な言葉を引き出すために美世のことを引き合いに出した。
「美世は優しいからね~。でもきっとそれが今の美世の幸せなんだと思うよ。私は自分のやりたいことやってるだけだから美世とは少し違うけど。とにかく今は彼氏とか結婚とか考えらえられないくらいこの仕事が楽しいの。まあ、もう少し年取ったら変わるのかもしれないけど。だから、元貴君もそんなに気にすることないと思うよ」
「そんなもんですかねぇ」
元貴は逸子の口からはっきりと彼氏もいない、結婚もしていないという事実を聞くことに成功した。
「じゃあ、また遊びに来たら寄ります」
「ありがとう、待ってるわ」
逸子に見送られながら三人は店を出た。
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