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一章 マルジュシエールの姫君

ⅱ わたしの側近とお姉様方

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いい加減にベッドから出ないと、怒られるだろうな。
未だ、ファスモーデュの記憶は無い。
さっきの、起き抜けから人を怒鳴っていたのは、確かリリアーナ。
「ヴァルキューレ・プリンセザ番外編 青の光」にはファスモーデュ視点の話もあって、
そこで出てきていた。側近の知識もそれなりにあるし。
「おはようございます、ファスモーデュ様。」
緑の髪に、茶色っぽい目。
ルドヴィーカ、、、じゃなくてジェラルディーナだった気がする。
忘れたけど。
いや、多分ジェラルディーナだった気がする。
「今日はルッジェロがお休みでしたよね?ルドヴィーカはもうすぐ来るみたいですが。」
あ、ジェラルディーナだ。
なんだか、自分が「ヴァルキューレ・プリンセザ」をやっていた記憶があまりない。
いくらかの記憶に雲か何かがかかっているようだ。

「お早う御座います、ファスモーデュ様。」
ルドヴィーカは、ファスモーデュの騎士。
すごく可愛いけれど、キリッとしていて体術に優れまくっている、ギャップのすごい人だ。
とか考えてたら、全員揃っていたらしい。
「ファスモーデュ様、全員揃いましたか?」
出欠か何か取るのだろうか。けどわからない。
よし、丸投げだ!
「リリアーナ、いつもどうりお願いね。」
「拝命いたしました。アメリータ、コンチェッタ。」
「はい。」
「シュゼット、ジェラルディーナ、ルドヴィーカ。」
「はい。」
「ヴァレリアーナ、フェリーチャ、エレオノール。」
「はい。」
「全員揃っています、ファスモーデュ様。」
「では、行きましょう。」

マルジュシエールの城には、子供の離宮がある。
そして、本館に近い方ほど身分が高い、即ち第一夫人の子供となる。
わたしは、本館から遠いサンチュルーヌ宮なので、だいぶ身分が低いとされているらしい。
まあ、これを決めるのは第一夫人だから、この人の勝手な思い込みで色々変わってくるのだけれど。
離宮にはメルキュール宮、ヴェニュス宮、テール宮、マルス宮、ジュビール宮、そしてわたしのいるサンチュルーヌ宮がある。
ちなみに、名前はわたしならファスモーデュ・サンチュルーヌ・カーザ・フィーユ・マルジュシエール。
カルムイェリスは、カルムイェリス・メルキュール・カーザ・フィーユ・マルジュシエールと、それぞれ名前には自分の離宮名がつけられる。
道理で長いわけだ。

そんな事を思い出しながらリリアーナの行く方へ一緒についていく。平穏で庭もきれいでいいな、と思っていたらそれをかき消す疫病神がいた。
「あーら、ファスモーデュじゃないの。怖くて侍女の後ろ?一国の王女の名誉も地に落ちたものね。アハハハ、、、」
カルムイェリスは、金髪に水色の目。正直ありふれまくっている。更に悪いことに、自分は世界で一番可愛いとしか思っていない。そして、更に悪いことに取り巻き兼側近がそれを肯定しているのである。そして、ゴマすりをする。
「あら、挨拶もできないのかしら?教師を辞めさせたほうが良さそうですね、、、礼儀がなっていないこと。」
いや、本来わたしの教師は貴女の介入できる部分じゃないんだけど。
「おはようございます、カルムイェリス様。」
「様って何、それ。」
「へ?」
挨拶したんだから良いじゃん。それより他に求めることなんてあるの?
「わたし、これでも貴女の姉を務めているのに、、、わたしは姉としてどこか不足なの?」
ああ、要するにお姉様呼びさせたいってことですか。
まあ、初対面の人間にお姉様と呼べって言われるってことだよ。ありえないありえない。
カルムイェリスの後ろにいる側近、、、即ち取り巻きは、
「カルムイェリス様はファスモーデュ様のことを大切な家族として認識されていますよ?」
「異母妹にも優しくできるカルムイェリス様を見習った方が良いと存じますが、、、だからファスモーデュ様は王太女になれないのですわ。」
「カルムイェリス様ほど優秀な王族、そして姉などなかなか得られませんよ?こういった方は大切にしなければいけないとわたくし分かりましたわ。」
ゲーム内では、ファスモーデュを身分が低いと言って見下しまくってたのにね。それに、側近の言ってることも主の妹に対する不敬だよ?処刑されかけるよ?
ただ、ここが「青の光」の世界観そのままだったとすると、訴えてもラルキューミアに揉み消されるのだろう。
そう考えても、全くの無駄だろう。


けれど、何もしないままでは嫌なので少しだけ言ってやろう。
「まあ。お姉様は「優しい人」という言葉の意味を辞書で調べ直したほうが良いですよ?それに、お姉様が優秀でも他の方が優秀でなければ女王としてのとやかく言われる点が増えてしまいますから、気をつけたほうが良いと思います。」
本当は、さっさと王位継承権とかそういう面倒くさいものからは抜け出したい。
カルムイェリスは歯ぎしりしながら、忌々しそうに食堂へ向かっていった。
祝!カルムイェリス撃退!
、、、ちょっと思ったんだけど、歯ぎしりするのってありなの?


本館の六階では、密かな戦いが行われる。
主に、カルムイェリスとわたしの間で。
そして、止めるのはフィルクガローレ。
フィルクガローレは、前王の孫娘で一番身分も高いことになっている。離宮もヴェニュス宮で一番格上のものが使う場所を当てられている。
カルムイェリスとは二つ歳上なので、彼女が止めればカルムイェリスはどんな場合でも止めなければいけない。
、、、まいど、ありがとうございます。
残念なことに、王は止めない。
ラルキューミアは正妻で、しかも彼女のほうが歳上なのだ。要は、半分かかあ天下状態。
流石にフィルクガローレでも、カルムイェリスは止められてもラルキューミアは止められないらしい。
そんな事を考えながら、本館の六階目指して歩いていく。
途中、誰かとすれ違うと跪かれる。わたしはぎょっとするけど、ここで驚いたらお嬢様失格だ。
「あら、ファスモーデュじゃない。おはよう。」
はい、フィルクガローレ様ご登場。
白っぽい髪に赤の目の目で記憶見てたらぎょっとしたけど、「ヴァルキューレ・プリンセザ」なら全然いるんだよね。主人公もそうだし。
「おはようございます、フィルクガローレ、、、お姉様。」
「ふふっ、、、」
これまでのファスモーデュは、フィルクガローレのことはお姉様呼びだったらしい。わたしがついさっきまで全く見たこともなかった人にそう言うなんて、違和感を感じるけど。
「わたくしは先に行っておりますね。」
行ってしまった。
ぼーっとしながら階段を上がって、六階の食堂へ向かう。
大きなドアだ。
前にいた守衛さん二人に声をかけてドアを開けてもらい、わたしは定位置につく。
超大きいテーブルの真ん中にいるのが王。これは当然。
そして、右がラルキューミア。これも正室なので当然、、、とされてるけど。
左にいるのが、コンプリュンダ。
この人は、第二夫人で、ラルキューミアが嫁いできた時の元騎士だった。
そしてラルキューミアにゴリ押しされまくり、結局第二夫人となった。
ラルキューミアの第三夫人、、、即ちこの世界でのわたしのお母さんのヴィアリットいびりに加担している。
コンプリュンダと王の間には、プランヴィアという王子が一人いるけれど、病弱。はっきり言って、今ぶっ倒れてもおかしくない。だから、王にはなれないとされている。
そして、今の所王子は他にいない。
だから、カルムイェリスかフィルクガローレかわたしが次期王になるらしい。
一応王はフィルクガローレを次期王にしたいそうだが、ラルキューミアとコンプリュンダはカルムイェリスを次期王にしようとしている。ゴリ押しで。


ちなみに、わたしは王位争いからは抜けている。
何より第三夫人の娘だし。


テーブルのあっち側は親世代。こっち側は子世代。
フィルクガローレが真ん中で、右がカルムイェリス。左は空席。一つ空いて、わたし。
わたしからしたら右にプランヴィアがいるけれど、今日も熱を出したようだ。
わたしの後ろにシュゼットとルドヴィーカが付き、給仕をしてくれるのはリリアーナ。文官の三人は今日の定時報告を受けてから朝食だ。他の侍女は他にもやらなければいけないこともあって、どこかへ行った。



キリトリキリトリ✁ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ごめんなさい、ここだけマジで長いです。すいません。。。。
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