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しおりを挟む「それでさ、昨日たまたま元貴の姉ちゃんの友達の逸子さんの母親がきててさ、随分長いこと話してったよ」
「逸子さんって、あのうちの店に毎日来る服部さんと結婚した?」
「そうそう。それでさ、俺はそこに一緒にいたわけじゃないんだけど、大きな声で話してるもんだから聞こえちゃったんだけど、おかしいんだよな」
「なにがおかしいんだよ」
「だってさ、おばさんが言うには、逸子さんは年頃なのに仕事中毒で彼氏もいなくて困ってるって」
「はあ?何言ってるんだよ。逸子さんは赤ちゃんが生まれたばっかだって、姉ちゃん言ってたじゃないか」
元貴が驚いた様子で徳馬の発言に食いついた。
「そんなこと知らないよ。ただ、実の母親が言ってたんだから嘘じゃないことは確かだと思うよ」
徳馬の話が衝撃的すぎて、高広は声を出すことすらできない。
「まあ、どっちでもいいんだけど、そうなるとうちの姉ちゃんが騙されてるか嘘ついてることになるな」
「騙されてるってどういうことだよ」
「さあ、わかんない。帰ったら聞いてみる」
「そんなことより、今日はパァーっとやろうぜ!」
高広の込み入った事情など知らない徳馬が威勢のいい声をあげる。
「ゴメン、俺、急用思い出したから、やっぱ帰るわ」
高広はおもむろに立ちあがった。
「え、なんで?ちょっと高広、どうしたんだよ」
驚いた元貴が呼び止めようとしたが、高広はすでにファミレスのドアに手をかけていた。
そして後ろを振り返ることなく店を出て行ってしまった。
「高広どうしたんだ?」
「わかんない・・・」
一番の友人である元貴が言うのであれば、徳馬の出番はない。
「仕方ない、今日は二人で祝杯をあげようぜ」
徳馬はとにかくこれまでの憂さを晴らしたいのだ。
「そうだな・・・」
元貴は正直高広の様子が気になって仕方なかったが、徳馬の気持ちを受けとめてやるのが自分しかいなくなってしまったせいで、そこを立ち去るわけにはいかなくなり、しぶしぶ徳馬の要求を受け入れた。
美世のところに今すぐ行って、さっき徳馬が言っていたことについて聞きたい。
だけどこんな混乱した状態で行って、よい結果が得られるとは到底思えない。
少し頭を冷やそう。
高広はそのまま繁華街に向かうと、特に見たくもない映画を見るために一人映画館に入るのだった。
家に帰って、美世のところへいつ行くべきか考えた。
しかしそんなことに答えなど出るはずがない。
もうこんな風にグダグダと考えてどれだけの時間を無駄に過ごしたことだろう。
大学には合格した。
その絶妙なタイミングで徳馬から情報を得た。
もういつだろうが何も変わらないだろう。
高広は美世が店を閉めてアパートに帰ってくる時間を見計らって家を出た。
久しぶりに訪れた美世のアパートは毎日のように通い詰めていた頃と違って気安く高広を出迎えてはくれなかった。
合鍵で入るのがはばかられ、恐る恐るチャイムを押した。
「はい」
美世の声がした。
「俺」とだけ答えてドアの前で待った。
馬鹿みたいに構えていた高広が拍子抜けするくらいあっけなくドアが開けられた。
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