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第八章 最終決戦編
最終話 二つの世界
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不意を突くように飛び込み、首筋へと迫る一閃。ビームを止めることで手一杯の拳凰に、それを防ぐ手段は無い。
否、それはあった。攻撃に気付いた拳凰はオーデンをギリギリまで引きつけると、ビームを受け止めていた両手のうち右腕だけをオーデンの方に伸ばした。
折れた大剣を掴むオーデンの手首を握ってこちらに引き寄せると、そのままビームを防ぐ盾にしたのである。
「丁度いい所に来てくれた!」
「何ぃ!? ぐおおおおおお!!」
自ら放った破壊の衝動を全身に浴びて、オーデンは苦悶の叫びを上げる。流石妖精王だけあってその耐久力は凄まじく、国一つ焦土に変える死の光を受けてもなお原形を留めていた。
「貴様この我を盾にするなど……」
「っせーよ。てめーにゃこれがお似合いだ!!」
ビームで細胞が崩壊していき体を動かすこともままならないオーデンの顔面にパンチを入れ、砲口へと押し込む。もう一発、更にもう一発鉄拳をぶちかまし、オーデンの頑丈な肉体そのものを武器として次元破壊砲を粉砕した。
砲そのそのが破壊されたことでビームも撃ち止み、絶え間なく響いていた甲高い音が止まる。崩れ落ちた次元破壊砲の瓦礫の中に、白目を剥いたオーデンが横たわっていた。
「勝った……みてーだな……」
オーデンが気を失っていることを確認すると、拳凰の視界がぼやける。安心して力が抜けてふらっと倒れかけると、慌てて花梨がそちらに走った。魔法で生成した包帯で拳凰を支えると共に、そのままそれを身体に巻き付けて傷の治療を始める。
「もう、ケン兄ってば本当無茶ばっかりするんだから」
「はは……わりーな」
いつものように不安がる花梨に、拳凰は笑顔で応えた。
戦いは終わった。オーデンとガリの野望は打ち砕かれ、魔石に封印された魔法少女と妖精騎士団、ハンター達は解放された。
最終予選以降に敗退した魔法少女達は結局人間界に送還されることがなかったため、全員が王立競技場に集められていた。
壇上に立ったビフテキが今回の件についての説明をした上で、今後魔法少女の能力は無くなるものの今回の詫びとして彼女達の妖精界に関する記憶を消さないこと、そして今後彼女達に妖精界への出入りを自由にすることを約束した。
一方その頃、拳凰と幸次郎、デスサイズの三人は。
「よーし、行くぞ幸次郎!」
王宮外の広場で、間を開けて向き合う拳凰と幸次郎。その二人を、デスサイズが腕を組んで見守っていた。
究極形態で白のオーラをその身から放つ幸次郎に、拳凰は合図を出す。
直後に踏み込み一瞬で間合いを詰めた拳凰は、全身絶対防御と化した幸次郎に必殺のストレートをかました。吹っ飛んで城壁に叩き付けられる幸次郎。拳凰はこれに満足げ。
「魔力は無くなっても、鍛えた肉体は変わらない……か」
次元破壊砲のビームを全身に浴びた影響で、拳凰の神の力は全ての魔力と共に失われた。今の拳凰はほぼただの人間。しかしその肉体は変わらず強いままであり、幸次郎の絶対防御すら容易く打ち砕いた。
「はは……流石ですね最強寺さん」
腕試しに使われた幸次郎は、城壁に背中を埋められながら苦笑いした。
次元破壊砲により神の力を失ったのは、勿論もう一人ビームの直撃を受けたオーデンもそうであった。
今の彼は最早王でも神でもなく、一人の罪人として静かに牢獄で沈黙していた。
そしてもう一人、それ以上の報いを受けた男――何百年にも渡ってこの国を蝕んできた巨悪、大賢者ガリ。
彼にとどめを刺したのは、その身を利用され続けてきた騎士カクテルであった。意識を取り戻したことで、密かに次元破壊砲の術式を書き換え、封印を解かれた者達が皆本来の肉体に戻るようにしたのである。それによってガリの精神は、墓の下の遺骨へと送られた。
動くことも魔法を使うこともできず、物言わぬ骨として永遠を生き続ける。それがこの邪悪の化身の受けた罰であった。
拳凰達がひと汗かいて休んでいると、魔法少女バトルの閉会式を終えた花梨達がこちらにやってきた。
花梨、梓、智恵理、恋々愛、ホーレンソー、カニミソ、ムニエル。黄道十二宮を共に戦い抜いた仲間達である。
「ケン兄ー」
「おう花梨」
駆け寄ってきた花梨の頭を撫でた拳凰は、周囲の視線に気付いて頬を染めそっぽを向く。
「まさかあの最低寺がこんなに彼女に甘くなるとはねー」
そう言う智恵理は、ちらっと隣のカニミソを見る。
「え? 何カニ?」
すっとぼけるカニミソの脛に、智恵理は軽く蹴りを入れた。
一方、絶対防御である程度和らげたとはいえ拳凰に吹っ飛ばされたダメージが残りぐったりしている幸次郎には、恋々愛が心配そうに寄ってきた。
「幸次郎」
「ああ、恋々愛さん。僕は大丈夫。心配しないで」
幸次郎が答えると、恋々愛は安心して幸次郎に抱きついた。ふよんと柔らかい感触をその身に受けて、幸次郎はどぎまぎ。
「いやぁ、どこもかしこもイチャイチャと。どうだね三日月君、我々も……」
「まっぴらごめんよ」
きっぱり断られたホーレンソーは、しょんぼりとオーバーな動作で俯く。
「まあ、貴方のような情けない男は私みたいなのがいないとどこまでも駄目になるのだろうけど……」
が、その直後に好感触な呟きが聞こえたので、ホーレンソーの表情はぱっと明るくなった。
「ところで其方達よ」
と、そこでムニエルが言う。
「父上の起こした今回の件を受けて、妖精界は近々人間界にその存在を公表することとなった。もしも可能であるならば、其方らには両世界の架け橋となってもらいたい」
「勿論構わないぜ。ここは親父の生まれ故郷だ。何も異論は無え」
人間と妖精の間に生まれた者達、人間と妖精とで恋や友情を築いた者達。皆は揃って頷いた。
「さーて、そんじゃ帰る準備すっか。俺らが付き合い出したこと、亜希子叔母さんにも報告しないとな」
拳凰がそう言って花梨を抱き寄せると、花梨は拳凰を見上げ笑顔で頷いた。
否、それはあった。攻撃に気付いた拳凰はオーデンをギリギリまで引きつけると、ビームを受け止めていた両手のうち右腕だけをオーデンの方に伸ばした。
折れた大剣を掴むオーデンの手首を握ってこちらに引き寄せると、そのままビームを防ぐ盾にしたのである。
「丁度いい所に来てくれた!」
「何ぃ!? ぐおおおおおお!!」
自ら放った破壊の衝動を全身に浴びて、オーデンは苦悶の叫びを上げる。流石妖精王だけあってその耐久力は凄まじく、国一つ焦土に変える死の光を受けてもなお原形を留めていた。
「貴様この我を盾にするなど……」
「っせーよ。てめーにゃこれがお似合いだ!!」
ビームで細胞が崩壊していき体を動かすこともままならないオーデンの顔面にパンチを入れ、砲口へと押し込む。もう一発、更にもう一発鉄拳をぶちかまし、オーデンの頑丈な肉体そのものを武器として次元破壊砲を粉砕した。
砲そのそのが破壊されたことでビームも撃ち止み、絶え間なく響いていた甲高い音が止まる。崩れ落ちた次元破壊砲の瓦礫の中に、白目を剥いたオーデンが横たわっていた。
「勝った……みてーだな……」
オーデンが気を失っていることを確認すると、拳凰の視界がぼやける。安心して力が抜けてふらっと倒れかけると、慌てて花梨がそちらに走った。魔法で生成した包帯で拳凰を支えると共に、そのままそれを身体に巻き付けて傷の治療を始める。
「もう、ケン兄ってば本当無茶ばっかりするんだから」
「はは……わりーな」
いつものように不安がる花梨に、拳凰は笑顔で応えた。
戦いは終わった。オーデンとガリの野望は打ち砕かれ、魔石に封印された魔法少女と妖精騎士団、ハンター達は解放された。
最終予選以降に敗退した魔法少女達は結局人間界に送還されることがなかったため、全員が王立競技場に集められていた。
壇上に立ったビフテキが今回の件についての説明をした上で、今後魔法少女の能力は無くなるものの今回の詫びとして彼女達の妖精界に関する記憶を消さないこと、そして今後彼女達に妖精界への出入りを自由にすることを約束した。
一方その頃、拳凰と幸次郎、デスサイズの三人は。
「よーし、行くぞ幸次郎!」
王宮外の広場で、間を開けて向き合う拳凰と幸次郎。その二人を、デスサイズが腕を組んで見守っていた。
究極形態で白のオーラをその身から放つ幸次郎に、拳凰は合図を出す。
直後に踏み込み一瞬で間合いを詰めた拳凰は、全身絶対防御と化した幸次郎に必殺のストレートをかました。吹っ飛んで城壁に叩き付けられる幸次郎。拳凰はこれに満足げ。
「魔力は無くなっても、鍛えた肉体は変わらない……か」
次元破壊砲のビームを全身に浴びた影響で、拳凰の神の力は全ての魔力と共に失われた。今の拳凰はほぼただの人間。しかしその肉体は変わらず強いままであり、幸次郎の絶対防御すら容易く打ち砕いた。
「はは……流石ですね最強寺さん」
腕試しに使われた幸次郎は、城壁に背中を埋められながら苦笑いした。
次元破壊砲により神の力を失ったのは、勿論もう一人ビームの直撃を受けたオーデンもそうであった。
今の彼は最早王でも神でもなく、一人の罪人として静かに牢獄で沈黙していた。
そしてもう一人、それ以上の報いを受けた男――何百年にも渡ってこの国を蝕んできた巨悪、大賢者ガリ。
彼にとどめを刺したのは、その身を利用され続けてきた騎士カクテルであった。意識を取り戻したことで、密かに次元破壊砲の術式を書き換え、封印を解かれた者達が皆本来の肉体に戻るようにしたのである。それによってガリの精神は、墓の下の遺骨へと送られた。
動くことも魔法を使うこともできず、物言わぬ骨として永遠を生き続ける。それがこの邪悪の化身の受けた罰であった。
拳凰達がひと汗かいて休んでいると、魔法少女バトルの閉会式を終えた花梨達がこちらにやってきた。
花梨、梓、智恵理、恋々愛、ホーレンソー、カニミソ、ムニエル。黄道十二宮を共に戦い抜いた仲間達である。
「ケン兄ー」
「おう花梨」
駆け寄ってきた花梨の頭を撫でた拳凰は、周囲の視線に気付いて頬を染めそっぽを向く。
「まさかあの最低寺がこんなに彼女に甘くなるとはねー」
そう言う智恵理は、ちらっと隣のカニミソを見る。
「え? 何カニ?」
すっとぼけるカニミソの脛に、智恵理は軽く蹴りを入れた。
一方、絶対防御である程度和らげたとはいえ拳凰に吹っ飛ばされたダメージが残りぐったりしている幸次郎には、恋々愛が心配そうに寄ってきた。
「幸次郎」
「ああ、恋々愛さん。僕は大丈夫。心配しないで」
幸次郎が答えると、恋々愛は安心して幸次郎に抱きついた。ふよんと柔らかい感触をその身に受けて、幸次郎はどぎまぎ。
「いやぁ、どこもかしこもイチャイチャと。どうだね三日月君、我々も……」
「まっぴらごめんよ」
きっぱり断られたホーレンソーは、しょんぼりとオーバーな動作で俯く。
「まあ、貴方のような情けない男は私みたいなのがいないとどこまでも駄目になるのだろうけど……」
が、その直後に好感触な呟きが聞こえたので、ホーレンソーの表情はぱっと明るくなった。
「ところで其方達よ」
と、そこでムニエルが言う。
「父上の起こした今回の件を受けて、妖精界は近々人間界にその存在を公表することとなった。もしも可能であるならば、其方らには両世界の架け橋となってもらいたい」
「勿論構わないぜ。ここは親父の生まれ故郷だ。何も異論は無え」
人間と妖精の間に生まれた者達、人間と妖精とで恋や友情を築いた者達。皆は揃って頷いた。
「さーて、そんじゃ帰る準備すっか。俺らが付き合い出したこと、亜希子叔母さんにも報告しないとな」
拳凰がそう言って花梨を抱き寄せると、花梨は拳凰を見上げ笑顔で頷いた。
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