もう君を絶対に離さない

星野しずく

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もう君を絶対に離さない.66

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「え、いいんですか」

「いいのいいの」

 紗栄子は言いたいことを言ってすっきりしたのか、颯爽と仕事に戻っていった。

「どうなることやら・・・」

 守は合鍵を握りしめ、ひとり呟いた。

 大学で講義を受けていても、今頃瑠璃子が家で何をしているのかと思うと、気が気じゃない。

 昼休みに『今何してる?』と連絡を入れてみたが、返事はない。



「はぁ~」

「どうしたんだよ、具合でも悪いのか?」

 友人の鈴村が珍しいものを見る様な目で守を見ていた。

「いや、俺じゃないんだけど、ちょっと友達が悩んでて・・・」

「へえ、珍しいな。守が人の悩み事に首を突っ込むなんて」



 普段の守は常に上機嫌、もしくは微笑をたたえているタイプで、不機嫌なところを人に見せることなどない。

 守はこれまでの人生をかなり要領よくこなしてきた。

 トラブルというものはできる限り避け、嫌われないようにうまく誰かにその役割を果たしてもらってきた。

 それもやはり末っ子である自分の特性なのだから、特に罪悪感を感じることもなかった。

 しかしここにきて、すっかり参っている瑠璃子を果たしてどうやって助けてやればいいのか、とんと見当がつかないのだった。



 だが、自分に出来ないことはできないのだ。

 守は取りあえず自分の長所であるマメさを活かすことに決めた。

 瑠璃子のところに直接行けないときは、とにかくメッセージを送りまくる。

 返事があろうとなかろうと、それは構わない。

 そして、時間が出来たら、すぐ瑠璃子のところに飛んでいくのだ。

 そう腹を決めると、少し気持ちも落ち着いた。



 瑠璃子のことはもちろん心配だが、大学での時間も守にとっては貴重なものだ。

 きっと、それをおろそかにしていると知ったら、瑠璃子は余計に罪悪感を感じるだろう。

 守はさっそく他愛もない呟きを瑠璃子宛に送ったのだった。



 暇さえあれば送られてくる守からのメッセージを、最初のニ、三日こそ無視していた瑠璃子だったが、こう何日も返事を返さないのは、さすがに申し訳ないという気持ちが湧いてくる。

 今日は『午後の授業のあと瑠璃子んち行っていい?』というメッセージが届いていたがそのままほったらかしにしていた。

 しかし、どちらかといえばいつも瑠璃子の方が守の世話役だったのに、この状況では完全にそれが逆転している。

 元来負けず嫌いの性格が、いかにも自分が弱っているというスタンスで送られてくるメッセージに対して対抗したいという気持ちにさせる。



 だが、心はまだ沈んだままで、本当は反撃する元気などない。

 ただ、守のメッセージをこれ以上ほったらかしにすることの方が苦しくなってきたのだ。

 瑠璃子は『いいよ』という最低限の言葉を返した。



 午後三時過ぎ、チャイムの音がけたたましく鳴り響いた。

「そんなに鳴らさなくても、ちゃんと起きてます」

 瑠璃子は不機嫌そうに守のことを出迎えた。

「よかった、やっと瑠璃子に会えた」

「・・・どうぞ、入って」

 まだまだ本調子ではないようで、反応は薄い。
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