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エロ.42
しおりを挟む「服部さん!」
元貴が声をかけると、服部は驚いた様子で振り返った。
ついこの間、同じ様に服部のことを呼び止めた高広は少し気まずい。
「えっ、ああ、君は・・・、美世さんの弟さんだね」
「はい」
「どうしたの?僕、今までお店にいたのに」
「えっと、店ではちょっとマズいんで・・・。あの、出来れば少しお話を聞かせていただきたいんですが」
「はなし?」
「はい」
「よく分からないな。君が僕に聞きたいことが思い浮かばないんだけど」
「逸子さんって知ってますか?」
「・・・なるほど」
服部は仕方ないといった表情になると、「そこの喫茶店でいいかな」と言った。
「はい」
元貴が話している間、高広は一言も口を挟むことなく後ろに立っていた。
そんな高広に対して服部も話しかけてはこなかった。
元貴と高広は服部のあとに続いて店内に入った。
「僕はコーヒー、君たちは?」
「一緒でいいです」
注文をすませると、元貴は早速本題に入った。
「姉の高校の時からの友人に逸子さんっていう人がいます。姉からはその逸子さんの旦那さんが服部さんだってきいてるんですけど、それは本当ですか?」
「その前に、何で君が僕にそんなことを質問したいのか教えてくれないかな?」
服部はうまく答えをはぐらかす。
「それは、聞いたんです。俺の友達に恩田徳馬ってやつがいて、そいつの母親と逸子さんの母親が知り合いで、ついこの間徳馬の家にやって来た時、逸子さんは仕事中毒で彼氏もいなくて困ってるって」
「へえ、それはまたえらく遠いところからの情報だね」
「まあ、そんなことはどうだっていいんです。服部さんの口から本当のことが聞ければ」
「その前に、君のお姉さんには聞いてみなかったの?」
服部はなかなか口を割ろうとしない。
しかし、元貴が予想に反してやけに冷静に話を進めてくれたおかげで、高広はおかしなことを口走らずにすんだ。
「それは、もちろん聞きましたけど・・・。姉は、何かの間違いじゃないかって言うんです」
「そうだろうね。僕はれっきとした逸子の夫だよ。これでいいかな?」
服部は運ばれてきたコーヒーを一口飲んだ。
「失礼ですけど、その証拠は?」
「本当に失礼だな。仕方ない、じゃあこれでどう?」
服部は二人の前に携帯を差し出した。
そこには服部と笑顔の女性、そして生まれたばかりの赤ん坊が映し出されていた。
「逸子さんなのか?」
高広が元貴に向かって尋ねると、「うん」とだけ答えた。
「これで解放してもらえるかな?」
「突然呼び止めて、おまけに失礼なこと聞いてすみませんでした」
「いや別に構わないよ、誤解がとけたのならね」
そう言うと服部は「僕が指定したんだから」と言って金を払うと店を出て行ってしまった。
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