もう君を絶対に離さない

星野しずく

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もう君を絶対に離さない.14

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 野崎はそもそも女性に気の利いた話など出来ない。

 映画の話ならいくらでもできるけれど、あまり熱く語っても引かれるのが関の山で、野崎の知識についてこられる女性には出会ったことがない。
 


 瑠璃子の方は、普通だったら男の子との会話を苦手に感じることはない。

 しかし、相手が野崎となると話は別だ。

 瑠璃子は、会話の糸口がつかめないまま、気まずい時間が流れるのに耐えられなくなる。



「あ、あの、じゃあ、私、そろそろ帰ります」

「え、でも、今来たばっかりだし・・・」

 野崎は話こそできないものの、わざわざこんなところまで来てくれた瑠璃子をお茶も飲ませないで帰すのは申し訳なく思ってしまう。



「ううん、いいの・・・。野崎君が、パパっと仕上げてくれたから助かったわ、それじゃあ」

 瑠璃子はもっと一緒にいたかったけれど、本当にどうしたらいいか分からなくなってしまって、野崎が止めるのも聞かず、部屋を飛び出してしまった。



 だが、外に出て少し歩いたところで気づいた。

 自分が今どこにいるのかが、そもそも分からないということに。

 そして、何駅で降りたのかもよく覚えていないのだ。



 瑠璃子はしばらくその辺りをグルグルと歩いてみたけれど、もはや東西南北さえも分からなくなる始末だ。

 そして、さらに運の悪いことにポツリポツリと雨が降り出し、あっという間に本降りになってしまった。

 それでも、自分から飛び出した手前、野崎のアパートに戻る決心がつかない。



 五月初旬の今、日中は汗ばむくらいの気温になるが、すっかり日の落ちた夜はまだ肌寒い。

 雨に打たれているうちに、段々と身体が冷えていくのが分かる。

 道は分からない・・・。

 びしょ濡れで、身体は冷えきって小刻みに震えはじめた。



 このまま歩き続けていたら、野崎のアパートさえも見失ってしまうだろうと思って周りを見渡した。

 いや、実際にはもうほぼ迷子だ・・・。

 どちらに行けば野崎のアパートがあるか分からなくなってしまったのだ。

 瑠璃子はもう意地を張っている場合ではなくなってしまった。

 恥を忍んで野崎にLINEをした。

『すみません、道に迷ってしまいました。助けてください』

 するとすぐに電話がかかってきた。



「もしもし・・・」

「ずっと歩いてたの?もうとっくに駅に着いてると思ってたから?濡れちゃったよね、寒くない?ああ、それより、今いるところから、何か目印になるようなものってないかな」

「ああ、それだったら、コインランドリーフレッシュっていうところが目の前にあるけど・・・」

「分かった、そこで待ってて。今すぐ行くから」

 野崎はほどなく瑠璃子の前に現れた。

 全力で走ってきてくれたのだろう・・・、肩で息をしている。



「すみません、迷惑かけちゃって」

「そんなことはいいから・・・」

 野崎は持ってきたタオルで瑠璃子の濡れた髪をふいてくれた。

 しかし、もう全身がびしょ濡れで、タオルで拭いたくらいでは追いつかない。

「急いで僕のアパートに戻ろう。風邪を引いてしまう」

 野崎は瑠璃子に傘を渡した。
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