もう君を絶対に離さない

星野しずく

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もう君を絶対に離さない.29

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 都会育ちで、容姿や家庭環境など自分を取り巻くものは、夏希には負けていないという自尊心がある反面、本当に好きなことがある夏希を羨ましく思っていた。

 決してそんなことは口にできなかったけれど・・・。

 というか、自覚さえしていなかった。



 だけど、野崎のおかげで、そんな情けない自分の嫌な部分に気付いてしまった。

 でも、それでよかったと思う。

 今までの自分では、自分にとって大切な人ほど自分から離れていってしまっただろう。



「ねえ、授業終わったら、課題の相談乗ってくれる?」

「別にいいけど、本当にどうしちゃったの?なんか、瑠璃子が瑠璃子じゃないみたい」

「あはは・・・。なにそれ」

「う~ん、ハッキリ言えないけど・・・」



 そんな話をしていると、教授が部屋に入ってきたので、二人は慌ててノートを取り出した。

 夏希に手伝ってもらい、無事課題も完成することが出来た。



 瑠璃子は家に帰ってホッと一息つくと、考えるのはやはり野崎のことだった。

 それでも自分は自分の選んだ道をもう少し頑張ってみようと、帰る途中書店に寄ってファッション雑誌を何冊か買ってきた。

 それらをカバンから取り出し、パラパラとめくり始めた。



 いったい自分はどんなものが作りたいのだろう。

 そして野崎はどんな作品を作るのだろう。

 雑誌を見ながらも、ついそんなことを考えてしまう。



 スマホにメッセージが届いた。

『昨日、早速、君が主人公のショートムービーの脚本を一つ書いてみた。次の土日は空いてる?』

 野崎からだった。

「早っ!もう作品が一つ書けたの?」

 やはり野崎の映画に懸ける意欲は本物だ。



『土日どっちもOKです』

 ファッションデザインともう少し真剣に向き合おうと思ってはいるけど、今はまだ、夏希や野崎ほどの熱が自分の中にはない。

『そっか、よかった』

 野崎から返事をもらって、瑠璃子は早くも土曜日が待ち遠しくて仕方なかった。



 この間とは違い、今日はワクワクしながら野崎のアパートを訪ねた。

 チャイムを押すと、すぐにドアが開いて部屋に招かれた。



 野崎は早速自作の脚本を瑠璃子に手渡した。

「うわぁすごい。脚本なんて見るの初めて」

 枚数にして数十枚のそれは、薄っぺらいものだったが、瑠璃子のために野崎が書いたのだと思うだけで、信じられないくらい感動してしまう。

 瑠璃子はページをめくり、そのストーリーを一通り頭に入れた。



「どうかな・・・。女の子が主役のは書いたことはあったけど、実際に撮るのは初めてなんだ」

「別れた恋人のことが忘れられない女の子の複雑な心境を描いた作品ね。これだったら、実際の登場人物が一人でもドラマチックな内容のものが作れそう」

「ほんと?笠原さんにそう言ってもらえると、安心するな」

「そ、そんな・・・、なんかエラそうなこと言っちゃったな。それで、ショートムービーってだいたい時間にしてどのくらいになるの?」

 映画のことになると、瑠璃子もつい真剣に聞いてしまう。

「二十分から三十分くらいかな」

「ふうん、そうなんだ。そんな短い間でストーリー性を持たせるって、ショートムービーも結構難しいね」
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