平穏の神に見放されていますワタクシは、異世界ではスローライフを送りたいのですが許されない様です。

リーゼロッタ

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一章 マルジュシエールの姫君

ⅸ たとえこの生命を換えても

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ドレスも完成した。髪も複雑に結われた。
、、、準備万端。
さて、今日は六王会議の行われるアイントルージェへの出発日である。
わたし、コンプリュンダ、ラルキューミア、王のそれぞれ乗る四台の馬車は、晴れた日、、、ではなくざあざあと降りまくっている雨の中を駆け抜けていた。勿論、馬車にはそれぞれの側近も乗っている。
わたしの側近で今馬車に乗っているのは、リリアーナ、コンチェッタ、ミュリエール、シュゼット、ジェラルディーナ、ヴァレリアーナだけである。他の人は、みんな魔法院に行っているので、いない。
だから、随分側近が少なく見える。

道中は退屈なので、事前に作ったすごろくで遊んだ。
サイコロを作って、盤面も作る。ほとんど自分で作った。側近たちから、何をしているのだろうか?と言う目で見られたのは、まだ記憶に新しい。
結局、側近最年長のリリアーナが一位、次にわたしが二位、運の強いコンチェッタが三位となった。
けれど、コンチェッタは何故か浮かない顔をしていた。けれど、理由を教える気はなさそうだった。

すごろくにだんだん飽きてきたので、わたしは次のゲームを提案した。
陣取りゲームである。
1対1で戦い、サイコロを振って陣を取る。実にシンプルなゲームだったが、楽しかった。
「リリアーナは何故ここまで強いのでしょう?」
今回の陣取りゲームでも優勝したリリアーナは、その後何度かに渡って他の側近からの再挑戦を受けることとなった。特に、一つ差で負けたミュリエールからは何度も。
バスケットに入ったパンを昼食代わりに食べ、その後は持ってきていた本を読んだ。勿論、途中で寝た。

わたしは寝ていたはずだった。
なのに、何故かどこかにいた。
「え、ここどこ?」
周りには、たくさん人もいた。なのに、みんなわたしの声が聞こえないかのように話し続けている。
もう一度、
「すいません。ここはどこですか?」と言った。
けれど、誰も答える人はいなかった。
通行人が、「オクサーナ様がトリーフォン様に王位を譲り、隠居すれば全て問題が解決するのに」や、「リャランペーザの一件が早く落ち着かねば、、、」などと言っていて、多くの人が焦ってピリピリしているように見える。
次の瞬間、わたしは自分が上に上がっていくように感じた。
そして、またどこかの部屋にいた。無論、見たことがない場所だ。
二人の男女がいて、お互いを罵り合っていた。
女性の方は、
「何を言っているのです?自力で統治の魔封具すら動かせず、世の贈り物すら読めなかった貴方には王の資格などありません。これは、歴代の王の書き残した書物にも記されていましたわ!」
と言っていて、男性の方は
「何を言っている!父上は後継ぎに俺を指名した!魔封具も書物も関係ない。父上は俺を後継ぎにすると言っていた!だから、俺が王だ!」
と言っている。というより、喚いている。
喧嘩だと言って良いのだろうか。
すると、それをたしなめるかのような一言が女性の口からこぼれた。
「光の属性が使えないのに何を言っているのです?」
そう、ここでは魔力の七属性が一定の量を超えないと貴族であると言えない。
おそらく、この男性は光の属性が一定の量より下だったのだろう。
だから、王になれない。
、、、さっさと諦めればいいのに。

と思っていたら、いきなり男性が「ティフォンティクス」と唱えた。
すると、いきなり竜巻が現れた。
それを見た女性は「フラムーペ・フレンティース」と唱え、手に赤の大きな魔封石のついた剣を取り出した。その剣には、炎が灯っている。
男性はそれをあざ笑うかのように何かをつぶやき、するといくつか竜巻ができた。
「俺と勝負する気か。だがお前も聖女様だとしても気が付かなかったのは浅はかだったな。、、、コンフィニージェ。終わりだな。死にたくなければ負けを認めろ。」
男性が「コンフィニージェ」と言った途端、いくつかの何かが飛んでいった。
その何かは、女性の足に当たって泥に変化した。
女性は剣を床に挿し、「バーレフリューム・フォルトフィエーヴ」と唱えた。
すると、一瞬。わたしは女性の足元に火が走ったように見えた。思わず見間違いかと思うほど、かすかに。
けれど、男性は気づいていない。竜巻は暴れ、部屋にあった机や棚等を吹き飛ばしていく。
「ふん。何も殺しはしないからな、姉上。ただお前の光属性を奪っておくだけだ。そして、俺が王になる。女に王など任せられぬからな。」
、、、それは違うでしょ。
女性もそう思ったのだろうか、「レヴァジュート」と唱えて剣を一振りした。
辺り一面に炎が飛んだ。
わたしの方にも火の粉が飛んできたが、なんとそれはわたしを通り抜けて後ろの壁に当たった。壁にかかっていた絵が燃えた。
気がつけば、女性の方は自由に動いていた。
、、、なんかアクション映画を見てるみたい。すごいね。
「ああ、ああ、、、俺は、、、王になる、、、俺は一番ふさわ、、、しいの、、、だ、、、」
男性がボロボロになっている。
女性の勝利で終わった。

しかし、その女性は男性に近づいて、倒れているその人に跪いた。
「ごめんなさいね、、、トリーフォン。けれど、こうするしか無い。貴方がいると騒乱の種になる。殺さなければ、世界は、、、」
「うるさい!ヴィアントディース。」
すると、女性は胸を押さえてうずくまった。
「本当にお前聖女か?無能にもほどがあるぞ。」
どうやら、演技だったらしい。卑屈な手だ。
しかし、この場面は女性がぶった切った。
「わたしは、、、もうそこまで魔力は持っていない、、、、他の魔力はあの、、、あれの中に入っているわ。貴方が飲んで、、、王に、、、なればいいじゃない。」
そして、ピクリとも動かなくなった。死んでしまったのだろうか。
一方、トリーフォンは姉の言葉を全く疑わず女性が指した小さなバッグにめがけて走っていった。そして、炎上した。
、、、罠、か。さっきの剣で作ったのかな?
男性の叫び声が聞こえてきた。わたしは更に意識が浮上して、どこかへ持ち上げられる感覚を覚えた。
わたしが目をつぶった瞬間、声が聞こえた。あの女性のものだった。
「トリーフォン、、、たとえ貴方が王になるのなら、わたしはこの生命を換えても阻止するわ。ごめんなさい、、、」
そして、何も聞こえなくなった。
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