エロ

星野しずく

文字の大きさ
上 下
6 / 55

エロ.06

しおりを挟む

 そんなわけで、実は元貴の成績も上がったが、高広の成績も予想外に上がってしまうというおまけがついてきていた。

 訳を知らない母親は三者懇談で担任にべた褒めされすっかりご機嫌になっていた。



 しかし、元々高広が行きたい大学は既に合格圏内だったため、いくら褒められても高広のテンションは上がることなどなかった。

 そんな息子をトンビが鷹を産んだかのごとく、ありがたく拝む母親のことを面倒くさいとしか思わなかった。

 母親を亡くしている元貴には申し訳ないが、いればいたで決していいことばかりではないのが現実だ。



「姉ちゃん、ただいま~」

「おかえり~」

 店の暖簾をくぐると、いつもの美世の声が迎えてくれた。



「姉ちゃん、お盆って店休みだよね?」

「なによ唐突に」

「俺と高広と徳馬で海に行く予定なんだけど、姉ちゃんも一緒に行けないかなって」



「ええ~っ、海か~」

「母さんが生きてた頃は毎年行ってたじゃん」

 美世は元貴に母の話をされるのに弱い。

 自分よりも幼い時に母を亡くした元貴はきっともっと甘えたかっただろうにと可哀そうに思ってしまうから。



「そうねえ・・・、たまには羽を伸ばすか」

「えっ、いいの?」

「うん。日にちが決まったら早めに教えてね」

「それは姉ちゃんの都合に合わせるよ」



「そうだなぁ、八月十三日から十五日まで休む予定だから、その三日間ならいつでもいいわよ。お墓参りはそれ以外の日に行くから」

「本当?高広の予定はなんかある」

「俺?なんも無いよ」

 両親はきっとアウトドア三昧で、妹も高校受験だ。



「じゃあ徳馬の予定次第だな。あいつお盆は休める気でいるけど、塾によってはそういう時に限って合宿とか訳の分からんことをやりたがるからな」

「ハハッ、そうだな」

「まあ、あんたたち、友だちが頑張ってるのに他人事みたいに言って」

「そういう訳じゃないけど、徳馬の読みはいつも甘いからな。勝手に休めると思ってるだけって可能性がないとは限らないから」

「言えてる」



「姉ちゃん、俺トンカツ食いたいな~」

「元貴はトンカツね。高広君は?」

「あ、俺も同じでいいっす」

「遠慮しなくてもいいのよ」



「いいんだよ姉ちゃん。俺たちは腹がいっぱいになれば、だいたい何でもいいんだから」

「まあ、失礼ね。ひとがせっかく心を込めて作ってるのに」

「そ、それは感謝してるけどさ。男なんてそんなもんだよ、な、高広」

「あ、ああ・・・」



 腹が満たされればいいという雑食の元貴と違い、実は高広は偏食だったりする。

 しかし、高校生にもなって偏食なんて恥ずかしいからと見栄を張っているせいで、自分だったら注文しないようなメニューも何食わぬ顔で食べているのだ。

 特に野菜は好き嫌いが多く、生で食べなければならないサラダなどは、もう腹いっぱいなどと言ってさり気なく元貴に食べさせてしのいでいる。



 幸いなことに、元貴が好きなのはお子様向けメニューがほとんどで、野菜が中心のものがあまりないのが唯一の救いだ。

 しかし、お肉ばっかりじゃダメよと美世が気を利かせて野菜の煮つけなどを付けてくれたりするのが悩みのたねだ。

 どれもタダで食べさせてもらっている手前、文句は言えないのだけれど。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

初めてなら、本気で喘がせてあげる

ヘロディア
恋愛
美しい彼女の初めてを奪うことになった主人公。 初めての体験に喘いでいく彼女をみて興奮が抑えられず…

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

処理中です...