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エロ.27
しおりを挟む「で、はなしっていうのは?」
「俺見たんです。昨日の夜中、服部さんが美世さんのアパートに入っていくのを。服部さんは美世さんと、その・・・、特別な関係なんですか。いや、こんな回りくどい言い方じゃ駄目だ。二人は付き合ってるんですか?」
「何を言い出すかと思えば・・・。僕には妻がいて、子どもが生まれたばかりなんだ。しかも妻は美世さんの昔からの友人だよ」
「だから、不倫をしてるんじゃないかって言ってるんです」
「まさか、どうやったらそういう発想になるのかな?」
「じゃあ、昨日の夜のことはどう説明するんですか?」
こんなことはしたくなかったけれど、高広は録画した映像を拡大して服部の目の前に差し出した。
「さあ、大体それが僕だって証拠がどこにあるの?」
「そ、それは・・・。確かに、絶対とは言い切れませんが、服部さんにすごく似ています」
「それだけで僕は不倫の疑いをかけられたの?だけど、その前に僕も君に聞いていいかな?」
「えっ」
「君は何でそんな時間にそんなところにいたの?」
「そ、それは・・・」
「僕には突然ぶしつけな質問をしておいて、君は答えてくれないの」
「・・・」
言ってもいいのだろうか。
自分が美世とそういう関係であることを服部が知らないとして、それを告白したことで美世を追い詰めることになりはしないだろうか。
高広は勢いでこんなことをしてしまったことを、いまさらだが後悔していた。
「まあいい・・・。僕は妻から頼まれたものを美世さんに渡しに行っただけだよ」
「そんなこと信じられるわけない!」
「さあ?信じるか信じないかは君しだいだ。もうこれくらいで勘弁してくれないかな」
「・・・分かりました」
服部は踵を返すと、人込みの中に消えていった。
「クソッ!!」
高広は大声で叫んだ。
こんな結果になることは想像できていた。
現場に居合わせたわけでもない高広がいくら問い詰めたところで、本当のことなど言うはずがない。
だけど聞かずにはいられなかった。
結局、服部の口から美世との関係を聞くことはできなかった。
だけど、高広の心の中では疑念がくすぶったままだ。
美世の店に戻った高広は、とても勉強になどする気になれなくて、今日は何だか疲れたからと言って店を出た。
元貴は風邪でもひいたんじゃないかと心配そうにしていた。
その日の晩、高広は美世のアパートに行くかどうか決めかねていた。
本当は今すぐ美世に会いたい。
会って、服部のことを美世の口からはっきりと聞きたい。
だけど、それは同時に美世との関係が終わる危険性をはらんでいる。
美世の不倫をつきとめて、そのことをネチネチと追及してくる年下の男なんて、すぐに捨てられておしまいだ。
そんなことは考えられない。
自分の生活から美世がいなくなるなんて。
だけど、今日二人きりになったら、とてもいつも通りでいられる自信がない。
会いたくて仕方ないけれど、二度と会えなくなることを恐れて、高広は美世のアパートに行くことを諦めた。
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