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ドSな彼のイジワルな愛し方.26

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 二日間に渡って行われた学園祭も終わりの時間になり、琴乃たちは全校放送で学園祭の終了と、体育館への集合を告げる。

 全校生徒が体育館に集まると、滞りなく行われた学園祭に校長先生から生徒達に対して労いの言葉がかけられた。

 そして、いよいよクラス別出し物ランキングの結果発表だ。

 3位はお約束のお化け屋敷を出展した3年2組、2位はクラスのイケメンを集めてライブをやった2年3組、そして残るは1位の発表だ。

「それでは発表します。今年度の学園祭出し物ランキング1位は2年2組のメイド喫茶です。」

 ワ―ッ!と歓声が上がる。

 リーダーの三樹ちゃんは大粒の涙を流している。

 琴乃は体育館の隅の放送スペースで一人喜びを噛みしめていた。

「村井さんのクラス一位だったね。よかったじゃん。」

 めずらしく小百合ちゃんが褒めてくれる。

「うん、みんなが頑張った結果だから、とっても嬉しい。」

「ふ~ん、みんな熱いんだね。私はそういうの無理だわ~。」

「ふふっ、そうかもね。小百合ちゃんらしいわ~。」

「ちょっと、笑うのは失礼だな~。」

「ごめん、ごめん。さあ、私達もそろそろ教室に戻って後片付けだよ。」

「はぁ~い。」

 だるそうに答える小百合ちゃんを急き立てながら体育館を後にした。

 教室に戻ると、皆はまだ興奮冷めやらぬ感じで熱気に溢れていた。

「村井さ~ん!やったよ~!1位だよ~。」

 リーダーの三樹が琴乃に抱きついてくる。

「うん、うん!よかったね、ほんとによかった~!」

 琴乃も今まで味わったことの無い感動を味わっていた。

「それとね、村井さん、もう一ついいお知らせがあるんだ。」

 そう言うと三樹は好きなメイドの人気投票の結果を手にしている。

「村井さん、あなた人気投票の1位だったんだよ。」

「ええ~っ!なんで私が?」

「さあ、私達を差し置いてっていうのが癪に障るけど、あなたのおかげでうちのクラスが一位になれたようなもんだからそんなこと言ってられないかな。」

「そ、そんな大げさな…。私なんかが1位なんて何かの間違いじゃ…。」

「もう、謙遜しすぎ!あなた自分の魅力に気付いてないだけだよ。もっと自信持って!」

 ふと教室の隅にいる佐野君に目線を移すと、なぜかサッと目を逸らされる。その表情は何だか怒っているようにも見えた。

(まただ。佐野君何だか様子が変だよ。)

 そんな佐野君に戸惑う琴乃のところへ、安藤君がニヤニヤしながら近づいてくる。

「よお、琴乃!一位だって、やるじゃん!」

「う、うん。」

「なんだよ~、うれしくないのかよ~。」

「そ、そう言うわけじゃないけど…。」

(佐野君のことが気になってそれどころじゃないのに。)

「お前、もっと素直になれよ。みんな1位になりたくて頑張ってたんだよ。それなのにお前ときたら、1位になっても喜びもしないで。それじゃあみんなに失礼でしょ。」

 琴乃にはえらく厳しい安藤君を三樹が遮る。

「まあまあ、村井さんは、もともとメイドなんてやりたくなかったのに、あれだけやってくれたんだもん。うちらにしてみたら文句なんて言えないよ。だから、安藤君もそんなに村井さんに厳しく言わないでやってよ。うちら、このクラスで1位だったのが単純にうれしいんだ。それでいいんだよ。」

 三樹ちゃんの男前な言葉に、さすがの安藤君もそれ以上文句をつける気にはならなかった。

「そうか。リーダーがそう言うんなら、それでいいや。琴乃、とにかく今日はおめでとう。」

「う、うん。ありがとう。」

「どうだ、帰りに何かおごってやろうか?」

「え、えっと…。」

 佐野君の方をチラリと見ると、また目を逸らし、ご自由にという表情ですましている。

「じゃあ、お言葉に甘えて…。」

「よし!じゃあ、モムバーガーな。」

「え~、ケーキがいい~。」

「だ~め、腹が減ったらモムバーガーって相場は決ってるんだ。」

「何それ~、自分の好みじゃん。」

「おごってもらう分際で文句を言うんじゃない。」

「うう…。」

 夫婦漫才のような会話で盛り上がっている二人に少し気兼ねするように三樹ちゃんが話しかけてくる。

「ねえ、村井さん、一位の人のメイド姿の写真を投票してくれた人に配らないといけないんだけど、これから少し時間いい?」

「あ、え、そうだったね。分かった。」

 琴乃は急いで着替えを済ますと、再びメイドの姿で現れる。

「ヒュー。やっぱ、琴乃可愛いな~。そのままメイド喫茶で働けるんじゃない?」

「も~う、安藤君はちょっと黙ってて。」

 琴乃はだんだん安藤君がうっとおしくなってきて、本気でキレそうになる。

 三樹ちゃんの指示に従いポーズを取り、その中から最も良く撮れているものを選んだ。

「うん、これにしよ。村井さん、後はやっとくから、お疲れ様。」

 そう言うと三樹ちゃんは、早速現像するため近くのコンビに出かけて行った。

 佐野君はそんなみんなのやり取りに決して加わる事無く、遠巻きで見ているだけだったが、その表情はずっと曇ったままだった。

 琴乃は約束どおり安藤君と一緒にハンバーガーをかじりながら、たわいもない話をしていた。

「それにしても、この学園祭で琴乃が可愛いことがバレちゃったな~。俺だけの秘密にしときたかったのに。」

「何それ。俺だけの秘密とか意味分かんない。」

「はは、冗談、冗談。」

 お店を出て安藤君と別れ、自宅に向かおうとした琴乃の前に佐野君が姿を現す。

 佐野君が待ち伏せ?なんて信じられないけど、彼は確かにここにいる。

「仲のよろしいことで。」

「べ、別に、安藤君はただの友達だよ。」

「そう?」

「そうだよ。」

「ふ~ん。まあいい。これから時間ある?」

「う、うん。」

「じゃあ、俺の家に行こうか。」

 そう言うと、佐野君は先に歩いて行ってしまう。

「ま、待って。」

 佐野君は一切話しかけてこないので、琴乃も黙って後を着いて行く。15分程歩いて佐野君の家に着いた。
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