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もう君を絶対に離さない.36
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「え、お金は大丈夫だよ。私の友達だし。遊びにくるついでみたいなもんだから」
瑠璃子も守も経済的には困っていない部類の人間だから、ついそんな風に軽く考えてしまう。
しかし、野崎はごく普通の、いやどちらかといえば裕福とは縁がない部類の人間だ。
だから、そういう気軽さが理解できない。
「あ、ごめん、それだと、野崎君がかえって気を使うのか・・・」
瑠璃子は野崎と親しくなって、自分と自分のまわりにいる人間は少しばかり世間とズレているという自覚が出来た。
だから、野崎が何か気まずそうにしているときは、きっと自分がおかしなことを言っているんだと思うようになった。
「じゃあ、まだ聞いてみないと分かんないけど、もし私の友達がOKだったら、出演料、バイトの時給の半分くらいでいいから出してあげてくれる?」
「あ、うん、もちろん!ほんと助かるよ」
野崎はやっとすっきりとした笑顔になった。
瑠璃子は野崎を通して、自分のズレを矯正させてもらえて、こちらこそありがたいと思うのだった。
「ねえ、ちなみに写真あったら見せてもらっていい?」
「高校の時のでよければ」
「うん、それでいい」
「えっと・・・、あったあった。はい、これ」
瑠璃子はスマホの画面を野崎の前に差し出した。
「へえ・・・、こんな格好いい人・・・。出てもらえるのかな」
瑠璃子にとっては見慣れた顔の守も、野崎の目にはかなりハイスペックな男性に映る様だった。
「格好いいのかな・・・。身近にいるとよく分かんないや・・・」
「ええっ!充分美形でしょ」
野崎が言うのなら、そうなのだろう。
守はもはや姉弟のような存在で・・・、確かに不細工ではないけれど、とりたてて格好いいと思うこともない。
でも、この考えにも、もしかしたら自分の無意識の力が働いているのかもしれない。
自分とつき合う人間は、自分と同じようにある程度お金に余裕があり、見た目も平均以上といった具合に、友だちになる人物の選定基準にしていた可能性が高い。
「と、とにかく一度聞いてみるから・・・。ね、野崎君」
「そ、そうだね。よろしく頼むよ」
瑠璃子が裕福な家庭に生まれたのも、友人が美形なのも、なにも瑠璃子が悪いわけじゃない。
だけど、そういうことに恵まれなかった野崎には、やはり少し捻くれた考えが生まれてしまうのは仕方のないことなのかもしれない。
それでも、そんな瑠璃子が今は野崎にとっては欠くことのできない人物になりつつある。
瑠璃子の立派な家を出て電車に揺られながら、野崎はそんなことをぼんやり考えていた。
野崎が帰った後、瑠璃子はさっそく守に連絡を入れた。
込み入った話になることが予想されたため、ラインではなく電話をした。
「守、今話せる?」
「うん、今ちょうどゼミが終わったところだから」
「ゼミ?」
「うん、俺の尊敬する門脇先生のゼミ!すごく有名な教授でさ、ゼミに入るのも面接があったんだ」
「へえ~!ゼミってだれでも入れるもんだと思ってた」
「まあ、俺の話は置いといて、なにか急用?」
「あ、昨日話したショートムービーのことなんだけど、私の相手役でちょこっと出てもらうとかできないかな~って」
「ええ~、俺が~?」
瑠璃子も守も経済的には困っていない部類の人間だから、ついそんな風に軽く考えてしまう。
しかし、野崎はごく普通の、いやどちらかといえば裕福とは縁がない部類の人間だ。
だから、そういう気軽さが理解できない。
「あ、ごめん、それだと、野崎君がかえって気を使うのか・・・」
瑠璃子は野崎と親しくなって、自分と自分のまわりにいる人間は少しばかり世間とズレているという自覚が出来た。
だから、野崎が何か気まずそうにしているときは、きっと自分がおかしなことを言っているんだと思うようになった。
「じゃあ、まだ聞いてみないと分かんないけど、もし私の友達がOKだったら、出演料、バイトの時給の半分くらいでいいから出してあげてくれる?」
「あ、うん、もちろん!ほんと助かるよ」
野崎はやっとすっきりとした笑顔になった。
瑠璃子は野崎を通して、自分のズレを矯正させてもらえて、こちらこそありがたいと思うのだった。
「ねえ、ちなみに写真あったら見せてもらっていい?」
「高校の時のでよければ」
「うん、それでいい」
「えっと・・・、あったあった。はい、これ」
瑠璃子はスマホの画面を野崎の前に差し出した。
「へえ・・・、こんな格好いい人・・・。出てもらえるのかな」
瑠璃子にとっては見慣れた顔の守も、野崎の目にはかなりハイスペックな男性に映る様だった。
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「ええっ!充分美形でしょ」
野崎が言うのなら、そうなのだろう。
守はもはや姉弟のような存在で・・・、確かに不細工ではないけれど、とりたてて格好いいと思うこともない。
でも、この考えにも、もしかしたら自分の無意識の力が働いているのかもしれない。
自分とつき合う人間は、自分と同じようにある程度お金に余裕があり、見た目も平均以上といった具合に、友だちになる人物の選定基準にしていた可能性が高い。
「と、とにかく一度聞いてみるから・・・。ね、野崎君」
「そ、そうだね。よろしく頼むよ」
瑠璃子が裕福な家庭に生まれたのも、友人が美形なのも、なにも瑠璃子が悪いわけじゃない。
だけど、そういうことに恵まれなかった野崎には、やはり少し捻くれた考えが生まれてしまうのは仕方のないことなのかもしれない。
それでも、そんな瑠璃子が今は野崎にとっては欠くことのできない人物になりつつある。
瑠璃子の立派な家を出て電車に揺られながら、野崎はそんなことをぼんやり考えていた。
野崎が帰った後、瑠璃子はさっそく守に連絡を入れた。
込み入った話になることが予想されたため、ラインではなく電話をした。
「守、今話せる?」
「うん、今ちょうどゼミが終わったところだから」
「ゼミ?」
「うん、俺の尊敬する門脇先生のゼミ!すごく有名な教授でさ、ゼミに入るのも面接があったんだ」
「へえ~!ゼミってだれでも入れるもんだと思ってた」
「まあ、俺の話は置いといて、なにか急用?」
「あ、昨日話したショートムービーのことなんだけど、私の相手役でちょこっと出てもらうとかできないかな~って」
「ええ~、俺が~?」
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