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ドSな彼のイジワルな愛し方.14

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 教室に入るといつものように佐野君はすでに席についていた。

 琴乃はもう心臓が爆発しそうに高鳴っているのだが、立ったままでいるわけにもいかず恐る恐る席に着く。

 佐野君はと言えば、普段と変わりない様子で友人たちと話している。

(何か私だけ勝手に盛り上がっちゃってるのかな…。)

 ちょっと悲しい気持ちになったけど、贅沢を言ってはいけないと気持ちを切り替える。

 すると、ふいに携帯にメッセージが届く。

『おはよう。今日もかわいいね。』

 佐野君からだ。

『おはようございます。佐野君も素敵すね。』と返すと、

『ははっ、君はおもしろい。』そんな返事が返ってくる。

(気にかけてくれてるのはうれしい。でも直接話してくれないのはやっぱりさみしいな…。)



 授業が始まって資料が配られる。

 いつものように私に最後の一枚を渡すとき振り向いた佐野君と目が合う。

 誰にも分からない様に琴乃に向けてウィンクをする。

 これだけで、琴乃の気持ちは激しく揺さぶられてしまうのだ。

(もう、私はあなたにメロメロですよ。こうなりゃもう奴隷ですよ。)

 思わずやけになってしまう琴乃だった。

 授業が終わり帰ろうと下駄箱に向かっていると、琴乃の携帯にメッセージが届く。

「一緒に帰らない?」

 佐野君からだった。

 断る理由なんて何も無い。迷う事無くOKの返事をする。

 校門のところで待っていると、佐野君がやってきた。

「じゃ、行こうか。」

「はい。」

(これじゃあ付き合ってるみたいじゃん。期待しちゃうよ…。)

「この後何か予定ある?」

「ううん。何もないです。」

「そう。じゃあ、家来る?」

「えっ、ええっ~。」

「うん?だめ?」

「だっ、だめじゃ無いですけど…。」

「じゃあ、決まりね。」

「はっ、はあ。」

 流れでOKすることになってしまった。

 佐野君の家への道すがら、特に会話は無く微妙な空気のままだった。

 琴乃からは何も聞くことが出来ないから、彼から話してくれるのを待つことしか出来ない。

 喜んだのもつかの間、しばらく重苦しい空気が流れた。

(手をつないだり、普通に話したり出来たらな…。)

 なんて、贅沢なことを考えちゃだめだよね。

 つい欲張りになっってしまう気持ちを抑えて平静を装った。

 佐野君の後ろをとぼとぼと歩く。

 15分くらい歩いただろうか、

「ここだよ。」

 佐野君が立ち止まる。

 そこは、想像していたよりかなり、いや、すごく大きないわゆる豪邸だった。

「ここ、ですか…。」

 佐野君は、驚いた表情で家を眺める琴乃を面白そうに見つめながら、扉を開ける。

「さあ、どうぞ。」

 エントランスの床は大理石、吹き抜けの高窓からは明るい日差しが注いでいる。

 あちらこちらに豪華な置物や絵画が飾られていて、一目で普通の家庭ではないことが分かる。

 きつねにつままれたようにぽか~んとしている琴乃の手を掴むと、佐野君は歩き出した。はっと我に返り琴乃も足並みを揃える。

「びっくりした?」

「えっ、ええ、まあ。」

「ええ、まあ。」どころじゃなく本当はめちゃくちゃ驚いている。

 そして、更に佐野君の謎が深まる。

 でも、何も聞いちゃいけないんだから、何でもないふりをするしかないのだけれど…。

 広い邸宅の中庭が見える一室が佐野君の部屋らしく、彼はそこで立ち止まる。

 カチャッとドアを開け、「どうぞ。」と言うと琴乃を部屋の中に招き入れドアが閉まる。

「この時間は、誰もいないから、二人っきりだよ。うれしい?」

 佐野君が意味深な表情で言う。

(佐野君の部屋に、二人きり。もうそれだけで、勝手に身体が熱を帯びてきている。)

 琴乃はすっかりいやらしい身体にされてしまった自分をはずかしく感じて、ほんのり顔を赤らめた。

 そういうことに関しては恐ろしく目ざとい佐野君が、琴乃の微妙な変化を見過ごすはずも無い。

「もう期待しちゃってる?」

「しっ、してません。」

 そう答えたものの、否定すればするほど、そうですと言っているようで、墓穴を掘っているとしか思えない。

(もう、ほんとに調子狂っちゃう…。)

 いつも彼には驚かされてばかりだ。

 しかし、そのほとんどがうれしい驚きではあるのだけれど…。
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