桜のように散りゆく君へ

桜蛇あねり

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 美桜はいつも笑顔の明るい女の子だ。よく笑い、よくしゃべる子で、男女問わず人気がある。名前の通り、美しい桜のような笑顔に、俺はいつもドキドキさせられていた。


 自分の恋心に気づいたのは1年生の夏休み頃だったか。美桜を含め、数人のグループで海に遊びに行ったとき、男の間で誰が可愛いと思うか、の評論会を繰り広げていた。

「大樹は誰が1番いいと思う?やっぱ美桜ちゃん?」

 言い出しっぺの友人が、にやにやしながら俺にそう言ってきた。確かにそうなんだが、こう即答で俺の選択を決めつけるのもどうかと思う。

「まぁ、そうだな。一番最初に仲良くなったってのもあるし」

「お前、ずっと美桜のこと見てるもんな。ぶっちゃけ好きだろ、美桜ちゃんのこと」

「なんでそうなるんだよ。美桜はいい子だとは思ってるが、そんな感情はねぇよ」

 そう言いながらも、俺の中で、別の俺が脳内に問いかける。本当にそうか?と。
 もし、彼女に告白されたらどうするだろうか。答えはもちろん、OKだ。きっと即答すると思う。じゃあもし、別のあの子に告白されたら?それは多分....断るかもしれない。だったら、この感情は、美桜に対するこの感情はなんなのか........。

「いやいや大樹、それはさすがに無理があるぞ?」

 悶々とした俺の中の自問自答を、別の友人がやぶった。

「無理がある?どういう事だよ」

「いやだって、お前美桜ちゃんのこと見すぎだからな?俺たちと話しながら、視界に美桜ちゃん入った瞬間、お前ずっとそっちみてんじゃん」

 その友人の発言に、周りがそーだそーだとはやし立てる。

「は........?マジで?」

「うーわ、こいつ自覚ねぇぞ」

「あぁ、全然自覚、ねぇわ.........」

「ま、つまりはそういうことだ。認めろよ、美桜ちゃんが好きだってさ!」

 そんなやり取りがあって、俺は今一度美桜に対する気持ちを整理してみた。結果、俺は美桜が好きなんだ、とはっきり自覚したのであった。


 それから約半年間、俺は美桜への想いを秘めながらも、彼女へそれとなくアピールしてきた。
 大勢で遊びに行くときや、飲み会では、できる限り美桜の隣をキープしたし、連絡もこまめにとって、お互いの事をもっと知れるようたくさんの話をした。

 そして2年生になる前の3月。俺は美桜に告白した。桜が咲き始めていたのを覚えている。

「うんっ!大樹、私を好きになってくれてありがとう!私も大樹のこと、大好きだよ!これから、恋人として、よろしくね!」

 まだ花びらが散るには早い桜の木の下で、満開の桜のような笑顔で美桜はそう言ってくれた。

 幸せいっぱいの、素敵な笑顔だった。
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