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ドSな彼のイジワルな愛し方.31
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安藤君の反応はといえば、佐野君を好きでもない人だったら誰もが抱くであろう、佐野君批判だった。
まあ、これは仕方ないだろう。
どう考えたって彼の身勝手以外の何者でもないのだから…。
むしろ、好きだからとは言え全てを許してしまっている私がどうかしていると思ったほうがいいくらいだ。
安藤君としては佐野君に憤慨しながらも、ようやく琴乃の口からこのところの様子がおかしかった原因が聞けたことでかなりすっきりしたようだった。
そして、鼻息も荒くこう言った。
「まあ、俺にまかしといて。いい考えがあるから。」
自信満々の安藤君の横顔は頼もしくもあり、少しだけ怖くもあり…。
ただ、そう見えた安藤君がフッと漏らしたため息に琴乃が気づくことはなかった。
どちらにしても、安藤君の協力があれば何もしないで終わるという最悪のシナリオだけは避けられそうで、琴乃は少しホッとした。
しかし、実は安藤君が勉強以外のところで発揮する能力を琴乃は過小評価していたことを後で知ることになる。
一週間ほど経ったある日の放課後、安藤君は琴乃にいい報告があるからと、例のファミレスへ誘う。
安藤君に協力して欲しいと頼んだ琴乃だったが、正直そんなに期待はしていなかった。
しかし、安藤君の口から知らされる佐野君に関する情報は、琴乃にしてみたら、探偵バリのトップシークレットと言える程のものばかりだった。
「順を追って説明するから、慌てないでよーく聞くんだよ。」
そんな前置きをすると、安藤君の独演会が始まった。
まず、琴乃と安藤君、佐野君が通っている今の学校は実は、佐野君のお父さんが会長であること。
普段学校行事などに参加するのは理事長なので誰もそんなことは知らない。
そして、なんとこの学校は佐野君の希望で作られたということ。
ここで、琴乃は思わず「ええ~っ!!」と大声を出してしまう。
「し~っ!」と安藤君にたしなめられ、一度は黙ったもののこれが驚かずにいられるはずがない。
(息子のために学校を作るって。いったいどんな感覚なの??)
序盤から想像をはるかに超えた事実に琴乃の頭はすでにオーバーヒート気味だ。
そして、そもそもなぜ佐野君のために学校を創ることになったのか。
それがこの謎の一番の核心なんだけど…、ここで安藤君は少しもったいぶった様子で琴乃を見つめる。
そして安藤君の口から発せられた言葉は思いがけないものだった。
「佐野君は琴乃と同じ学校に通いたくってこの学校を作ってもらったんだってさ。」
琴乃は安藤君の言っている意味が全く分からなかった。
(佐野君が私と同じ学校に通いたくてこの学校を作ってもらった?)
琴乃はもう一度頭の中で同じフレーズを繰り返す。しかし、何かが足りない。
そう、なぜ佐野君は私と同じ学校に通いたいのか。琴乃は安藤君に尋ねる。
すると、待ってましたとばかりに安藤君は答えた。
「そんなの簡単じゃん。佐野君は琴乃にベタ惚れだってことだよ。」
琴乃の頭の中は更に混乱する。
(あの佐野君が私を好き?そんなはずないよ。それ以前に何で彼が私の事知ってるの?)
「あのね安藤君、私、高校に入る前に佐野君と会った事ないんだよ。それに、前にも言ったように、佐野君にはたっくさんの、その~、そういうことをする女友達がいて、私はそのうちの一人だっただけでね、佐野君が私のことを好きだなんてあるはずないよ。」
そんな琴乃の言葉はまるで聞こえていない様子で安藤君は話続ける。
「まあ、落ち着いて。も少し詳しく話すから。」
事の始まりは中学の時、琴乃の通っていた進学塾だった。
琴乃は気がつかなかったが同じクラスに佐野君がいたのだ。
そして佐野君は琴乃に一目惚れをしてしまったのだが、その頃はシャイだった彼はついに一言も声をかけることが出来なかった。
しかし、彼の家はいくつもの企業や学校、病院を傘下に治めるとてつもない富豪だった。
それまで勉強に興味を示さなかった息子から新しい高校を作って欲しいとのたっての頼みで、話はトントン拍子に進み、ついに新しい高校が出来てしまったという訳だ。
そして、その高校に琴乃を入学させるべくありとあらゆる裏工作が行われたらしい。
そう言われてみると、琴乃の自宅からは最も近く、なおかつ琴乃の成績でも十分入学出来るレベルで、私立の割りには授業料が安く、なぜか琴乃は推薦枠に入れてもらえるという、好待遇だった。
制服はといえば、この辺りの学校でも1、2を争うほどの可愛さだ。
その用意周到さに、薄ら寒い感じを覚えながらも、もしそれが本当だったらと、少しだけ現実的に考える気になってきた。
(ここまで聞いて、いったい安藤君って何者だろうかと、今度はそっちも気になってくる。)
琴乃は安藤君に感謝の気持ちを告げながらも、いったいどうやってこんな情報を得ることが出来たのか尋ねてみた。
すると安藤君は、待ってましたとばかりに得意気に笑うと、
「ぜったい内緒の話だよ。うちの親、実は探偵なんだよね。それで、俺も小さい頃から色々と訓練を受けてて、今回俺の初仕事なわけ!」
「えぇーっ!!」
「だから、しーって。」
安藤君はおかしそうに琴乃を見つめると、
「ここまでが俺の出来ること。あとは琴乃ががんばるんだよ。」
そう言って琴乃の肩をポンっと叩く。
まあ、これは仕方ないだろう。
どう考えたって彼の身勝手以外の何者でもないのだから…。
むしろ、好きだからとは言え全てを許してしまっている私がどうかしていると思ったほうがいいくらいだ。
安藤君としては佐野君に憤慨しながらも、ようやく琴乃の口からこのところの様子がおかしかった原因が聞けたことでかなりすっきりしたようだった。
そして、鼻息も荒くこう言った。
「まあ、俺にまかしといて。いい考えがあるから。」
自信満々の安藤君の横顔は頼もしくもあり、少しだけ怖くもあり…。
ただ、そう見えた安藤君がフッと漏らしたため息に琴乃が気づくことはなかった。
どちらにしても、安藤君の協力があれば何もしないで終わるという最悪のシナリオだけは避けられそうで、琴乃は少しホッとした。
しかし、実は安藤君が勉強以外のところで発揮する能力を琴乃は過小評価していたことを後で知ることになる。
一週間ほど経ったある日の放課後、安藤君は琴乃にいい報告があるからと、例のファミレスへ誘う。
安藤君に協力して欲しいと頼んだ琴乃だったが、正直そんなに期待はしていなかった。
しかし、安藤君の口から知らされる佐野君に関する情報は、琴乃にしてみたら、探偵バリのトップシークレットと言える程のものばかりだった。
「順を追って説明するから、慌てないでよーく聞くんだよ。」
そんな前置きをすると、安藤君の独演会が始まった。
まず、琴乃と安藤君、佐野君が通っている今の学校は実は、佐野君のお父さんが会長であること。
普段学校行事などに参加するのは理事長なので誰もそんなことは知らない。
そして、なんとこの学校は佐野君の希望で作られたということ。
ここで、琴乃は思わず「ええ~っ!!」と大声を出してしまう。
「し~っ!」と安藤君にたしなめられ、一度は黙ったもののこれが驚かずにいられるはずがない。
(息子のために学校を作るって。いったいどんな感覚なの??)
序盤から想像をはるかに超えた事実に琴乃の頭はすでにオーバーヒート気味だ。
そして、そもそもなぜ佐野君のために学校を創ることになったのか。
それがこの謎の一番の核心なんだけど…、ここで安藤君は少しもったいぶった様子で琴乃を見つめる。
そして安藤君の口から発せられた言葉は思いがけないものだった。
「佐野君は琴乃と同じ学校に通いたくってこの学校を作ってもらったんだってさ。」
琴乃は安藤君の言っている意味が全く分からなかった。
(佐野君が私と同じ学校に通いたくてこの学校を作ってもらった?)
琴乃はもう一度頭の中で同じフレーズを繰り返す。しかし、何かが足りない。
そう、なぜ佐野君は私と同じ学校に通いたいのか。琴乃は安藤君に尋ねる。
すると、待ってましたとばかりに安藤君は答えた。
「そんなの簡単じゃん。佐野君は琴乃にベタ惚れだってことだよ。」
琴乃の頭の中は更に混乱する。
(あの佐野君が私を好き?そんなはずないよ。それ以前に何で彼が私の事知ってるの?)
「あのね安藤君、私、高校に入る前に佐野君と会った事ないんだよ。それに、前にも言ったように、佐野君にはたっくさんの、その~、そういうことをする女友達がいて、私はそのうちの一人だっただけでね、佐野君が私のことを好きだなんてあるはずないよ。」
そんな琴乃の言葉はまるで聞こえていない様子で安藤君は話続ける。
「まあ、落ち着いて。も少し詳しく話すから。」
事の始まりは中学の時、琴乃の通っていた進学塾だった。
琴乃は気がつかなかったが同じクラスに佐野君がいたのだ。
そして佐野君は琴乃に一目惚れをしてしまったのだが、その頃はシャイだった彼はついに一言も声をかけることが出来なかった。
しかし、彼の家はいくつもの企業や学校、病院を傘下に治めるとてつもない富豪だった。
それまで勉強に興味を示さなかった息子から新しい高校を作って欲しいとのたっての頼みで、話はトントン拍子に進み、ついに新しい高校が出来てしまったという訳だ。
そして、その高校に琴乃を入学させるべくありとあらゆる裏工作が行われたらしい。
そう言われてみると、琴乃の自宅からは最も近く、なおかつ琴乃の成績でも十分入学出来るレベルで、私立の割りには授業料が安く、なぜか琴乃は推薦枠に入れてもらえるという、好待遇だった。
制服はといえば、この辺りの学校でも1、2を争うほどの可愛さだ。
その用意周到さに、薄ら寒い感じを覚えながらも、もしそれが本当だったらと、少しだけ現実的に考える気になってきた。
(ここまで聞いて、いったい安藤君って何者だろうかと、今度はそっちも気になってくる。)
琴乃は安藤君に感謝の気持ちを告げながらも、いったいどうやってこんな情報を得ることが出来たのか尋ねてみた。
すると安藤君は、待ってましたとばかりに得意気に笑うと、
「ぜったい内緒の話だよ。うちの親、実は探偵なんだよね。それで、俺も小さい頃から色々と訓練を受けてて、今回俺の初仕事なわけ!」
「えぇーっ!!」
「だから、しーって。」
安藤君はおかしそうに琴乃を見つめると、
「ここまでが俺の出来ること。あとは琴乃ががんばるんだよ。」
そう言って琴乃の肩をポンっと叩く。
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