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21 唐突に敵対宣言されてどう対処すべきかはさすがに聖典にも載っておりません。

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仕方なく、部屋へ入る。
部屋の窓は絹か何かの布のカーテンで覆われて少し暗かったが、宝石に光源剤を塗られたランプのおかげで美しく見えた。それ以外も豪奢な家具でいっぱいだった。
正直なところそれを三つほど売って、その伝染病を抑えるための特別医療費にでも当てたらどうですか、というのが本音なのだが。

この部屋は前座のようなものだったらしい。誰も人はいなかった。しかし奥に、小さなドアがあるのをわたしは見つけた。この部屋からさっきの衛兵と話していた人が出てきたのだから、この部屋からしか出てきていないはず。他に隠し通路の類がなければ。
わたしはドアを開く。
やはりそこには、皇帝と思われる男性とその第一夫人から第三夫人だろうと思われる女性三人がいた。さらに、あの王子と船内で王子と話していた王女と思われる人がいた。
「座れ」
見ると、そこには空いている椅子があった。遠慮なく座らせていただこう。
まず、皇帝から口を開く。
「よく来た。この度来てくれたことに、とても感謝している」
皇帝はそれだけ言うと、口を閉じてしまった。
正確には、「来てくれた」ではなく「おとなしく連れてこられた」のほうが近いんですけどね。
もちろん、これも言った時点で死刑確定なので言わない。無限枚の金貨と引き換えにでもこれは絶対言わない。
入れ替わりに、三人の女性のうち一人が話し始める。第一夫人だろう。
「流石。私たちを見ても萎縮しないようで、堂々としている。珍しいですわ。しかし、来てくれたことが奇跡ですわ。このバカ息子は、どうにも人を鑑みないで独断専行で突き進んで、他人の寿命を縮めてしまう部分がありまして。まあ、それはどこかの方も同じなのでこの国の王家全体がそんな事なのでしょうが、、、まあいいでしょう。仲良くしてくださいな。私の離宮にでも今度いらっしゃって。お茶会でもいたしましょう、、、」
そう言って、となりの王を見る。王はすぐに目線を明後日の方に向けてしまう。バカ息子呼ばわりされたヒュセインは、膨れている。よく見ると、結構顔も似ている気がする。
、、、へ~、この王もヒュセイン馬鹿王子と同じような感じなんだ。よし、近づかないでおこう。面倒がやってくるのは嫌だし。あと、トゥヤル王家全体がそうってことは、これは遺伝でも優性遺伝ってとこかな?そんな優性遺伝子いらないけど。

その後の第二夫人、第三夫人の挨拶を受けると、次は王女の番だ。
王子の番は、と思ったが、どうやら王子はなしらしい。もう会っているし、まだ膨れているからだ。まあ、いらないけど。
王女は、とても可愛い顔立ちをしている。が、そこからどうも隠れない意地悪そうな部分が見えないわけではない。
、、、あー、こういう人苦手なタイプ。思い出したくもないけど、マルセリナもこんな感じだった気がするんだよね。あと、普通に貴族としてわたしを嫌っていた、嫌味なルシアナ・モンタルボ・ライネスとか言う人もこうだった気がするんだよね。あーあ。
王女はわたしを見ると、口を尖らせてこういった。
、、、口をとがらせなければ可愛いのに。
「へー、あんたがあたしの姉ってことになるの?最悪ね。ブスだしバカそうだし、後なんだかムカつくし。いいわ。住むことは認めてあげます。でも、ちゃんと働きなさいよ。あと、あたしを敬うのよ。先輩なんだから。いーい?お母様やお父様やお兄様はあんたに騙されたかもしれないけど、あたしは賢いから騙されないからね。ふん。」
全員が開いた口が塞がらない状態になった。それほど驚いたのだ。だから、誰も止められなかった。
えーと、早々に敵対宣言、ってことでいいかな?そのほうがやりやすいけど。
、、、でも、そう言われた時の対応ってどうするんだろう?流石にそんな事、聖典に載っているわけ無いし、、、
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