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一章 それから充実した環境を手に入れるまで

三食目 「空間厨房」

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「ところで、うちらどこ行くん?」
それはわたしも思っている。
「ジア、街知らない?そこに行けばなにかあると思う。」
先程、着ている服のポケットとバッグを探したところわたしが持っているのはお金(銀貨六枚と銅貨七枚)と粘液性の箱に入った何か。それと携帯型のナイフ、タオルが二枚、そして数枚の紙とインクペン。大したものではない。
「街なあ、、、こっからあっちの方向にそう大きくはないけど街があるで。マリネリーエとか言うてたと思うけど。一本道やから迷わんでしょ。」
「じゃあ、そこに向かえばいいかな。肩乗る?」
ぴい。
本当は喋れるくせにジアは鳴いてわたしの肩に乗った。みたいで、わたしは少し笑った。
「どうしたん?」
「ううん、なんでもないよ。そういえば、ジアは文字読める?」
「あったりまえや。任しとき。」
読めるなら、ジアにさっきの獣人が置いていったわたしのスキルを表す紙を見てほしい。
わたしはそれを取り出すと、ジアの目の前に見せた。
「はんはん。あれか。あーーーーー、」
「読めたの?」
「読めた。読めたんけどな、アンタやばくないか?スキル『料理』と『空間厨房』はヤバいて。使えなさすぎるて。」
ああ、だから獣人にもそう言われたわけだ。
「じゃあさ、『空間厨房』って何?」
正直一番気になった。
「ああ、それな。『空間厨房』はな、いわば携帯型の厨房を持ってるんと同じ効果や。それ持ってればどこででも料理ができる。起動すればな。」
うん、それは使えないね。
、、、でも、起動ってどうすればいいんだろう?
今わたしはそのスキルを自分が持っていることを知ったから、全く良く分からない。
すると、不意に小学校の頃の魔法使いごっこが思い出させられた。
黒の画用紙で帽子を作って、折り紙で杖を作る。そして、まるっきり願ってることそのままの呪文を唱えて遊ぶ。
ちなみに、黒歴史の一つである。
あ。
わたしはインクペンを取り出した。
ヤバい。恥ずかしくなってきた。インクペンの持ち手を持って、ペンを振ってこう唱える。
「空間厨房!」
思った通り。ジアにはアホを見る目で見られた。
、、、ちょ!そんな目で見ないで!悲しいから!
けれど、周りに何も変化はない。
それはそうだ、だってそのまま唱えるとかいうアホらしいことをしたんだから。
諦めたその瞬間、異変が起きた。

まず目の前に白一色で統一された四角い箱が現れた。そして、わたしとジアのいる場所と箱たちのある場所を覆うように、壁と天井が現れた。最後に、箱たちがどんどん姿を変え、厨房というより台所が出てきた。
、、、これがスキル?
「、、、、、スキルって言って良いのかわからないくらいじゃない?」
その声はやまびこのように帰ってきた。
「そや。これがスキル『空間厨房』やけど、、、随分見慣れない形の厨房やね。」
ジアは、ここでの厨房について説明してくれる。
普通の厨房は、中心に大きな竈があってその周りにはいくつも水や塩などを置く樽が置いてあり、テーブルの上でまな板さえ使わずに野菜も肉も切るらしい。だから、病気や何やらにかかる人が非常に多いらしい。
わたしは、水道の方へ近づいて蛇口を上に上げる。すると、水は少しずつだけれど出てきた。

今度は、ガスコンロの方へ向かう。ガスのスイッチを押してみると、やはりこちらも青の火が灯った。
どうやら、わたしが使ったことのある調理器具類は一通りここにあるようだ。
棚を開けても、お皿がいくつもある。後材料があれば、どこでも料理ができそうだ。材料があればだけど。
「すごいわぁ。何でこんなんできるんやろな。レストランでも開けばええのに。」
何も言えないジアがやっとフリーズから戻ってきて、そう言った。
が、わたしの料理の上手さはそこまでではない。ただただ料理に凝っていただけだ。
「ジア、もう良いでしょ?街にはなるべく早くつかなきゃ。夜になったら困るよ?」
前世住んでいた場所も、夜になればだいぶ寒かったのだ。ならここが寒くてもおかしくはない。
「せやね。ほな、さっさと向かおうか。」
いや、別にジアが歩くわけじゃないのに。
ジアはもう一度わたしの肩に乗って、ぴいぴいと何度か鳴いた。
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