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エロ.22
しおりを挟む「よし、もう言うぞ!ハッキリしないと勉強に集中できない」
「何をハッキリするの?」
「ね、姉ちゃん、何してんの?」
「ちょっと足りないものがあったから、買い物に行ってたの」
店の中にいるとばかり思っていた美世が、駐車場からやってきて元貴の話を聞いていたのだ。
「よかったじゃないか、元貴、これですぐに核心に迫れるぞ」
「そ、そうだな、ハハッ」
しかし元貴は美世の顔を見ながらモジモジしたままで一向に話し出す気配がない。
「どうしたの?私、忙しいから何か話があるんだったら、仕事しながら聞くよ」
こんな話をして、うっかり包丁で手でも切ったりしたら大変だ。
元貴は勇気を振り絞った。
「姉ちゃん、あのさ、徳馬がさ、昨日の夜、駅前で姉ちゃんと服部さんが一緒に歩いてるの見たって言ってきたんだ。それで、その・・・、姉ちゃんと服部さんって・・・、つきあってるの?」
「服部さんと私が?まさか・・・、そんな訳ないじゃない」
美世は顔色一つ変えず即答した。
「でも、じゃあどうしてそんな夜中に一緒にいたの?」
「服部さんはね、逸子の旦那さんなの」
「え、逸子って、姉ちゃんの高校の時の友達の?」
「うん。元貴もよく知ってるでしょ?よくうちに遊びに来てたから」
「だけど、じゃあ余計に二人きりでそんな夜遅くに一緒にいるのはマズいんじゃないの」
「一緒にいたっていうか、逸子の家に行った帰りに遅くなったから駅前の駐車場まで送ってもらっただけだよ」
「え、そうなの?」
「うん、逸子この間赤ちゃん生まれてね、退院したっていうから、さっそく遊びに行ってきたの」
「なぁんだ、そうだったのか。あ~びっくりした」
ホッとした表情の元貴とは裏腹に、妙にすらすらと答える美世の言葉をそのまま鵜呑みにすることが高広はできなかった。
「なによ、なんでそんなびっくりするの?」
「だって、海で見た時さ、あの人左の薬指に指輪してたから、それで姉ちゃんと付き合ってるって言ったらいわゆる不倫だろ?」
「元貴は私が不倫なんてする女だと思ってたの?」
「そ、そんなはずないと思ったらから、こんなにびっくりしてるんだろ!」
元貴は納得したようだが、高広はやっぱりまだ色々なことがひっかかっている。
アパートまで深夜あの男が美世を送り届けていたこと。
次の日、美世の背中にあったキスマーク。
そして、偶然にしては出来すぎの海での再会。
美世が嘘をついているなんて思いたくない。
でも、どうしても、元貴のように美世の言葉をそのまま信じることができない。
「じゃあ、もうその話はいいでしょ。あ~、時間が!」
美世は慌てて店の鍵を開けるとて中へ入っていった。
「逸子ちゃんの旦那さんだったのか。でも、だったらもっと早く俺に紹介してくれたってよかったのに」
「そうだな」
疑い始めるとキリがない。
「まあいいや、とりあえず姉ちゃんの浮気疑惑は晴れたから、やっと勉強に集中できる」
「ああ」
「高広、興味ないからって、つれないな~」
二人は店に入るといつもの席に陣取った。
興味がない?まさか・・・、大ありだよ。
そして、まだ疑ってる。
これからもあの男を見る目は今までと変わりない。
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