社長の奴隷

星野しずく

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社長の奴隷.43

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「いいから、放っておいてくれ。いや・・・、せっかく来てもらっといてその言いぐさはないな。すまん・・・」

「絶対おかしい!お前がそんな安々と謝るなんて。なにか隠してるだろう、俺に言って楽になれよ」

「い、言えない・・・言えるわけない・・・あんなこと・・・」

「信楽!俺はお前が大事だ!他の奴らとは違う。お前は俺にとって特別なんだ・・・」



 何のスイッチが入ったのか分からないが、美住の様子がおかしい。

 美住はなぜか急に思い詰めた様な表情をしたかと思うと、信楽に向かって突進してきた。



「お、俺は・・・、俺は・・・お前が・・・、お前が好きだ!!」

 美住はそう叫ぶと信楽に抱きついた。



「はああっ??なっ!どさくさに紛れて何言って・・・」

「お・・・、俺じゃ駄目か?」

「い、言ってる意味がわからん。お前も俺も男じゃないか・・・」

 信楽は今までも十分パニックだったのに、更に状況がおかしくなっていくことに恐怖を覚えた。



「だから、そういうことだ。俺は男しか好きにならない」

「ま、マジで・・・?」

 自分の秘密を言う前に、美住の秘密をカムアウトされてしまった。



「だ、だけど・・・、俺、そういうんじゃ・・・」

「そんなの試してみないと分かんないだろ?大体お前、女の子のこと好きになったことないんだから」

「だ、だけど、今まさに女の子と問題起こしちゃって・・・あっ・・・」

 話しがおかしな方へ向かっていくうちに、うっかり口を滑らせてしまった。



「で、どういう問題なんだ。俺が力になるから。お前一人で悩んでたって埒が明かないだろう?少なくとも俺は、お前よりはそういう修羅場くぐって来てるから」

「そ、そうなのか?」

「そうだぞ。男同士の恋愛だって嫉妬や裏切り、抜け駆け・・・、色々あるし、そういうのは男女の恋愛と変わらないよ」

「そうか・・・」



 まさか美住がゲイだったとは、思いもしなかったが、恋愛経験は豊富そうだとは感じていた。

 こうして真剣に自分の性的志向まで打ち明けて、自分のことを好きだと言ってくれている美住だが、それを今すぐ受け入れることは難しい。

 しかし、今信楽が抱えている問題を相談する相手は、目の前の美住しかいないのが現実だ。



 信楽は美住にソファを進めると、ポツリポツリと今日にいたるまでの出来事を語り始めた。

 そして、今日、我慢できずに藤巻さんに襲いかかってしまった事を告白した。



「信楽が、そんな思い切ったことをしてたなんて・・・知らなかったな」

 美住はもっと軽い話だと思っていたようだ。

「もう俺の人生は終わった・・・」

 信楽は頭を抱えた。



「待て待て、お前のバイト先の社長、悪い人じゃないんだろう?それにその社員の女の子も」

「まあ、そうだけど・・・。あんなことして許されるはずない」

 信楽は打ち明けたものの、やはり問題が解決することは期待できないでいた。



「いやあ、だけど、その職場環境でそうならない方がおかしいよ。よく分からんけど、そんなことが日常的に行われてたって分かったら、その会社ヤバいと思うよ」

「え、どういうこと?」

「だから、そういうことがあったとしても、公にはできないってことさ。その会社の方がヤバくなるから」
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