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ドSな彼のイジワルな愛し方.37
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その日バイトに行くと、なぜか時間になっても佐野君はやって来なかった。
店長にそれとなく聞くと、急用が出来て今日は休むと連絡があったそうだ。
急いで家に帰ると、佐野君に電話をかける。
プルルル、プルルル、プルルルという呼び出し音の後、留守番電話に切り替わる。
しかたなくメッセージを入れることにした。
『琴乃です。相談したいことがあるから、電話ください。待ってます。』
「ふぅ~。せっかく勇気を出して電話したのに、留守電か。早く返事が来ないかな~。」
待っている時間が長く感じられる。
しかし、いくら待っても電話はかかって来ない。
日付が変わる時間まで待ってみたけど、返事は来ない。
仕方なくその日はあきらめて眠りに就いた。
次の日、教室に入ると佐野君はもう来ていた。
しかし、その周りには、佐野君ファンが陣取っている。
(一体どうなってるの?今までこんなに接近して来なかったのに。また話しかけられないよ…。)
どうやら、佐野君が琴乃に話しかけたり、親しげにしたことがきっかけで、自分たちもお近づきになれるのではと考えた佐野君ファン達が猛アタックを始めたらしいのだ。
(何この展開?付き合い始めたばかりのラブラブな時間はどこへ行っちゃったの?)
琴乃は、彼女達のパワーに圧倒され、全く佐野君に近づくことが出来なくなってしまった。
(これじゃあ、付き合う前より遠い存在みたい…。)
あくびしながら教室に入ってきた安藤君をつかまえると、昨日の事を報告する。
「う~ん。どうしたんだろうね。バイトは用があったってことで仕方ないとして、留守電に入れたのに返事が無いってのは、おかしいな。」
楽天家の安藤君も、ようやく真剣に話を聞いてくれる気になったようだ。
「そうでしょ~。佐野君が私のこと無視してるなんて思いたくないけど、いったいどうなっちゃったのかな?もう訳わからないよ~。」
「そうだね。ここは、またまた俺の出番かな?」
安藤君はそう言うと、仕事人の顔に変わる。
「頼むよ~。安藤様~。頼りにしてます。」
琴乃は、先日の安藤君の鮮やかな仕事ぶりを思い出し、彼に全てを託すことにした。
(あわててもしょうがない。どうせ、一年待ったんだから、もう少し待つだけと思えばいいよね。)
今度は、二度目の仕事だったこともあり、安藤君は三日ほどで色々と情報をつかんだらしい。
例のごとく、近くのファミレスで報告を聞く。
安藤君はすっかり探偵気取りで、自分がどんな手法を使ってそれらの情報を得たのかという自慢話が延々と続き、肝心な結果報告になかなかたどり着かない。
自分の為に調べてきてくれたという手前、聞かないわけにもいかず、三十分程我慢して聞いていけど、さすがに耐え切れなくなって、琴乃は安藤君の言葉を遮る。
「安藤君!安藤君が優秀なのはよ~く分かったし、とっても感謝してる。だから、そろそろ、結果を教えてもらえないかな?」
そう言われて、安藤君はようやく結果を話しはじめた。
安藤君による調査報告の内容はこういうものだった。
佐野君が琴乃に告白した次の日、佐野君が琴乃に「おはよう」とあいさつをして、その後手を引いてどこかへ行ってしまったという一連の事は、本人たちが思っている以上に佐野君ファン達にとっては大事件だったらしい。
その日のうちに、他のクラス、いや他の学年、つまり学校中の佐野君ファンの間にあっと言う間に広まったらしい。
そして、それは、琴乃が佐野君の彼女かもしれないとかいうことではなく、今まで硬派で通っていた佐野君が女子に興味を示したということになる。
つまり、これまでは遠くから見つめていただけの佐野君ファンが自分達も彼女になりたいと名乗りを上げるきっかけとなってしまったのだ。
全校の佐野君ファンの数は軽く百人を超えていて、学校内ではどこに行っても、佐野君は、佐野君ファンに囲まれる始末で、帰りもついて来る、家から出ようとしても、出待ちされ、外出もままならい。
おまけに、ファン同士のネットワークで、どこからか佐野君の電話番号やアドレスがもれて、佐野君のスマホは留守電もメールも、パンク状態になってしまった。
安藤君の報告を聞いて、琴乃は想像以上の状態に驚きを隠せない。
混乱する頭で理解したのは、今、佐野君はとんでもない状況におかれているということだった。
「安藤君、私に何か出来る事あるかな?」
こんな時に佐野君のことを助けてあげられない自分が情けなく、腹立たしい。
「う~ん。素人には難しいね。だけど、琴乃には俺がついてるのを忘れないで。実は、もう色々と手を打ってあるんだ。それは、また追々、報告するから。」
「ありがと。本当に安藤君はいい探偵になれるよ。」
琴乃はそんなことしか言えなかった。
店長にそれとなく聞くと、急用が出来て今日は休むと連絡があったそうだ。
急いで家に帰ると、佐野君に電話をかける。
プルルル、プルルル、プルルルという呼び出し音の後、留守番電話に切り替わる。
しかたなくメッセージを入れることにした。
『琴乃です。相談したいことがあるから、電話ください。待ってます。』
「ふぅ~。せっかく勇気を出して電話したのに、留守電か。早く返事が来ないかな~。」
待っている時間が長く感じられる。
しかし、いくら待っても電話はかかって来ない。
日付が変わる時間まで待ってみたけど、返事は来ない。
仕方なくその日はあきらめて眠りに就いた。
次の日、教室に入ると佐野君はもう来ていた。
しかし、その周りには、佐野君ファンが陣取っている。
(一体どうなってるの?今までこんなに接近して来なかったのに。また話しかけられないよ…。)
どうやら、佐野君が琴乃に話しかけたり、親しげにしたことがきっかけで、自分たちもお近づきになれるのではと考えた佐野君ファン達が猛アタックを始めたらしいのだ。
(何この展開?付き合い始めたばかりのラブラブな時間はどこへ行っちゃったの?)
琴乃は、彼女達のパワーに圧倒され、全く佐野君に近づくことが出来なくなってしまった。
(これじゃあ、付き合う前より遠い存在みたい…。)
あくびしながら教室に入ってきた安藤君をつかまえると、昨日の事を報告する。
「う~ん。どうしたんだろうね。バイトは用があったってことで仕方ないとして、留守電に入れたのに返事が無いってのは、おかしいな。」
楽天家の安藤君も、ようやく真剣に話を聞いてくれる気になったようだ。
「そうでしょ~。佐野君が私のこと無視してるなんて思いたくないけど、いったいどうなっちゃったのかな?もう訳わからないよ~。」
「そうだね。ここは、またまた俺の出番かな?」
安藤君はそう言うと、仕事人の顔に変わる。
「頼むよ~。安藤様~。頼りにしてます。」
琴乃は、先日の安藤君の鮮やかな仕事ぶりを思い出し、彼に全てを託すことにした。
(あわててもしょうがない。どうせ、一年待ったんだから、もう少し待つだけと思えばいいよね。)
今度は、二度目の仕事だったこともあり、安藤君は三日ほどで色々と情報をつかんだらしい。
例のごとく、近くのファミレスで報告を聞く。
安藤君はすっかり探偵気取りで、自分がどんな手法を使ってそれらの情報を得たのかという自慢話が延々と続き、肝心な結果報告になかなかたどり着かない。
自分の為に調べてきてくれたという手前、聞かないわけにもいかず、三十分程我慢して聞いていけど、さすがに耐え切れなくなって、琴乃は安藤君の言葉を遮る。
「安藤君!安藤君が優秀なのはよ~く分かったし、とっても感謝してる。だから、そろそろ、結果を教えてもらえないかな?」
そう言われて、安藤君はようやく結果を話しはじめた。
安藤君による調査報告の内容はこういうものだった。
佐野君が琴乃に告白した次の日、佐野君が琴乃に「おはよう」とあいさつをして、その後手を引いてどこかへ行ってしまったという一連の事は、本人たちが思っている以上に佐野君ファン達にとっては大事件だったらしい。
その日のうちに、他のクラス、いや他の学年、つまり学校中の佐野君ファンの間にあっと言う間に広まったらしい。
そして、それは、琴乃が佐野君の彼女かもしれないとかいうことではなく、今まで硬派で通っていた佐野君が女子に興味を示したということになる。
つまり、これまでは遠くから見つめていただけの佐野君ファンが自分達も彼女になりたいと名乗りを上げるきっかけとなってしまったのだ。
全校の佐野君ファンの数は軽く百人を超えていて、学校内ではどこに行っても、佐野君は、佐野君ファンに囲まれる始末で、帰りもついて来る、家から出ようとしても、出待ちされ、外出もままならい。
おまけに、ファン同士のネットワークで、どこからか佐野君の電話番号やアドレスがもれて、佐野君のスマホは留守電もメールも、パンク状態になってしまった。
安藤君の報告を聞いて、琴乃は想像以上の状態に驚きを隠せない。
混乱する頭で理解したのは、今、佐野君はとんでもない状況におかれているということだった。
「安藤君、私に何か出来る事あるかな?」
こんな時に佐野君のことを助けてあげられない自分が情けなく、腹立たしい。
「う~ん。素人には難しいね。だけど、琴乃には俺がついてるのを忘れないで。実は、もう色々と手を打ってあるんだ。それは、また追々、報告するから。」
「ありがと。本当に安藤君はいい探偵になれるよ。」
琴乃はそんなことしか言えなかった。
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