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エロ.37
しおりを挟む服部が指輪をはめるのを忘れていたわけではなかったことは、翌日からもその指にはずっと指輪がはめられていないことから簡単に理解できた。
そして、服部は相変わらず美世の店にやってくる。
あの日の翌日から、高広はあまり早くから美世のアパートに行くのはやめている。
美世がアパートに到着するころを見計らって訪れることで、服部と鉢合わせするのを避けたかったから。
美世の態度は以前と変わることはなく、高広のことを受け入れてくれる。
何事もなかったように・・・。
そもそも美世にとっては何も変わっていないのだから、変わる必要もないのかもしれないが。
「もうすぐ入試だから、風邪ひくといけないし、しばらく夜会うのはやめにしない?」
始業式を明日に控えた日、美世にそう告げられた。
「え、だけど・・・」
それって、もうこれで終わりってこと?
だけどそれを自分から言う事はできない。
「高広君が合格確定なのは分かってるけど、やっぱり体調崩したらまずいでしょ」
「それはそうだけど・・・」
試験が終わった後もこうして会えるという保証が欲しい。
「どうしたの?」
今思っていることを全て美世に伝えることは出来ない。
だけど、このままじゃ・・・、本当にこれで終わってしまう。
「もう会えないの・・・?」
みっともない言葉がついこぼれてしまった。
「何言ってるの、そんなわけないじゃない」
その答えには、何ひとつはっきりとした言葉は含まれていない。
「本当に?」
それだけじゃ足りない。
「どうしたの急に」
「ううん、別に」
言いたいことはいっぱいあるのに、高広はその全てを引っ込めた。
「うわぁ~、高広~、元貴~、いよいよ本番だよ」
始業式が終わった帰り道、徳馬が情けない声をあげた。
「お前もやれるだけのことはやったんだから、あとは運を天に任せるしかないだろ」
冷たく突き放す高広に徳馬は後ろからおぶさる様に抱きついた。
「そんなぁ~、そりゃ高広は余裕で合格だろうけどさ、俺はいくら頑張っても全く安全圏内に届かないんだよ」
「わかった、わかったから、離れろ」
「徳馬、それは俺も一緒だから。だけど、ここまできたんだから、もう腹をくくるしかない」
元貴は高広にへばりついている徳馬をそっと引き剥がした。
「ああ~、早く試験を終わらせて自由になりたい!」
空を見上げながら徳馬が叫んだ。
「終わったら自由になれるのか?」
高広が問いかけると、「元貴~、俺、高広嫌い」と泣きついた。
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