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とんでもないほど大きい光が現れて、わたしと本を飲み込んだ。
わたしは思わず、目をつぶってしまったーーーー

もう一度目を開けると、今まで見たこともないような庭にいた。名前をわたしが知らないいくつもの花が咲き誇り、美しい音楽が流れる。そんな場所だ。
わたしのいる場所から奥に、強い魔力を感じる。聖女は、人の魔力の大きさを判別することができるのだ。
なんとなく魔力のある場所に呼ばれているような気がする。わたしは無意識なのか意識してなのか分からないけれど、思わずその方向へ向かって歩いていた。

どんどん歩くと、いくつかのことが分かってきた。
1つ目は、強大な魔力が二つ存在していること。
2つ目は、その魔力の色は白と黒に分かれていること。
この先には、何がいるのだろうか。

「ああ、やっとご到着か。待っていたよ、ブリセイダ嬢。」
「遅いぞ。グズグズするな。」
強大な白と黒の魔力の正体であろう、黒目・黒髪ロングの男性と白髮・白色の目の男性二人にそう言われた。
ただし、最初の優しい言葉をかけてくれたほうが黒目・黒髪ロングで、トゲトゲした言葉の方の人は白髪・白色の目だ。イメージと全く違う。
「アルブ、初対面の人にそんな事を言ってはいけませんよ。怖がらせてしまうじゃないですか。」
「ネグル、良い奴ぶるなよ。お前だって本来はヤバいやつだから」
「何を言っているのかな?ズタボロのグチャグチャにしますよ?」
少なくとも、アルブが白髪・白色の目、ネグルが黒髪・黒色の目であることが分かった。
、、、両方とも腹黒い感じしかしないよ、うん。

今にも二人の決闘が始まりそうだ。わたしはそんなの見たくないので、止めることにする。
「で、わたしは何故ここに呼ばれたのでしょう?」
「済まなかったな。まず、それを話すには俺らのことから話す必要があんじゃないのか?ネグル?」
「そうだね。」
「この嬢ちゃんに止められて拗ねるなよ。ったく。まあ良い。俺らは、簡単に言えばこのグランメリアを守ってる精霊。本当はもっと複雑な立ち位置なんだけどな。王族として新しく登録された奴をここに呼んで、俺らがいることを知らせるためにお前を呼んだ。最近は、魔力か何かの問題でここに来ても俺らが見えねえ奴もいるんだけどな。お前は多分、ロレラーナの娘だ。魔力素の配列がほぼ同じだから、そうなはずだろ?」
なんと、先程までいがみ合っていたこの人達は、精霊だったらしい。変に気を損ねてわたしが殺されずに済んでよかった。それに、わたしは王族として登録されてしまったそうだ。
「血筋的に問題はないのですか?」
「問題はないと思いますよ。王族内で魔力が先祖に近く、純度も高かったロレラーナと、一応公爵家ですから、ノヴォメア王族の血を薄くですが引いている貴方の父親の子供なのですから、血筋的にもグランメリアの血が濃いはずです。だから、王族となっても大丈夫でしょう。」
どうも王族と言うと、あのダメ王子ベニートとマルセリナが浮かんでくる。面倒事に巻き込まれそうな予感しかしない。血筋とかの問題ではないはずだ。
「大丈夫だ、嬢ちゃん。こんな丁寧な口聞いてるが、コイツは好戦的で拷問大好きの変態だ。そんな嫌な奴の一人二人など、簡単に処理できるからな。」
怖っ!
「ついでに言えば、このアルブも似たような者ですから。この人の言うことは信用しなくて大丈夫ですよ。」
そう笑顔で言ったネグルの横で、アルブがこう呟いた。
「お前と一緒にされたかねーよ。」
ボソッと。

「ところで、ブリセイダ嬢。王族として登録された貴女なら、いつでも望めばここへ来ることができますよ。何かあれば、すぐに来てくださいね。では、そろそろ帰ったほうがよろしいでしょう。」
「ああ。あと、ここの王にこれを言えば大丈夫なはずだ。『虹薔薇の将』ってな。」
よくわからないけれど、手助けしてくれているらしい。ありがたい。
「ありがとうございました。」
わたしはもう一度、目を閉じた。


✁✂✃✄はさみハサミ鋏ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
精霊とご対面です。腹黒い二人。

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