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エロ.38
しおりを挟む「バカ、冗談だよ」
「そうだよ、お前はよく頑張った」
元貴は徳馬の頭をよしよしと撫でてやる。
「試験が終わったらさ、三人でどっか遊びに行こうぜ!」
海の時もそうだったが、そういう話になると徳馬の目が俄然輝き始める。
「そうだな、パァーっと羽を伸ばそうぜ」
徳馬に調子を合わせる元貴と違い、試験日のあとのことを考えると高広は憂鬱になる。
ただ、その場は二人に合わせて「そうだな」と答えるしかなかったけれど。
美世との約束通り、夜アパートには行っていない。
ただ、元貴とファミレスで勉強をして、そのあと美世の店に行く流れだけはそのまま続いていた。
「高広君、これまでありがとうね」
「いえ・・・」
勉強を終えて帰ろうとする高広のことを美世と元貴が見送ってくれた。
まだ客がいる時間に帰る高広を普段美世が見送ることはない。
だが、明日がセンター試験日である今日は特別だ。
笑顔で目の前に立っている美世のことが愛おしくて、高広は切なさで胸がいっぱいになる。
元貴がいなかったら、高広は美世のことをただ見ているだけではいられなかっただろう。
「じゃあ、高広、お互い頑張ろうな」
「ああ、じゃあ」
高広は狂おしい思いを抱えている素振りなど見せず二人に別れを告げた。
センター試験を終え、さらに前期日程試験を終えて、あとは合格発表を待つばかりだ。
と言っても、不合格ならば後期日程試験を受けることになる。
三月の初めに合格発表が行われた。
一番初めに合格を手にしたのは皆に一番心配をかけていた徳馬だった。
続いて発表の日をビクビクしながら待っていた元貴、そして高広は予定通り危なげなく合格したのだった。
三人の合格が分かったところで、徳馬から声が掛かかり三人はファミレスに集っていた。
「いやぁ、俺はやればできる男だと思ってたんだ」
徳馬はこの間までのネガティブな発言はどこへやら、すっかり調子に乗っていた。
「そうだな、俺もそう思ってた」
元貴が完璧な棒読みで返しても、浮かれている徳馬には届かないようだ。
「高広は当然の結果って感じだろ」
「まさか、俺だって必死だったよ」
元貴や徳馬とは別の意味でだけど。
美世にああ言われたものの、いざ美世のアパートを訪れて無視されたり拒絶されたりしたら、とても受験になど集中できなくなる。
そんなわけで、高広はあれ以来美世とは会っていない。
もちろんこのままで終わらせるつもりはない。
合格が分かったらどんな結果が待っていようと美世に直接会うと決めていた。
「そう言えばさ~、俺がやぱいってうちの母さんが友達にぼやきまくってたせいでさ、合格祝いに次から次へとオバサンたちが家にやって来て、めちゃくちゃウザいんだよね~」
「贅沢言うなよ、無事合格したんだからそのくらい我慢しろ」
元貴がたしなめる。
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