ヤンキーVS魔法少女

平良野アロウ

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第三章 自由行動編

第65話 お風呂でガールズトーク

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 午後六時。魔法少女達は個室から一つ上の階の四人部屋に移ることとなった。勿論部屋割りは先程結成したチーム毎である。
 親睦を深めるため四人で街に出ていたチーム・ヴァンパイアロードは、ホテルに戻った後、それぞれの荷物を新しい部屋へと移した。
「やったね梓、これからは一緒の部屋だよ!」
「賑やかになりそうね」
「麗子ちゃんと一緒の部屋……ドキドキします」
「これからよろしくねーみんな」
 四人はそれぞれ自分のベッドを決めると、先程街で買った物を机の上に出した。
 朝香は麗羅のフィギュアを二つ買っており、それぞれ四年前バージョンと現在バージョンである。二つ並べて、うっとりと悦に浸っていた。
「こうして見ると、ほんとに麗羅って前回の大会にも出てたんだねー」
 智恵理がそれを見に来た。
「今、胸は育ってないって思ったでしょ」
「え、お、思ってないよ」
 ちょっとだけ思ったことを麗羅に指摘され、智恵理は動揺。
 実際、四年前から身長と髪は伸びているものの胸の大きさは殆ど変わっていないように見える。
「スレンダーなところも麗子ちゃんは魅力的なんです!」
 朝香は珍しく強気になって主張。麗羅は苦笑いしていた。
「ねえねえ、大きいお風呂あるよ! みんなで一緒に入れそう! ねえ梓」
 テンションの上がる智恵理が、梓に話を振る。だが、梓は一人スマートフォンを見ていた。
「どうしたの、梓」
「あ、実はちょっと担当から呼び出されてて。ごめん、多分すぐに戻るわ」
 魔法少女バトルアプリに届いたメッセージは、ホーレンソーから梓個人に宛てたものであった。
 メッセージに書かれた待ち合わせ場所は、一つ下の階にある元の梓の部屋である。

「やあ三日月君、よく来たね」
 ホーレンソーは一人で椅子に腰掛け、いつもの決め顔でいた。
「それで、何か用かしら? こっちは明日の試合についてチームメイトと色々と話し合いたかったのだけれど」
「それはすまないことをした。だが、まさか君が雨戸朝香をチームに招き入れるとは思わなかったのでね」
「その方が彼女を監視しやすいでしょう。それに、できることなら彼女を救ってあげたいと思ってるの」
「うむ、幼い少女をあのような危険な目に遭わせるとは、いつの時代もマッドサイエンティストという連中はいかれている」
「ええ、本当にね……」
 ホーレンソーは決め顔を崩さないものの、その表情の奥に憎悪の心が燃えていることを梓は察した。
「皆にはすぐ戻ると伝えてあるから、そろそろ戻らないと」
「うむ、そうか。ならば早く戻るといい。また明日、試合会場で会おう」


 四人部屋で団欒の時を過ごしていると、自然と時間の流れも早くなる。外はいつの間にか暗くなっていた。
「あっ、もうこんな時間。そろそろお風呂にしない?」
 明日の試合について話し合うつもりが、すっかり無駄話が長くなってしまった。
 せっかくなので一緒に入ろうということで、四人は揃って浴室へと移動した。
 大きなお風呂で、四人は手足を伸ばす。何かと考え事が多くて疲れの溜まっている梓も、ようやくリラックスできる時が来た。
「はー……なんだか疲れも吹き飛ぶわね。どう、朝香ちゃん」
「はい、大きなお風呂は初めてですけど、とっても気持ちいいです」
 初めは少し恥ずかしそうにしていた朝香だったが、麗羅が堂々としているのを見て自分も気にしなくなった。
「朝香ちゃんって小学五年生だっけ。林間学校とかでみんなと一緒にお風呂入ったことないの?」
 智恵理が尋ねると、朝香は俯く。
「私……学校行ってなくて……」
「えっ、あ、その、ごめん」
 気まずい空気になってしまい、智恵理は謝る。
 朝香から目を逸らすと、麗羅の姿が目に入った。
「なんかさ、アイドルの裸見ちゃうのって、背徳感なくない?」
 無理矢理に話題を切り替えようと、そんな話をする。梓は呆れて溜息。
「智恵理あなたねえ……」
「なんかごめんねー、おみぐるしい裸で」
 麗羅は照れくさそうに、さりげなく手で胸を隠した。
「そんなことないです! 麗子ちゃんは裸でも素敵です!」
「そうね、肌も凄く綺麗だし」
「事務所がエステティシャンさん付けてくれてるからねー。でもこっちにいる間は自分でやらないと」
「へー、どんなんやってるの? 芸能人のスキンケアとかあたしも知りたい!」
 やはりアイドルというのは、存在しているだけで何かと注目を浴びるもの。自然と三人が麗羅を囲う形となっていた。

 梓達がお風呂でガールズトークに花を咲かせている頃、花梨達チーム・ショート同盟もまた、四人で入浴していた。
「いや~、まさか蓮華ちゃんがこんな隠れ巨乳だったとは。このおっぱいで尼さんが務まるのか~? うりうり~」
 実は大層良いものを持っていた蓮華。夏樹はその胸を人差指で突っつく。
「な、夏樹さんっ」
 蓮華が恥ずかしがるのを面白がって、夏樹はより突っついた。
 花梨は、蓮華の胸を羨ましそうに見ている。自分と同い年の夏樹も一歳下の小梅も、自分よりは胸がある。こうして他の娘達と一緒に裸になると、自分の幼児体型が尚更際立つというものだ。
「なーなー、あたしの担当のザルソバって奴、薀蓄とか話すの好きな奴なんだけどさ。あたしそいつから面白い話聞いたんだよなー」
 脚を広げて湯に浸かりながら、小梅が言う。
「魔法少女って変身すると髪の毛の色変わるじゃん。実はその時にお股の毛の色も変わってるらしいよー」
 そう言われた途端に、三人は揃って顔を下向ける。今は変身していないにも関わらずである。三人とも、思わずとってしまった行動に顔を赤らめた。
「でも変身した状態だとそこまで服脱げないようになってるから、確認することはできないみたいなんだけどね」
「何その無駄な拘り……」
「髪の毛の色を変えるシステムで勝手に変わっちゃうらしいよ。他の毛も一緒に」
「そういえば確かに眉毛の色も変わってますよね」
「ていうか何でわざわざアソコの毛を指定して……完全にセクハラじゃん」
「あの人薀蓄語りだすと周り見えなくなるし、多分目には見えない場所も変わってるって説明したかっただけだと思うよ」
「騎士団って意外と変な人多いよね。ボクの担当はミルフィーユさんっていう綺麗なお姉さんだからよかったけどさ。わけのわからない言葉しか喋らない人とか、スプラッタ映画を執拗に勧めてくる人とか、対戦相手の魔法少女から聞いたことあるんだよね。そういうのが担当じゃなくてよかったよ」
「私の担当はムニちゃんっていう同い年の女の子だったよ。その子が妖精界に戻ってる間はハンバーグさんっていう怖いお兄さんだったけど……」
「その方は私の担当ですね。正直に言うと、私も少し苦手なんです」
「一応言っとくけどザルソバさんはいい人だよ。話が長いのはちょっとアレだけどさ」

 花梨達が担当騎士の話題で盛り上がる中、恋々愛達もまた、四人で入浴していた。
「へぇー、恋々愛ちゃんってこっちも銀髪なんだー」
 ミチルが恋々愛に絡みつくように体を寄せながら言う。
「わたくしも金色に染めてますのよ!」
 目立ちたがりの珠子が、声を大きくして主張する。
「そこの毛染めてるとかちょっと引くわー」
「見えないところのお洒落にも気を遣ってるんですのよ!」
 整えてる、全部剃ってる、金色に染めてる、地毛で銀色と、変な所バリエーション豊かなチームである。
「それにしても、恋々愛ちゃんが小学生だったとはねー。温泉で会った時は、てっきり年上かせいぜい同い年だと思ってたよ」
 恋々愛と会う人会う人が、年齢を知ると皆口を揃えて同じことを言う。
「小学生でこの胸……わたくし自慢のEカップが負けるだなんて……悔しいですわ!」
 珠子は自分から誘っておいて、恋々愛に勝手にライバル心を抱いていた。
「ところで、恋々愛ちゃんってどこの国の人とのハーフなの? アフリカ系? それとも南米とか?」
「わかんない……」
「あー、もしかして結構複雑な家庭の事情が……」
「うん……」
「あ、恋々愛ちゃんのむっちりグラマー体型もいいけどー、やっぱり女として憧れるのはすらっとした雫ちゃんよね。私もどっちかっていうとプニプニ系だし」
 恋々愛が悲しそうな顔をしたのを見て、ミチルは話題を変える。
 スレンダーながら出る所は出てる雫は、スタイルの良さという点では四人の中でトップ。むっちり系の恋々愛とミチルやロリ巨乳系の珠子とはまた違ったタイプである。
「まあ、人に見られて恥ずかしくない身体は意識してるからねー」

 一方、チーム・格闘少女。
 香澄とレベッカは先に二人で入浴しており、寿々菜も準備しているところだった。
「玲さんも、ご一緒にどうですか?」
 一人窓の外を眺める玲を、寿々菜は入浴に誘う。
「いや、俺は遠慮しておく」
 玲は振り向かず言う。
「後で一人で入るから、先に入っててくれ」
「そうですか。ではお先に入らせて頂きます」
 寿々菜は一礼した後、浴室へと向かった。玲はまだ、夜空の星を見続けている。


 風呂上りのショート同盟は、ベッドの上でもガールズトークを続けていた。
「夏樹ちゃんと小梅ちゃん、服着ないの?」
「ボクは夏は寝る時下着派なんだよねー」
「あたしもー」
 夏樹の下着は青地に白の水玉のブラとガールズブリーフ。小梅はパステルオレンジのスポーツブラとスポーツショーツである。
「夏樹ちゃんのパンツ、ガールズブリーフなんだね」
「フフッ、ボクのボーイッシュな魅力をより引き立てる下着でしょ?」
 夏樹は軽くポーズをとってウインクしてみせる。
「男子みたいでカッコいいなそれ。あたしも買おっかな」
 下着の話題で盛り上がる中、ふと夏樹は花梨の方を見る。
「ねーねーところでさ、花梨ちゃんとハンターの最強寺さんって、どういう関係なの?」
 最終予選での一幕を見ていた者の一人である夏樹が、ワクワクした表情で尋ねた。
「え、えっとね、ケン兄は私の従兄弟で……」
 花梨はもじもじしながら、拳凰との関係を話した。
「うわーいいなぁ、好きな人と一緒に住んでるなんてロマンチックー」
「えへへ……でも私ケン兄から全然女の子として見られてないんだよね。妹どころか弟呼ばわりされちゃうくらいで」
「ええーそうかなー? あんなに熱く抱き合ってたのに」
「あ、あれはケン兄が大ケガしてたから……!」
「まるでドラマのようで、とっても素敵でした」
 蓮華が幸せそうな表情で話に乗ってくる。
「えー、二人ともそんな面白そうなの見てたのー? あたしだけ仲間外れかよー」
「そういうみんなはどうなの!? 好きな人くらいいるでしょ!?」
 恥ずかしくなってきた花梨は、皆に恋愛話を振る。
「実は私も、年上の方が好きなんです。うちのお寺で働いている僧侶の方で、とても真面目で優しい方なんです」
「へぇー、じゃあ将来はその人と一緒にお寺を継ぐんだ」
「そ、そうなったらいいなとは思ってます……」
 花梨と夏樹はキャーキャーと黄色い声を上げる。
「小梅ちゃんはどうなの?」
「んー、そういうのは特には」
「でも気になる男子とかいたりしない?」
「えー……こないだ同じ部活の男子から告白されたりはしたけど……」
 小梅は俯き気味になり、声を小さくして恥ずかしそうに話す。
「で、どうしたの? 付き合うの?」
 グイグイ来る三人に、小梅はたじろいだ。
「別に……何も無く普通に友達やってる」
「せめて返事はちゃんとしようよー。その男子もきっと困ってると思うよー。友達なら別に嫌いじゃないんでしょ」
「だ、だってあたしまだそういうのわかんないし!」
 真っ赤になって焦る小梅を見ながら、三人はニヤニヤ。
「あー、単なる友達だと思ってた男子から告白されたことで意識しちゃうやつね。甘酸っぱいなー」
「それで、夏樹さんは?」
 蓮華から尋ねられると、夏樹は途端に真顔で静止した。
「……まあ、ボクはまだ恋に恋する段階的な? 人のコイバナ聴くのは好きなんだけどねー」
 夏樹はおどけた調子で照れ笑い。三人はちょっとガッカリした様子だった。

 一方その頃、王宮ではムニエルが一人、自室の窓から夜空を眺めていた。
(今頃花梨は、チームメイトと恋の話でもしておるのかのう……)
 そう考えると急に悲しみが襲ってきて、ムニエルは目を閉じた。
 と、その時、扉を叩く音がした。
「ムニエル様」
 ビフテキの声。
「何用じゃ」
「明日は早くから大会の準備がございます。今日は早めにお休みになられた方が宜しいかと」
 ビフテキは扉越しに言う。
「うむ、そうであったな。そうするとしよう」
 精一杯気丈に振る舞い、普段の声色でムニエルは言った。
 ビフテキと共に来ていたハンバーグは何かを察したのか、目を閉じて拳を握った。
 二人はムニエルの部屋から少し離れた所で、話を始める。
「……最強寺拳凰は着々と力を付けてきている。この調子でいけば俺を超える日も遠くはないだろう」
「素晴らしい。お前に任せて正解だったようだ」
 満足した表情のビフテキに対し、ハンバーグの表情は浮かない。
(これが国のため、ひいてはムニエル様のためになる……そう信じてやるしかねえんだ。俺は、ムニエル様の騎士なんだからよ)
 脳裏に浮かぶのは、かつての情景。
 それは孤児から拳闘士となり、盗賊を経て騎士へと昇華した男の物語。


<キャラクター紹介>
名前:レベッカ・シューティングスター
性別:女
学年:中二
身長:164
3サイズ:94-60-91(Fカップ)
髪色:金
髪色(変身後):ピンク
星座:牡牛座
衣装:星条旗ビキニ
武器:無し
魔法:空中でジャンプできる
趣味:プロレス観戦
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