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第一章 一次・二次予選編
第8話 チートな魔法少女
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紙幣の竜巻は花梨を飲み込み、みるみるうちにHPを削ってゆく。花梨は身体を丸め、少しでも被弾する範囲を減らしていた。このままでは一方的にやられてしまうのみである。どうにか反撃したいところだが、目が見えないのではどうしようもない。
珠子は自分の位置を悟られぬよう絶えず移動しながらマネータイフーンを撃っており、実際花梨はその位置を特定できずにいた。
反撃の手段として、大量のメスを広範囲に向けて発射するというのも考えた。しかしMP消費が大きく、一発当てればいいならともかく相手のHPをゼロにする必要がある以上有効とは言い難い。そんなことをすれば相手のHPを削りきる前に自分のMPがゼロになってしまうだろう。それに何より、この場所には今拳凰がいる。拳凰を巻き込んでしまうような攻撃はしたくなかったのである。
一方でその拳凰は花梨のピンチに一度は声を荒げた、これは花梨の戦いだからと今は手に汗を握りながら静観していた。
「オホホホホ! 私の魔法に手も足も出ませんわね! このまま終わりにしてさしあげますわ!」
珠子は勝利を確信し高飛車な態度をとる。だがその時、珠子のむき出しの胸にメスが突き刺さった。
「!?」
珠子は驚いて退き、攻撃の手が止む。魔法少女の身体は傷つかないようになっているため、刺さったメスはすぐに消滅し傷跡も残らず、血の一滴も出ることはない。しかしやはり肌を大胆に晒している関係上防御力は低く、珠子のHPは大きく削られた。
「ぐ、偶然ですわ! 目が見えないのに攻撃が当たるわけが……」
信じ難い出来事に動揺しつつ、珠子は花梨を撹乱せんと動き回る。だが再び花梨の放ったメスが、珠子の右肩に直撃した。
「そんな!? どうして!?」
珠子は花梨の方に目を凝らす。丸くして伏せる体の下に隠すように、花梨は手に何かを持っていた。そこから伸びる管が、花梨の耳に繋がっている。
「あれは……聴診器!?」
花梨は魔法によって作り出した聴診器を床に当てて、珠子の足音を探っていたのである。それを知って動揺し後退りした珠子の足音を、花梨は聞き逃さなかった。花梨の掌から包帯が伸び、珠子の両脚に巻きついて拘束した。バランスを崩した珠子はうつ伏せに倒れる。
「くっ……この私が……」
花梨はMPを一気に消費し、自身の背丈程もある巨大な注射器を生成。倒れた音を目印にして珠子に向け発射した。
「させませんわ!」
飛んできた注射器を、珠子は札束ビンタで弾き軌道を逸らす。両脚を拘束されているとはいえ、両腕は自由に動かせるのである。
花梨渾身の注射器は珠子に当たらず虚しく後ろに飛んでいき、そのまま結界に当たって消滅するかに見えた。だがある程度進んだところで、突如としてUターン。珠子がそれに気付いた時既に遅く、注射針は珠子の尻に突き刺さった。
「ひぎっ!」
目に涙を浮かべ悲鳴を上げる珠子。HPは一気にゼロまで削られ、変身が解除された。それに伴い、花梨の目を覆っていた紙幣も消滅する。
「ありえませんわ……こんな屈辱的な負け方……それもよりにもよってカメラの前で……」
「えっ? わ、私何か気に障るようなことしましたか?」
「お前の注射器がそいつのケツにぶっ刺さったんだよ」
拳凰が答えた。他人にそのことを言及され、珠子は茹蛸のように顔を真っ赤にする。
「ごっ、ごめんなさい! 目が見えないまま操作してたから、まさかそんな所に当たるとは思ってなくて……」
「……まあ、構いませんことよ。この借りは次の最終予選で返させていただきますわ。貴方のお尻に札束ビンタ百連発してさしあげますの」
珠子は平然を装いながら立ち上がり、スカートの汚れを掃った。花梨は思わず両手でお尻を押さえる。
「私に勝ったこと、誇りに思うがいいですわ。せいぜいこの先連敗を重ねて脱落したりとかないよう、頑張りなさい」
負け惜しみのように言いながらスマートフォンを操作し、珠子は自宅へと帰っていった。
「やるじゃねえかチビ助。まさかお前がここまでやるとは思ってなかったぜ」
拳凰は花梨の頭をぽんぽんと撫でて言う。
「ありがとうケン兄。私、これからも頑張る。それじゃあ、私達も帰ろっか」
頭の上に拳凰の手を乗せられた状態でスマートフォンを操作し、花梨は自宅へとワープ。拳凰も一緒にその場から姿を消した。
翌日。いつものようにランニングで登校した拳凰は、教室の机に足をかけ天井を見上げていた。
(チビ助についていってもあいつは自分で戦いたがるだろうし、それじゃ俺が魔法少女と戦えないな。となるとカニホストの携帯に載ってる試合会場を調べて自分で行くしかないか。まあ、それはそれでトレーニングになるからいいんだけどよ)
拳凰がそうしていると、教室を出ていた梓が戻ってきた。
「あっ、どうだった梓?」
「ええ、普通に断ってきたわ」
智恵理の問いに、梓は表情を変えずに答えた。
「勿体無いなー、結構イケメンだったのに」
「私がああいうチャラチャラした男がタイプじゃないの、知ってるでしょう」
梓は隣のクラスの男子から愛の告白に呼び出され、それを断って戻ってきたところだった。
「梓は真面目で正義感の強い男子がタイプだもんねー」
「ええ。好きでもない男から言い寄られても迷惑なだけよ」
梓の脳裏には、どこぞのセクハラ馬の顔が浮かんでいた。
「ま、あたしも同学年から告られたら断ってたけどね。あたし年上好みだし。やっぱ付き合うなら金持ってる社会人でしょ。どうせ付き合うなら結婚前提にしたいし。収入多くてー、イケメンでー、面倒見がよくてー、家柄もよくてー、包容力があってー、あたしのこと守ってくれるー、エリート公務員! それがあたしの理想かなー」
「……まあ、高校生のうちはそのくらい夢見ててもいいんじゃないかしら。適齢期過ぎてもそんなこと言ってたら流石に心配するけど」
どや顔で妄想染みた理想を語る親友の姿に、梓は少し不安を覚えた。
その日の夜、拳凰はいつもの加門公園ではなく、あえて遠出をしてみた。行き先は隣の県にある田可史平原。そこそこ長い距離を自転車漕いで足腰鍛えつつ急行である。
夜の草原で対峙する二人の魔法少女。拳凰は「やってるやってる」と胸躍らせながら、結界内に自転車を停めた。
「お前ら魔法少女だろ? 俺は巷じゃ乱入男とか呼ばれてる最強寺拳凰だ。お前ら俺と戦え!」
簡潔に自己紹介をすると、拳凰は早速戦いに乱入した。
「乱入男、田可史平原ステージに出現しました!」
妖精騎士団人間界拠点では、モニターに映った拳凰の姿をザルソバが捉えていた。
「田可史平原か。昨日は安井ビルに出現したものの戦わず試合を観戦だけしていたと聞いておったが、着々と行動範囲を広げているぜよ」
ミソシルがそう言うと、魔法陣にホーレンソーが現れた。
「ビフテキはいるかな?」
「ビフテキなら調べたいことがあるとか言って今朝方妖精界に行っちまったぜ」
ハンバーグがぶっきらぼうに言う。
「なんと……」
ホーレンソーは落胆して額に手を当てた。
「まったくビフテキも勝手だよねー。ムニエル様がいない間のはあの人がリーダー的なのに」
そう話すのは、肩下まであるクリーム色の長髪が特徴の美少年。
「おや、珍しいなポタージュ。君がここにいるなんて」
美少年は妖精騎士団の一人、牡羊座のポタージュであった。彼は背丈も低く一見少女のような容姿をしているが、れっきとした男である。
現在この場所にいる騎士はホーレンソー、ポタージュ、ザルソバ、ミソシル、ハンバーグの五名である。残りの者は仕事に出ていたり、或いはオフを過ごしていたりする。
「ま、一昨日召集があったのに来られなかった的だからねー。たまにはここに顔見せとかないと的な」
「そうだな、いい心がけだ。それにしても、いきなり妖精界に行ってしまうとはビフテキは一体何を考えているのだ」
一昨日のことについて追究したかったホーレンソーは、出鼻を挫かれた感覚だった。昨日は会場の整備や試合の立会い等で拠点に来る余裕が無かったのだが、無理をしてでも昨日の内に訊いておくべきだったと後悔した。
「ホーレンソー、例の乱入男は今日も元気に乱入していますよ」
ザルソバは拳凰の映るモニターを指差して言う。
「しかも場所は加門公園ではありません。乱入男が試合の行われる場所と日時を正確に把握しているとなると、やはりカニミソのフェアリーフォンを所持していると見てよいでしょう」
「そうか……これは一大事のはずだが、リーダー代行のビフテキが手を出すなと言っているのでは我々も手を出すわけにはいかないのだよな。困ったものだ」
「ま、僕らの実力なら許可さえ出ればいつでもやっつけられる的だし、今はほっといてもいいんじゃない的な。視聴者も喜んでる的だし」
楽観的なポタージュに、ホーレンソーは溜息をついた。
「ていうかさあ、乱入男もいいけど、僕的にはもっと別の試合を見て欲しい的なんだよねー。ほらあそこのモニターに映ってるでしょ、僕一押しの子が」
ポタージュの指差す先では、ドーム球場の中で二人の魔法少女が戦っていた。一方は黄緑色の髪で、もう一人は赤茶色の髪をしている。
「ほら、あっちの赤茶色の髪の子。小鳥遊麗羅ちゃんっていってね、あの子凄いんだよー」
小鳥遊麗羅は、臍の辺りまで伸ばしたロングヘアをツーサイドアップにした美少女である。魔法少女の衣装は吸血鬼風で、表が黒く裏地が赤いマントを身に纏っている。トップスはシンプルな黒の胸下丈チューブトップ。ボトムスはトップスと同じ色をした股下丈のショートスパッツとなっており、露出度は結構高め。牡羊座のブローチは立てたマントの襟に付いている。背が高くて腰が細く、すらっとした長い脚は世の女性が憧れるスタイルである。なお、胸は可哀想なくらいに平坦だった。膨らんでいるのかいないのか微妙なレベルに平坦であった。引っかかる場所が無くてチューブトップがずり落ちないか不安になってくるが、テレビに映ることを考慮してそういうことは起きないよう魔法で制御されているためその点は安心であった。
「あの子はドイツ帰りの帰国子女で現役女子高生アイドルなんだ。高橋麗子って芸名なんだけど、君達もこっちに住んでるなら聞いたことある的でしょ?」
「高橋麗子とは……大人気アイドルではないか!?」
「そう、それ的な。お蔭で試合のスケジュール組むの超大変的なんだよねー。一昨日も音楽番組に出た後試合会場に直行だったし。歌って踊った直後にバトルなんて超大変的だけど、それでも余裕で勝っちゃうのがあの子の凄さ的な」
「お前が忙しい忙しい言ってたのはそれが理由か」
「もう僕が第二のマネージャー的なことになっちゃってる的な。勿論麗羅ちゃん以外に担当してる子も見てやらなきゃいけないし、本当忙しくてたまらない的なんだよ。あっ、そろそろ麗羅ちゃんがとどめ刺すよ」
画面の向こうで、麗羅はマントから無数の蝙蝠を召喚していた。蝙蝠達は相手の魔法少女に纏わり付き、動きを封じる。更に一部の蝙蝠が麗羅の右手に集まり、寄り合わさって真っ黒な鞭に姿を変えた。
「あれだけの数の召喚獣を同時に操るとは……二次予選の段階であそこまでやる魔法少女がいたとは驚きぜよ」
ミソシルは麗羅の操る蝙蝠の数に感心する。
恐るべき鞭の一振りが、相手の魔法少女を叩き飛ばした。対戦相手はこれで変身解除され、麗羅の勝利が確定する。
「ほー、無傷で勝ちやがったぜ」
「しかもMPもかなり残っています。彼女の実力は相当なものですね。むしろこの段階では桁外れの強さと言っていい」
麗羅の強さに、騎士団の面々は驚きを見せていた。
「凄いでしょ凄いでしょ。ま、おっぱい小さいことだけは残念的だけどさ。あ、麗羅ちゃんの写真集見る? よくあの胸で水着になれるなーってある意味感心する的だよ。まあ、ファンの人達はそれがたまらないらしい的なんだけど。胸が零子とか言われてたり的な。ていうか前回大会の時と胸のサイズ変わってない的な」
「それにしてもあれだけの数の召喚獣を出してあの程度しかMPが減っていないとは……む? そういえば先程、彼女はドイツからの帰国子女と言っていたな」
「あ、気付いちゃった的な?」
ホーレンソーの言葉に、ポタージュはペロリと舌を出した。
「ザルソバ、前回大会の記録を見せてくれ」
「あ、はい」
ザルソバが手元のモニターに映したのは、五年前に行われたドイツ大会の記録である。そこには小鳥遊麗羅の名前が出ていた。
「やはりそうか。彼女は前回大会の出場者だ」
「何!?」
ミソシルとハンバーグも驚いた。
「そう、それ的な。当時小学五年生だった麗羅ちゃんは親の都合でドイツに住んでいて、丁度その時ドイツで開催された魔法少女バトルに出場、本戦まで勝ち進んだけどあえなく敗退しちゃった的な。そして日本に帰国してから帰国子女キャラを活かしてアイドルデビュー。更に僕から目をつけられて二度目の魔法少女バトル出場となった的なわけ。失われた記憶も再び魔法少女になったことで取り戻したから、知識と経験は他の魔法少女を凌駕してる的。更に前回大会で成長した魔力も全部最初から引き継いでる的な感じ」
「チートじゃねえか!」
「いやいやー、ちゃんとルールに則ってる的だから。過去にも二大会連続で出場した魔法少女はいる的だからねー。そんな子を発掘してきた僕ってまさに天才的ぃ~なんだよねー。妖精騎士就任初の魔法少女バトルでいきなり優勝しちゃったり的な! ま、天才的ぃ~な僕ならそれも当然だけどー」
鼻高々で調子に乗るポタージュ。妖精騎士団の中でも二番目に若い彼がこんな態度で、他の騎士達はあまりいい気がしなかった。
「驚異的だな。あの子の胸囲は残念だが」
「その小鳥遊麗羅を本戦に行ける程の魔法少女に育て上げたのは前任者のジンギスカン卿ではないか! お前の手柄ではないぜよ!」
ホーレンソーのダジャレをスルーしつつ、ミソシルが怒鳴る。
「大体貴様は見た目からしてチャラチャラし過ぎぜよ! あの騎士の鑑のようなジンギスカン卿を少しは見習ったらどうぜよ!」
「えー? ていうかジンギスカン卿ってカニミソの父親でしょ? あの弱っちいカニミソの。息子が息子なら親も親っていうかー。カニミソなんかをコネで騎士団に入れてる時点で騎士の鑑も糞も無い的なー」
「そ、それは確かにジンギスカン卿唯一の汚点ではあるが……」
痛いところを突かれ、ミソシルはたじろいだ。
「まったく、息子のカニミソは人間に負ける程の雑魚で後任者のポタージュはテキテキ五月蝿い女男。ジンギスカン卿が不憫でならんぜよ」
不機嫌になったミソシルは、後ろを向いてしまう。
「ま、今回の優勝者は麗羅ちゃんで決まり的なんで。よろしく的ー」
満点の笑顔で言うポタージュ。乱入男の出現に加えて、チートな魔法少女。今年の魔法少女バトルは只事では終わらない。そんな予感が、騎士達にあった。
<キャラクター紹介>
名前:小鳥遊麗羅
性別:女
学年:高一
身長:164
3サイズ:72-56-78(Aカップ)
髪色:茶
髪色(変身後):赤茶
星座:牡羊座
衣装:吸血鬼風
武器:鞭
魔法:無数の蝙蝠の召喚獣を操れる
趣味:作詞
珠子は自分の位置を悟られぬよう絶えず移動しながらマネータイフーンを撃っており、実際花梨はその位置を特定できずにいた。
反撃の手段として、大量のメスを広範囲に向けて発射するというのも考えた。しかしMP消費が大きく、一発当てればいいならともかく相手のHPをゼロにする必要がある以上有効とは言い難い。そんなことをすれば相手のHPを削りきる前に自分のMPがゼロになってしまうだろう。それに何より、この場所には今拳凰がいる。拳凰を巻き込んでしまうような攻撃はしたくなかったのである。
一方でその拳凰は花梨のピンチに一度は声を荒げた、これは花梨の戦いだからと今は手に汗を握りながら静観していた。
「オホホホホ! 私の魔法に手も足も出ませんわね! このまま終わりにしてさしあげますわ!」
珠子は勝利を確信し高飛車な態度をとる。だがその時、珠子のむき出しの胸にメスが突き刺さった。
「!?」
珠子は驚いて退き、攻撃の手が止む。魔法少女の身体は傷つかないようになっているため、刺さったメスはすぐに消滅し傷跡も残らず、血の一滴も出ることはない。しかしやはり肌を大胆に晒している関係上防御力は低く、珠子のHPは大きく削られた。
「ぐ、偶然ですわ! 目が見えないのに攻撃が当たるわけが……」
信じ難い出来事に動揺しつつ、珠子は花梨を撹乱せんと動き回る。だが再び花梨の放ったメスが、珠子の右肩に直撃した。
「そんな!? どうして!?」
珠子は花梨の方に目を凝らす。丸くして伏せる体の下に隠すように、花梨は手に何かを持っていた。そこから伸びる管が、花梨の耳に繋がっている。
「あれは……聴診器!?」
花梨は魔法によって作り出した聴診器を床に当てて、珠子の足音を探っていたのである。それを知って動揺し後退りした珠子の足音を、花梨は聞き逃さなかった。花梨の掌から包帯が伸び、珠子の両脚に巻きついて拘束した。バランスを崩した珠子はうつ伏せに倒れる。
「くっ……この私が……」
花梨はMPを一気に消費し、自身の背丈程もある巨大な注射器を生成。倒れた音を目印にして珠子に向け発射した。
「させませんわ!」
飛んできた注射器を、珠子は札束ビンタで弾き軌道を逸らす。両脚を拘束されているとはいえ、両腕は自由に動かせるのである。
花梨渾身の注射器は珠子に当たらず虚しく後ろに飛んでいき、そのまま結界に当たって消滅するかに見えた。だがある程度進んだところで、突如としてUターン。珠子がそれに気付いた時既に遅く、注射針は珠子の尻に突き刺さった。
「ひぎっ!」
目に涙を浮かべ悲鳴を上げる珠子。HPは一気にゼロまで削られ、変身が解除された。それに伴い、花梨の目を覆っていた紙幣も消滅する。
「ありえませんわ……こんな屈辱的な負け方……それもよりにもよってカメラの前で……」
「えっ? わ、私何か気に障るようなことしましたか?」
「お前の注射器がそいつのケツにぶっ刺さったんだよ」
拳凰が答えた。他人にそのことを言及され、珠子は茹蛸のように顔を真っ赤にする。
「ごっ、ごめんなさい! 目が見えないまま操作してたから、まさかそんな所に当たるとは思ってなくて……」
「……まあ、構いませんことよ。この借りは次の最終予選で返させていただきますわ。貴方のお尻に札束ビンタ百連発してさしあげますの」
珠子は平然を装いながら立ち上がり、スカートの汚れを掃った。花梨は思わず両手でお尻を押さえる。
「私に勝ったこと、誇りに思うがいいですわ。せいぜいこの先連敗を重ねて脱落したりとかないよう、頑張りなさい」
負け惜しみのように言いながらスマートフォンを操作し、珠子は自宅へと帰っていった。
「やるじゃねえかチビ助。まさかお前がここまでやるとは思ってなかったぜ」
拳凰は花梨の頭をぽんぽんと撫でて言う。
「ありがとうケン兄。私、これからも頑張る。それじゃあ、私達も帰ろっか」
頭の上に拳凰の手を乗せられた状態でスマートフォンを操作し、花梨は自宅へとワープ。拳凰も一緒にその場から姿を消した。
翌日。いつものようにランニングで登校した拳凰は、教室の机に足をかけ天井を見上げていた。
(チビ助についていってもあいつは自分で戦いたがるだろうし、それじゃ俺が魔法少女と戦えないな。となるとカニホストの携帯に載ってる試合会場を調べて自分で行くしかないか。まあ、それはそれでトレーニングになるからいいんだけどよ)
拳凰がそうしていると、教室を出ていた梓が戻ってきた。
「あっ、どうだった梓?」
「ええ、普通に断ってきたわ」
智恵理の問いに、梓は表情を変えずに答えた。
「勿体無いなー、結構イケメンだったのに」
「私がああいうチャラチャラした男がタイプじゃないの、知ってるでしょう」
梓は隣のクラスの男子から愛の告白に呼び出され、それを断って戻ってきたところだった。
「梓は真面目で正義感の強い男子がタイプだもんねー」
「ええ。好きでもない男から言い寄られても迷惑なだけよ」
梓の脳裏には、どこぞのセクハラ馬の顔が浮かんでいた。
「ま、あたしも同学年から告られたら断ってたけどね。あたし年上好みだし。やっぱ付き合うなら金持ってる社会人でしょ。どうせ付き合うなら結婚前提にしたいし。収入多くてー、イケメンでー、面倒見がよくてー、家柄もよくてー、包容力があってー、あたしのこと守ってくれるー、エリート公務員! それがあたしの理想かなー」
「……まあ、高校生のうちはそのくらい夢見ててもいいんじゃないかしら。適齢期過ぎてもそんなこと言ってたら流石に心配するけど」
どや顔で妄想染みた理想を語る親友の姿に、梓は少し不安を覚えた。
その日の夜、拳凰はいつもの加門公園ではなく、あえて遠出をしてみた。行き先は隣の県にある田可史平原。そこそこ長い距離を自転車漕いで足腰鍛えつつ急行である。
夜の草原で対峙する二人の魔法少女。拳凰は「やってるやってる」と胸躍らせながら、結界内に自転車を停めた。
「お前ら魔法少女だろ? 俺は巷じゃ乱入男とか呼ばれてる最強寺拳凰だ。お前ら俺と戦え!」
簡潔に自己紹介をすると、拳凰は早速戦いに乱入した。
「乱入男、田可史平原ステージに出現しました!」
妖精騎士団人間界拠点では、モニターに映った拳凰の姿をザルソバが捉えていた。
「田可史平原か。昨日は安井ビルに出現したものの戦わず試合を観戦だけしていたと聞いておったが、着々と行動範囲を広げているぜよ」
ミソシルがそう言うと、魔法陣にホーレンソーが現れた。
「ビフテキはいるかな?」
「ビフテキなら調べたいことがあるとか言って今朝方妖精界に行っちまったぜ」
ハンバーグがぶっきらぼうに言う。
「なんと……」
ホーレンソーは落胆して額に手を当てた。
「まったくビフテキも勝手だよねー。ムニエル様がいない間のはあの人がリーダー的なのに」
そう話すのは、肩下まであるクリーム色の長髪が特徴の美少年。
「おや、珍しいなポタージュ。君がここにいるなんて」
美少年は妖精騎士団の一人、牡羊座のポタージュであった。彼は背丈も低く一見少女のような容姿をしているが、れっきとした男である。
現在この場所にいる騎士はホーレンソー、ポタージュ、ザルソバ、ミソシル、ハンバーグの五名である。残りの者は仕事に出ていたり、或いはオフを過ごしていたりする。
「ま、一昨日召集があったのに来られなかった的だからねー。たまにはここに顔見せとかないと的な」
「そうだな、いい心がけだ。それにしても、いきなり妖精界に行ってしまうとはビフテキは一体何を考えているのだ」
一昨日のことについて追究したかったホーレンソーは、出鼻を挫かれた感覚だった。昨日は会場の整備や試合の立会い等で拠点に来る余裕が無かったのだが、無理をしてでも昨日の内に訊いておくべきだったと後悔した。
「ホーレンソー、例の乱入男は今日も元気に乱入していますよ」
ザルソバは拳凰の映るモニターを指差して言う。
「しかも場所は加門公園ではありません。乱入男が試合の行われる場所と日時を正確に把握しているとなると、やはりカニミソのフェアリーフォンを所持していると見てよいでしょう」
「そうか……これは一大事のはずだが、リーダー代行のビフテキが手を出すなと言っているのでは我々も手を出すわけにはいかないのだよな。困ったものだ」
「ま、僕らの実力なら許可さえ出ればいつでもやっつけられる的だし、今はほっといてもいいんじゃない的な。視聴者も喜んでる的だし」
楽観的なポタージュに、ホーレンソーは溜息をついた。
「ていうかさあ、乱入男もいいけど、僕的にはもっと別の試合を見て欲しい的なんだよねー。ほらあそこのモニターに映ってるでしょ、僕一押しの子が」
ポタージュの指差す先では、ドーム球場の中で二人の魔法少女が戦っていた。一方は黄緑色の髪で、もう一人は赤茶色の髪をしている。
「ほら、あっちの赤茶色の髪の子。小鳥遊麗羅ちゃんっていってね、あの子凄いんだよー」
小鳥遊麗羅は、臍の辺りまで伸ばしたロングヘアをツーサイドアップにした美少女である。魔法少女の衣装は吸血鬼風で、表が黒く裏地が赤いマントを身に纏っている。トップスはシンプルな黒の胸下丈チューブトップ。ボトムスはトップスと同じ色をした股下丈のショートスパッツとなっており、露出度は結構高め。牡羊座のブローチは立てたマントの襟に付いている。背が高くて腰が細く、すらっとした長い脚は世の女性が憧れるスタイルである。なお、胸は可哀想なくらいに平坦だった。膨らんでいるのかいないのか微妙なレベルに平坦であった。引っかかる場所が無くてチューブトップがずり落ちないか不安になってくるが、テレビに映ることを考慮してそういうことは起きないよう魔法で制御されているためその点は安心であった。
「あの子はドイツ帰りの帰国子女で現役女子高生アイドルなんだ。高橋麗子って芸名なんだけど、君達もこっちに住んでるなら聞いたことある的でしょ?」
「高橋麗子とは……大人気アイドルではないか!?」
「そう、それ的な。お蔭で試合のスケジュール組むの超大変的なんだよねー。一昨日も音楽番組に出た後試合会場に直行だったし。歌って踊った直後にバトルなんて超大変的だけど、それでも余裕で勝っちゃうのがあの子の凄さ的な」
「お前が忙しい忙しい言ってたのはそれが理由か」
「もう僕が第二のマネージャー的なことになっちゃってる的な。勿論麗羅ちゃん以外に担当してる子も見てやらなきゃいけないし、本当忙しくてたまらない的なんだよ。あっ、そろそろ麗羅ちゃんがとどめ刺すよ」
画面の向こうで、麗羅はマントから無数の蝙蝠を召喚していた。蝙蝠達は相手の魔法少女に纏わり付き、動きを封じる。更に一部の蝙蝠が麗羅の右手に集まり、寄り合わさって真っ黒な鞭に姿を変えた。
「あれだけの数の召喚獣を同時に操るとは……二次予選の段階であそこまでやる魔法少女がいたとは驚きぜよ」
ミソシルは麗羅の操る蝙蝠の数に感心する。
恐るべき鞭の一振りが、相手の魔法少女を叩き飛ばした。対戦相手はこれで変身解除され、麗羅の勝利が確定する。
「ほー、無傷で勝ちやがったぜ」
「しかもMPもかなり残っています。彼女の実力は相当なものですね。むしろこの段階では桁外れの強さと言っていい」
麗羅の強さに、騎士団の面々は驚きを見せていた。
「凄いでしょ凄いでしょ。ま、おっぱい小さいことだけは残念的だけどさ。あ、麗羅ちゃんの写真集見る? よくあの胸で水着になれるなーってある意味感心する的だよ。まあ、ファンの人達はそれがたまらないらしい的なんだけど。胸が零子とか言われてたり的な。ていうか前回大会の時と胸のサイズ変わってない的な」
「それにしてもあれだけの数の召喚獣を出してあの程度しかMPが減っていないとは……む? そういえば先程、彼女はドイツからの帰国子女と言っていたな」
「あ、気付いちゃった的な?」
ホーレンソーの言葉に、ポタージュはペロリと舌を出した。
「ザルソバ、前回大会の記録を見せてくれ」
「あ、はい」
ザルソバが手元のモニターに映したのは、五年前に行われたドイツ大会の記録である。そこには小鳥遊麗羅の名前が出ていた。
「やはりそうか。彼女は前回大会の出場者だ」
「何!?」
ミソシルとハンバーグも驚いた。
「そう、それ的な。当時小学五年生だった麗羅ちゃんは親の都合でドイツに住んでいて、丁度その時ドイツで開催された魔法少女バトルに出場、本戦まで勝ち進んだけどあえなく敗退しちゃった的な。そして日本に帰国してから帰国子女キャラを活かしてアイドルデビュー。更に僕から目をつけられて二度目の魔法少女バトル出場となった的なわけ。失われた記憶も再び魔法少女になったことで取り戻したから、知識と経験は他の魔法少女を凌駕してる的。更に前回大会で成長した魔力も全部最初から引き継いでる的な感じ」
「チートじゃねえか!」
「いやいやー、ちゃんとルールに則ってる的だから。過去にも二大会連続で出場した魔法少女はいる的だからねー。そんな子を発掘してきた僕ってまさに天才的ぃ~なんだよねー。妖精騎士就任初の魔法少女バトルでいきなり優勝しちゃったり的な! ま、天才的ぃ~な僕ならそれも当然だけどー」
鼻高々で調子に乗るポタージュ。妖精騎士団の中でも二番目に若い彼がこんな態度で、他の騎士達はあまりいい気がしなかった。
「驚異的だな。あの子の胸囲は残念だが」
「その小鳥遊麗羅を本戦に行ける程の魔法少女に育て上げたのは前任者のジンギスカン卿ではないか! お前の手柄ではないぜよ!」
ホーレンソーのダジャレをスルーしつつ、ミソシルが怒鳴る。
「大体貴様は見た目からしてチャラチャラし過ぎぜよ! あの騎士の鑑のようなジンギスカン卿を少しは見習ったらどうぜよ!」
「えー? ていうかジンギスカン卿ってカニミソの父親でしょ? あの弱っちいカニミソの。息子が息子なら親も親っていうかー。カニミソなんかをコネで騎士団に入れてる時点で騎士の鑑も糞も無い的なー」
「そ、それは確かにジンギスカン卿唯一の汚点ではあるが……」
痛いところを突かれ、ミソシルはたじろいだ。
「まったく、息子のカニミソは人間に負ける程の雑魚で後任者のポタージュはテキテキ五月蝿い女男。ジンギスカン卿が不憫でならんぜよ」
不機嫌になったミソシルは、後ろを向いてしまう。
「ま、今回の優勝者は麗羅ちゃんで決まり的なんで。よろしく的ー」
満点の笑顔で言うポタージュ。乱入男の出現に加えて、チートな魔法少女。今年の魔法少女バトルは只事では終わらない。そんな予感が、騎士達にあった。
<キャラクター紹介>
名前:小鳥遊麗羅
性別:女
学年:高一
身長:164
3サイズ:72-56-78(Aカップ)
髪色:茶
髪色(変身後):赤茶
星座:牡羊座
衣装:吸血鬼風
武器:鞭
魔法:無数の蝙蝠の召喚獣を操れる
趣味:作詞
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