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エロ.25
しおりを挟む服部に対する疑いは一応晴れたものの、まだ完全に消え去ったわけではない。
そして、さらに言うと、服部だけが男ではない。
女友達と会うという可能性もないわけじゃない。
だけど、平日の十二時近い時間から、社会人の女同士が集まってわざわざクリスマスパーティーをやるとは思えない。
またこっそり美世のアパートに行って見張っていようか。
もし美世に本命がいたとしたら、止められるはずもないのに。
だけど、やっぱり気になって家にじっとしているのがつらい。
高広は厚手のコートと美世にプレゼントしてもらったマフラーを身につけて、美世のアパートへ向かった。
この間と同じ美世のアパート近くの空き地に身を潜めた。
今にも雪が降り出しそうなくらいに今日は冷え込んでいる。
そんな日にこんなことまでしてしまう自分は愚かだと思う。
だけど、現実を見ておきたかった。
本命がいるのならいるで、自分はスペアであると自覚しておきたかった。
「う~、寒い」
カイロも持ってきたけれど、それくらいで温まるほど十二月の夜の寒さは甘くない。
冷えすぎて足と手の感覚がなくなってきた。
どんどん惨めな気分になって、もう帰ろうかと思ったその時、アパートの駐車場に美世の車が戻ってきた。
「美世さん・・・」
高広は見られないように気をつけながら、必死で美世の車を見つめた。
止まった車のドアが開き、美世が降りてきた。
そして、次の瞬間、助手席から背の高い男が降りたのが見えた。
しかし帽子をかぶっているせいで顔がはっきり見えない。
どうしよう、もっと近くまで行こうか。
だが、ここを移動したら身を隠す場所がない。
そうだ、スマホで映して後で拡大すればいい。
高広はポケットからスマホを取り出すと、二人の姿をレンズに納めた。
唯一駐車場を照らしているライトの下を通ったところもバッチリ取れた。
二人はそのまま当たり前のように美世の部屋へと入っていった。
その後のことは考えたくなかった。
高広は自転車に乗って自宅へと取って返した。
はやる気持ちを抑えて、足音を立てないように自室に入ると、すぐさま映像を再生した。
そこに映っていたのは・・・、やはり服部だった。
「ほら、やっぱり・・・。だけど、友だちの旦那と不倫なんて・・・、美世さん、らしくないよ・・・」
高広は自分がスペアであったことのショックもさることながら、美世の本命が友人の夫であったことが信じられなかった。
弟思いで、母親代わりの働き者。
高広は美世のそんな一面しか知らない。
だけど、美世には高広の知らない別の顔があるのだろうか。
そう思うと、自分みたいな子どもには到底太刀打ちできない無力感に苛まれる。
美世に嫌われてはいない。
少なくとも美世は自分とつき合いたいと思ってくれたのだから。
あとは、そんな付き合い方でも高広が我慢できるかどうかだ。
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