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エロ.23
しおりを挟む「あ~、地獄の夏休みがやっと終わった」
二学期が始まった始業式の朝の教室で、徳馬は元貴の背中に抱きついた。
「暑い!くっつくなよ!」
「ひどいなぁ、もう少し優しくしてくれよ。俺が毎日どんな生活送ってたか知ってるだろ」
「そう言えば、お前少しやつれたな。だけど、それまでサボってたのは自業自得だからしかたないぞ!」
「元貴はいいよな!毎日高広と一緒で。俺もそういう感じだったらもう少し楽しく勉強できたはずなのに」
「で、肝心の成績の方はどうなんだ?」
高広に痛いところを突かれ、ふざけていた徳馬は急に大人しくなる。
「そ、それは、それなりになんとかなってる」
「なんだ、歯切れが悪いな」
「いいよなぁ~高広は。志望校A判定なんだろう。余裕だよな~」
「別に余裕じゃねえし」
大学に行きたくないわけじゃないが、徳馬や元貴のように勉強には必死になれない。
人より少しだけ勉強が得意だったおかげで入試に関しては必死にならなくてもすんでいるが、そんな高広の頭を悩ませているのはずっと美世との関係についてだ。
服部と美世の関係を疑った例の一件はすっかりなかったことのように、元貴の頭の中からは消え去ったようだ。
あれからも服部は毎日のように美世の店を訪れる。
元貴が美世から聞いたところによると、服部の妻であり美世の高校の時の友人である逸子は美容師で帰りが遅かったことから、結婚当初から服部は逸子のすすめで美世の店に来ていたらしい。
そして妊娠、出産、子育てと大変な逸子に夕食の負担をかけないようにと、今でもこうして美世の店に通っているということだった。
服部という男は毎日やってくるのに、ほとんど元貴たちに話しかけてはこなかった。
カウンターのいつもの場所に座り美世とだけ会話をして帰っていった。
他のなじみの客と話すこともない。
高広はそんな服部の行動に違和感を感じていた。
ただ、あれ以来、店以外で美世と服部の接点らしきものは見つけられない。
高広はと言えば、あいかわらず毎日のように美世のアパートに通っている。
高広が寝不足になるくらい遅くまで美世のアパートにいるわけで、服部と会うとしたらその後しかない。
だが、普通のサラリーマンをしている服部と、朝から仕込みがある美世にそんな時間があるとは思えない。
そして、美世の肌にはあれ以来キスマークがついていたこともない。
何も証拠はないまま、しかし高広の心はすっきりすることなく、季節はもう冬へと移り変わっていた。
「受験生にはクリスマスもなにもないよなぁ。せめて彼女でもいれば違ったんだろうけど」
「せめてって、贅沢言ってんな」
「しかし不思議なんだよな。俺みたいに顔面偏差値が低くて、実際の偏差値も低い奴に彼女がいないのは当然だとして、何で高広に彼女がいないかな~」
「魅力がないんだろ」
元貴は時々近所のおばさんのようなことに興味を持つことがあるので困る。
「まったく世の中の女は見る目がないな。高広が俺に勉強を教えてくれる時の優しい眼差しをくらわせてやりたいよ」
「バーカ、俺がいつそんな目つきしたんだよ」
「へへっ、俺にはそう見えてるの」
「なんだそれ。くだらないこと言ってないで、早く最後の問題解けよ」
「はいはい」
今日はクリスマスイブだが、二人はいつもと変わりなく美世の店にいた。
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