脱衣ゲームでカップル成立 ~史上最強の淫魔、光堕ちしてキューピッドになる~

平良野アロウ

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第六章

第174話 ポージングにらめっこ・4

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「では四回戦を始めましょう。今回は大井君、河内さんペアの先攻です」

 下半身裸となった梢は、一馬と向き合いながら両手だけで股間を隠していた。
 こんな時、自動でカードを捲ってくれるこのゲームの仕様は救いになっていた。

 一馬のAはしゃがんで脚を開き両足の間に掌をついた、カエルの物真似のようなポーズ。おまけにカエルらしく両頬を膨らませている。
 そして梢のAはうつ伏せに寝そべった状態からお尻だけを高く持ち上げて脚を開いた、所謂女豹のポーズ。これまた非常に柔軟性が問われるものだ。

「俺はAでいい」

 一馬は即決したものの、梢は悩んでいた。
 これ自体はどんなに難しくとも、梢の身体の柔らかさならできないポーズではない。だがやってて確実に恥ずかしい露骨なエロポーズの類いであることは確か。
 それでもこのポーズを選ぶ大きなメリットがあるからこそ、梢は悩んでいるのだ。何せこのポーズ、一番恥ずかしい部分は一馬の側から見ると梢の胴で隠れているため見えないのである。
 仮にこれを拒否してBのポーズを選んだ場合、一番恥ずかしい部分が丸見えにになるポーズを引く可能性が出てくるのだ。むしろ下半身裸でさえなければ何でもないような普通のポーズですら、恥ずかしすぎる丸出しポーズになり得るのである。

「あたしも……Aで」
「これでポーズは決まりました。ではお手本をお見せ致しましょう」

 ルシファーのカエルポーズは面白ポーズとして格別インパクトのあるものでもなく難易度も低いため、これといって言うことはない。
 リリムは艶めかしい動作で易々と女豹のポーズを決め、獲物のカエルに狙いを定めて眼を光らせた。

 梢は器用に秘部を隠しながら寝そべり、そうしてからゆっくりと女豹のポーズへシフトしていった。
 一方の一馬はしゃがんで床に手をつくだけで完了である。

 下半身裸でお尻を高く突き上げている梢は、想像以上の恥ずかしさに悶えていた。
 あくまで肝心な所は自分の胴で隠れているとはいえ、あまりに無防備な下半身が焦燥感を煽る。

(うー……なんかもう色々とヤバい……ていうかこれ後ろから見たらとんでもないことになってるのでは……)

 録音されたリリムの声でテンカウントが流れる中、梢の視界の脇にいたリリム本人は突然視界から姿を消した。そしてふと、背後に感じた人の気配。

(恋咲先輩!? あたしの後ろにいる!?)

 丸見えになった梢の恥ずかしい所を拝むためにわざわざここに移動してきたいたずらっ娘である。ルシファーはやれやれといったジェスチャー。
 梢とリリムは同じ新体操部員であり、更衣室で普通の下着と専用のインナーを着替える際に下半身裸の姿を他の部員に見られること自体は普通にある。
 だが性器やら肛門やらごく普通の着替えの動作でそう長時間晒されるようなことのない部位をこうもまじまじと見られるのは初めてのことだった。

(ちょっと何なのこの人! あたしのそんなとこ見て何が面白いわけ!?)

 カウントが終わると、梢は一旦腰を床まで下げて寝そべり姿勢になる。そこから器用に手で股間を隠しながら立ち上がった。そして即座に、リリムに問い詰める。

「恋咲先輩!? 何してんですか!?」
「梢ちゃんアナル綺麗だねぇ」
「何言ってんですか!?」

 ばっと両手を後ろに回し、既に尻肉で隠れているお尻の穴付近を手で隠す。
 が、そうなると当然正面は丸見えになるわけである。卵型のアンダーヘアは土手の上側にだけ残すような形であり、最下部の割れ目付近は無毛である。
 リリムに乗せられて失態を犯したことに気付いた梢は、慌てて再び両手を正面に戻す。

(大井君に毛見られたーっ!)
「梢ちゃん梢ちゃん、アナルも見せたげたら大井君きっと喜ぶよ」
「見せませんよ!?」

 それはそれとして、一馬の反応は気になるものである。
 どうせ無反応と思いながら恐る恐るチラ見して、ガッカリして目線を戻す。が、即座に二度見。ガッカリすることまでセットでルーチン的に行ってしまったが、一馬の反応は明らかにこれまでと違っていた。
 やや体を前屈みにしながら少し紅潮させた顔をそっぽ向かせ目線を泳がせている。明らかに、性的興奮とそれに伴う動揺が見られる反応だ。

(えっ? えっ?)

 逆に戸惑ったのは梢である。性欲枯れているが如きこれまでの無反応ぶりから一転して、急に人間らしさを取り戻したかのような変貌ぶり。

(えっと、これはつまり……下着とかレオタードとかどんなに露出度高くても隠すべきとこ隠れてるなら興味も感じないけど、裸でがっつり見えてるならエロいと思えると……)

 性癖や興奮するポイントは人それぞれである。
 梢が唖然としつつ納得していると、ルシファーが両手を合わせてパンと鳴らした。

「さて、ではそろそろ採点に入りましょうか。まず大井君、4点。ポーズはよくできていましたが、頬の膨らまし方が足りないのが惜しかったです」
「あ、梢ちゃんは5点ね。すっごいセクシーだったよ!」
「というわけで合計は9点となります」
(またこのパターンかよ)

 デジャヴを感じる展開に、茂徳は心の中でツッコんだ。せっかく王手がかかった状況なのに、ここで再び満点を求められる。まだあと一回は負けられるとはいえ、負けたら去勢を言い渡されている茂徳が勝ちを焦るのは致し方無い。
 茂徳と杏の前に山札を載せたテーブルが現れ、カードが配られる。

 茂徳のAはウンコ座りで踏ん張っているポーズである。見ただけでうわっと声が出てドン引きしてしまった。
 杏のAは背筋をピンと伸ばして片足立ちし掌を合わせて腕をまっすぐに上げた、所謂立ち木のポーズ。このゲームでは頻発する片足立ちパターンであり、運動音痴の杏には厳しいものだ。

「BだB! こんなもんやらされてたまるか!」
「私もBで……」

 二人ともBのカードが捲られて、新たなポーズが指定される。
 茂徳のBは斜め上を見上げながら恍惚の表情で前髪を掻き上げる、ナルシストのようなポーズ。普通にかっこいい部類ではあるが、自分に酔っている感全開のこれはギャグと言えばギャグだ。
 杏のBはパートナーに横を向け、全身でカタカナの「ク」の字を表すように体を曲げたポーズ。両足は床についているものも、揃えて斜めにした脚でバランスをとらねばならずそれなりに難易度はある。

「では、お手本をお見せ致しましょう」

 手本でルシファーがナルシストのポーズをとるや否や、あまりにハマりすぎなその姿に誰もが視線を奪われた。それは最早美の神の降臨に等しい衝撃であり、隣で可愛らしくクの字のポーズをとっているリリムでさえも、手本の役目を忘れてルシファーの方に顔を向けてしまうほどであった。

(カッコよすぎるよ先生……)

 リリムはお股の辺りが濡れてきたのを感じ、はっと我に返って正しいポーズと表情に戻した。

「ではお二人にはこちらのポーズをやって頂きましょう」
(腹立つなこいつ。ここまで散々ひょうきんぶってふざけ倒した癖して、ここに来て俺より良い顔でまともに格好つけやがって。あんなもん見せられた後じゃ俺が見劣りすんだろーが!)

 とりあえずナルシストのポーズをとってみた茂徳ではあるが、内心穏やかではない。自分の顔の良さには自信のあったが故に、ダイレクトに敗北感を叩きつけられた格好になるのだ。
 だがそのようにルシファーと比べたら見劣りすると本人は自覚していたものの、その茂徳のナルシストポーズを見た杏の反応はといえば。

(か……かっこよすぎます! こんなの直視できません!)

 それでも効果抜群、がっつりハートに突き刺さっていた。
 ドキドキして集中力が乱れた杏は元々バランスの悪いポーズをとっていたが故に、自然と後ろに倒れて尻餅をついた。
 そしてその状態のまま、テンカウントが終了。

「えー、では採点致します。大山寺君、5点。流石イケメン、実に似合っていました」
(俺より似合ってる奴に言われると皮肉みてーで腹立つな)
「杏ちゃんは1点ね。残念だけど、転んじゃったからね」
「というわけで合計6点。よって大井君、河内さんペアの勝利です。柚木さんは服を一枚脱いで下さい」
「は、はい……」

 杏は目尻に涙を浮かべ、茂徳に背を向けてブラのホックを外し始める。不覚にも、茂徳は唾を呑んでしまった。
 躊躇い気味に脱いだ純白のブラはすぐに消え、杏は「ひゃ」と声を上げた。
 上半身裸にされた杏は胸の前に腕を重ねると、掌を乳首の上に置いた状態でちゃんと隠れているか何度も確認し、茂徳の側へと体を向けた。

「ぬ、脱ぎました……」
(うーん、やっぱエッッロい体してるよなあ。これが遊びでヤれるビッチだったら最高なんだがな……どう見てもそういうわけにはいかないタイプなのが残念だぜ)

 茂徳はそう思いながら顎に手を当て杏の裸体を凝視する。
 手で押し潰された胸はその柔らかさを強調するかのようで、男心をそそられた。
 だが杏がちゃんと隠れているか再三確認していたこともあり、乳首の見えそうな隙は無し。乳房のサイズの割に乳輪はそれほど大きい方ではないため、はみ出しも見られず。そこに茂徳はやきもきさせられた。

「あの、あまり見ないでください……」
「いやいやこれは見るって。男なら絶対見る」

 視線に怖気づいた杏は腰が引けるも、その腰を振るような動きも色気を感じさせるものであった。
 背後から聞こえてくる茂徳の声に、一馬も何やら反応してピクリと身を微かに動かした。梢が危機感を抱いたのは言うまでもない。

(大井君も向こうの巨乳を見たがってる!?)
「さて、泣いても笑っても次が最後の一戦です。今回は大山寺君、柚木さんペアから」

 テーブルが再度出現して、最後のカードが配られる。

(どうか胸の隠れるポーズであってください……)

 茂徳のAは爪を立てたのを表すように手を広げて全ての指を曲げた形にしたものを顔の両横に持っていき、脚を蟹股に大きく開いた子供が怪獣ごっこをする時のようなポーズ。顔も牙を剥きガオーと咆哮を上げるように口を大きく開いている。
 そして杏のAは僅かに膝を曲げてSの字気味に体をくねらせつつ、胸の辺りに手を置いたポーズであった。

(あっ、これなら胸を隠せます)

 祈りが通じたのか、希望通りのポーズを引けて杏は安堵した。

「私はこのAでいいです」
「俺もまあ、Aでいいぜ」
「二人とも決まったようですね。ではお手本をお見せ致しましょう」

 そう言って即座に怪獣のポーズをとるルシファー。コミカルなポーズだが迫真の表情で今にも口から炎のブレスを吐きそうである。
 ちなみに炎の魔法を得意とするルシファーは、やろうと思えば口から火を吹くことは普通にできる。手から出した方が扱いやすいので普通はやらないが。

 一方のリリム。カードの指定通りゆるやかに身をくねらせ、手はそっと、掬うような形にした上で小指側を胴に付け胸の下に置く。
 そしてまるでそこに豊かな乳房があるかのように、重量がありそうなジェスチャーで手を少し上に持ち上げた。

「えっ、あ、あの、胸が隠れていないのですが」
「そだよー。これはおっぱいを手で下から持ち上げるポーズ」
「持ち上げられてねーぞ恋咲」
「うっさいバーカバーカ! 杏ちゃんがやる前提のお手本だもん! だから巨乳のつもりでやってるんだもん!」

 突っかかってくる茂徳に涙目になって反論すると、ルシファーが一旦ポーズを解いてリリムの頭をぽんぽんと撫でてやった。

「ではお二人にはこちらのポーズをやって頂きます」
「ええー……」

 杏はそんな声を漏らした。安心から急転直下。カードに描かれたピクトグラムでは手の位置や形がわかり辛かったから、或いはわざと誤認させることを狙ったか、杏はこれを胸を隠したポーズだと思い込んでしまっていた。

(ど、どうしましょう……胸が丸見えになってしまいます……)

 ぎゅっと胸を押さえた掌には、激しい焦燥を示す鼓動が伝わっていた。
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