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エロ.06
しおりを挟むそんなわけで、実は元貴の成績も上がったが、高広の成績も予想外に上がってしまうというおまけがついてきていた。
訳を知らない母親は三者懇談で担任にべた褒めされすっかりご機嫌になっていた。
しかし、元々高広が行きたい大学は既に合格圏内だったため、いくら褒められても高広のテンションは上がることなどなかった。
そんな息子をトンビが鷹を産んだかのごとく、ありがたく拝む母親のことを面倒くさいとしか思わなかった。
母親を亡くしている元貴には申し訳ないが、いればいたで決していいことばかりではないのが現実だ。
「姉ちゃん、ただいま~」
「おかえり~」
店の暖簾をくぐると、いつもの美世の声が迎えてくれた。
「姉ちゃん、お盆って店休みだよね?」
「なによ唐突に」
「俺と高広と徳馬で海に行く予定なんだけど、姉ちゃんも一緒に行けないかなって」
「ええ~っ、海か~」
「母さんが生きてた頃は毎年行ってたじゃん」
美世は元貴に母の話をされるのに弱い。
自分よりも幼い時に母を亡くした元貴はきっともっと甘えたかっただろうにと可哀そうに思ってしまうから。
「そうねえ・・・、たまには羽を伸ばすか」
「えっ、いいの?」
「うん。日にちが決まったら早めに教えてね」
「それは姉ちゃんの都合に合わせるよ」
「そうだなぁ、八月十三日から十五日まで休む予定だから、その三日間ならいつでもいいわよ。お墓参りはそれ以外の日に行くから」
「本当?高広の予定はなんかある」
「俺?なんも無いよ」
両親はきっとアウトドア三昧で、妹も高校受験だ。
「じゃあ徳馬の予定次第だな。あいつお盆は休める気でいるけど、塾によってはそういう時に限って合宿とか訳の分からんことをやりたがるからな」
「ハハッ、そうだな」
「まあ、あんたたち、友だちが頑張ってるのに他人事みたいに言って」
「そういう訳じゃないけど、徳馬の読みはいつも甘いからな。勝手に休めると思ってるだけって可能性がないとは限らないから」
「言えてる」
「姉ちゃん、俺トンカツ食いたいな~」
「元貴はトンカツね。高広君は?」
「あ、俺も同じでいいっす」
「遠慮しなくてもいいのよ」
「いいんだよ姉ちゃん。俺たちは腹がいっぱいになれば、だいたい何でもいいんだから」
「まあ、失礼ね。ひとがせっかく心を込めて作ってるのに」
「そ、それは感謝してるけどさ。男なんてそんなもんだよ、な、高広」
「あ、ああ・・・」
腹が満たされればいいという雑食の元貴と違い、実は高広は偏食だったりする。
しかし、高校生にもなって偏食なんて恥ずかしいからと見栄を張っているせいで、自分だったら注文しないようなメニューも何食わぬ顔で食べているのだ。
特に野菜は好き嫌いが多く、生で食べなければならないサラダなどは、もう腹いっぱいなどと言ってさり気なく元貴に食べさせてしのいでいる。
幸いなことに、元貴が好きなのはお子様向けメニューがほとんどで、野菜が中心のものがあまりないのが唯一の救いだ。
しかし、お肉ばっかりじゃダメよと美世が気を利かせて野菜の煮つけなどを付けてくれたりするのが悩みのたねだ。
どれもタダで食べさせてもらっている手前、文句は言えないのだけれど。
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