エロ

星野しずく

文字の大きさ
上 下
39 / 55

エロ.39

しおりを挟む

「それでさ、昨日たまたま元貴の姉ちゃんの友達の逸子さんの母親がきててさ、随分長いこと話してったよ」

「逸子さんって、あのうちの店に毎日来る服部さんと結婚した?」

「そうそう。それでさ、俺はそこに一緒にいたわけじゃないんだけど、大きな声で話してるもんだから聞こえちゃったんだけど、おかしいんだよな」

「なにがおかしいんだよ」



「だってさ、おばさんが言うには、逸子さんは年頃なのに仕事中毒で彼氏もいなくて困ってるって」

「はあ?何言ってるんだよ。逸子さんは赤ちゃんが生まれたばっかだって、姉ちゃん言ってたじゃないか」

 元貴が驚いた様子で徳馬の発言に食いついた。



「そんなこと知らないよ。ただ、実の母親が言ってたんだから嘘じゃないことは確かだと思うよ」

 徳馬の話が衝撃的すぎて、高広は声を出すことすらできない。



「まあ、どっちでもいいんだけど、そうなるとうちの姉ちゃんが騙されてるか嘘ついてることになるな」

「騙されてるってどういうことだよ」

「さあ、わかんない。帰ったら聞いてみる」



「そんなことより、今日はパァーっとやろうぜ!」

 高広の込み入った事情など知らない徳馬が威勢のいい声をあげる。

「ゴメン、俺、急用思い出したから、やっぱ帰るわ」

 高広はおもむろに立ちあがった。



「え、なんで?ちょっと高広、どうしたんだよ」

 驚いた元貴が呼び止めようとしたが、高広はすでにファミレスのドアに手をかけていた。

 そして後ろを振り返ることなく店を出て行ってしまった。



「高広どうしたんだ?」

「わかんない・・・」

 一番の友人である元貴が言うのであれば、徳馬の出番はない。



「仕方ない、今日は二人で祝杯をあげようぜ」

 徳馬はとにかくこれまでの憂さを晴らしたいのだ。

「そうだな・・・」

 元貴は正直高広の様子が気になって仕方なかったが、徳馬の気持ちを受けとめてやるのが自分しかいなくなってしまったせいで、そこを立ち去るわけにはいかなくなり、しぶしぶ徳馬の要求を受け入れた。



 美世のところに今すぐ行って、さっき徳馬が言っていたことについて聞きたい。

 だけどこんな混乱した状態で行って、よい結果が得られるとは到底思えない。

 少し頭を冷やそう。

 高広はそのまま繁華街に向かうと、特に見たくもない映画を見るために一人映画館に入るのだった。



 家に帰って、美世のところへいつ行くべきか考えた。

 しかしそんなことに答えなど出るはずがない。

 もうこんな風にグダグダと考えてどれだけの時間を無駄に過ごしたことだろう。



 大学には合格した。

 その絶妙なタイミングで徳馬から情報を得た。

 もういつだろうが何も変わらないだろう。



 高広は美世が店を閉めてアパートに帰ってくる時間を見計らって家を出た。

 久しぶりに訪れた美世のアパートは毎日のように通い詰めていた頃と違って気安く高広を出迎えてはくれなかった。

 合鍵で入るのがはばかられ、恐る恐るチャイムを押した。 



「はい」
 
 美世の声がした。



「俺」とだけ答えてドアの前で待った。

 馬鹿みたいに構えていた高広が拍子抜けするくらいあっけなくドアが開けられた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...