脱衣ゲームでカップル成立 ~史上最強の淫魔、光堕ちしてキューピッドになる~

平良野アロウ

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第五章

第163話 脱衣ツイスターゲーム・4

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 沙雪と優也の出会いは、中学の入学式であった。
 入学早々どんくささを発揮して、配布された教科書類を教室にぶち撒けた沙雪。それを初対面ながら拾って助けてくれたのが優也であった。
 その後二人とも手芸部に入部し、同じ趣味を持っていることが判明。それをきっかけに仲良くなっていく中で、沙雪は次第に恋を自覚していった。

 しかし優也に想い人がいることは、それ以前から沙雪は知っていた。優也が幼馴染の真智に向ける態度は、実にわかりやすいものであったのだ。
 自分と違って明るく溌溂とした真智に、沙雪はとても勝てる気がしなかった。
 勝負から逃げ続けながら想いだけを内に秘め、気付けば沙雪の恋も優也の恋も何の進展も無いまま中学を卒業。同じ高校に進学したものの、沙雪と優也は別々のクラスになってしまった。
 高校でも部活は手芸部に入りそこで優也との友人関係は継続していたが、恋愛の進展は変わらずゼロ。
 その状況を動かしたのは、思いもよらない転校生であった。

 夏休み二週間前というこんな中途半端な時期に、優也のクラスであるD組にイケメン転校生が来たという話は同じクラスの女子達の話題を聞いて知っていた。
 尤も既に想い人のいる沙雪にとってそれは興味を惹かれる存在ではなかったので、最初は気にもしていなかった。

 ある日その転校生から、急に廊下で声をかけられた。
 沙雪は初め彼が誰なのかも、何故自分のことを知っているのかもわからなかった。それで怖くなって逃げ出したのである。
 そもそも、沙雪はこの手のチャラ男が苦手であった。こういう男性から何かしら被害を受けたとかそういうわけではないのだが、ビビりの本能がこういう男性は怖いものだと告げていたのだ。

 例の転校生が昔隣の家に住んでいて仲の良かった幼馴染の進藤良一であると気付いたのは、それから二日後のことだった。
 とはいえ仲の良かった幼馴染であっても、それが自分の苦手な見た目になっていた以上はあまり関わり合いになりたくないのが本音。あくまで知らないふりをして過ごすことを決めたのである。

 なお、沙雪が明確にチャラ男を苦手だと意識するようになったのは中学生になってから。それを知らない亮一が転校先でそういうファッションを好んでするようになったのも無理はないと、沙雪自身理解していた。それでも、怖いものは怖いのである。


 彼の存在がいつ沙雪の恋愛事情に動きをもたらしたのかといえば、それは今日今この時であった。
 好きな人の好きな人が、亮一を好きであると沙雪は今ここで知った。ならばたとえこのゲームに負けても相手の二人がくっつくことで、優也の気持ちが自分に向く可能性が出てくるということだ。
 勝っても負けても得するゲーム。だがどうせなら勝って確実に優也と付き合いたいし、負けた場合全裸にされるというリスクもある。
 おどおどしていながらも、沙雪はしっかりと前を見てこの戦いに臨んでいた。



 下着姿となった真智は、そのダイナマイトボディを惜しげもなく亮一に見せつけていた。
 当然目を奪われたのは亮一のみならず、優也もであった。沙雪にとっては、胸が苦しい展開である。

(あれは反則すぎるよ……)

 色気の欠片もない自分の平坦すぎる胸と比較して泣きたくなるが、このゲームにさえ勝てば一発逆転できるのだ。
 今回で残り枚数は五分五分となり、次の一戦が勝負の行方を左右すると言っても過言ではない。

「では五戦目と参りましょう。今回は進藤君からのスタートです。ですがその前に」

 頃合いを見てルシファーはゲームを再開。だがルーレットを回す前に、ルシファーは一つ魔法を使用。四色が四つずつ並んだ正方形のシートから一列が消え、四色が三つずつ並んだ長方形のシートに変化した。脱衣ゲーム恒例、半分くらい終わった辺りでの難易度上昇である。

「ここからは一列減らしたこちらのシートを使用していただきます。シートが狭くなった関係上、当然身体の接触も増えるでしょうが……まあ頑張って下さいね」
「お、おい待てよ! いきなりそんな……」

 亮一の抗議を無視してルーレットは回り出す。停止したルーレットは、左手が青と右足が黄色を指し示した。
 亮一は勃起を隠すのも兼ねて真智に横を向けてしゃがみ、指定の場所へ無難に手足を置いた。

(く……冗談じゃない!)

 ただでさえ色々と大変なのに、これではますます先が思いやられる。
 次の優也は、左足が青で左手が黄色。これも無難に置く形をとると、丁度亮一と向き合う格好となった。お互い勃起していて気まずい状態の上に、優也は当然視界に真智の下着姿も入る。
 鼓動が高鳴る中、真智はルーレットの指示に従い右手左手共に赤に置いた。またも自分の横に並んでこられた亮一、そして下着姿の真智が正面にやってきた優也共に、脈がますます早まったのは言うまでもない。

(ヤバいヤバい……真智のこんな……)

 こんな時に限って元来のがさつな性格が出ているのか、脚を開いた姿勢でしゃがむ真智はショーツのクロッチ部分まで優也にはっきりと見えてしまっている。
 ずっと好きだった幼馴染のそんな姿を見られるのはいい思いをしているといえばそうだが、このゲームでキューピッドがくっつけようとしているのが自分と真智ではないことを考えるともどかしくなる。
 愛憎入り混じった感情の優也が様々に表情を変えてゆくさまを見ていた沙雪もまた、嫉妬心に苛まれ同じ気持ちになっていた。だが沙雪のことなど目にも入らない今の優也には、それに気付く由もない。
 そうしている間に沙雪への指示が出て、右足と左足を共に青に、あえて陸上部ペアに背を向ける形で置いた。今回は両方とも足であるため、一番楽な姿勢とも言える。



 これで全員一手目が終わり、再び亮一へ。ルーレットの指示は左手が緑で右足が黄色。亮一は右足を置いた位置は変えないまま、体の向きを百八十度回転させ他の三人に背中を向ける格好で左手を青から緑に置き換えた。

(寺井の体が見えなければまだ……)

 そう思ってはみたものの、背後にあのダイナマイトボディがあると考えたらそれはそれで悶々とさせられた。

 続く優也は両足が黄色。これで黄色の列は全て優也で埋まる形になる。沙雪の右足と触れないように気を遣いながら、左手を黄色に置いたまま両足を斜め右上の黄色に移動させた。姿勢はさして辛いものではない。

 その次は真智の番。ルーレットの指示は、左足が青で右足が緑。背後を振り返った真智は、亮一のいる右下方向に右足を伸ばしながら声をかけた。

「ごめん進藤君、ちょっと腰上げて」
「え?あ、ああ」

 亮一が言われた通りに腰を上げるや、真智は長い脚を亮一の股の間に通してその向こうの緑に爪先を置いた。亮一がぎょっとしたのは言うまでもない。
 左足は左手すぐ下の青に置き、これで真智も無事達成。流石身体は柔らかく、この状態でもピシッとバランスを保っている。

 続いては沙雪の番。ルーレットの針が止まったのは左手が青と右足が黄である。沙雪はシートとルーレットを何度も交互に見て、困った顔をした。

「あの、黄色にもう置けないんですけど……」
「ええ、こういう状態が来たので説明しておきましょう。同じ色が全部埋まった状態でその色に置くことが新しく指示された場合に限り、既に手足の置かれている円に一緒に置くことになります」

 その説明を聞くと、優也は自分の左手を半分ほど外側にずらした。

「立松さん、ここ、僕の左手のとこに右足を置いて」
「あ、ありがとう」

 沙雪は優也の手を踏まないように慎重に右足を動かすと、しゃがんで先程まで右足を置いていた場所に左手を置いた。
 このくらいの体勢でも、やっているのが沙雪だとなかなか辛そうに見えてしまう。

「大丈夫? 体勢辛くない?」
「うん、大丈夫……」



 ゲームは三手目に入り、再び亮一に番が回る。股下を通る真智の脚が気になってそわそわしていた亮一は、自分の名前を呼ばれてはっと我に返った。
 指示は左手赤と右手黄。これがまたどちらも曲者である。まず左手は、シートの端に体を置いている亮一が逆端まで手を伸ばさなければならない。自分一人ならば右足を軸に身体の向きを回転させれば済むのだが、股下を通る真智の脚があるために本来フリーであるはずの左足も下手に動かせない。
 そして右手はといえば最寄りの黄色は丁度真智の太腿の下にあり、手を入れるのが憚られる位置なのである。

「進藤君? あたしは大丈夫だから、気にしないで動いて」
「ああ」

 肯定の返答はしたものの、本音を言えば「そう言われても」という心境であった。
 とりあえず返事をした以上は動かねばならないし、亮一は慎重に左足を浮かせて真智の右脚を跨ぎ、真智に背を向ける格好に体の向きを変更。左手を赤に置くと、顔を後ろに向けて背後を確認しながら右手を恐る恐る真智の太腿の下の黄色へと挿し込んだ。
 接触無しに無事指示を達成できて、亮一は一安心。

 続いての優也は、左足緑と左手青。まずは右手を動かそうとした優也だったが、ここで一つ問題が。この位置から左手を青に置くには、沙雪の股下を通す必要があるのである。

「あの、ごめん立松さん。手を脚の間に通すことになるんだけど……」
「あっ、ど、どうぞ……」

 沙雪の承認は取った。優也は唾を呑み、沙雪の右足を避けながら左手を浮かせる。極力接触しないよう慎重に腕を動かし、左斜め後ろの青に手を置いた。左足はすぐ前の緑へ。
 沙雪の脚が棒きれのように細いため、触れないようにするのは難しいことではなかった。だけどもそれはそれとして、ついドキドキさせられ意識させられてしまうのは致し方なし。

 男子二人が終わって次は真智の番。指示は左足赤と右手黄である。真智はまず埋まっている赤を空けるため、左手に体重をかけて右手を左脇に通し斜め後ろの黄色へ。一瞬亮一の右手に指が触れかかったが、亮一の方が先に退いた。そうして空いた赤に左足を移動する。
 右手左足共に内側に曲げた複雑な姿勢となり、運動神経の良い真智でもなかなか辛く感じる状態である。真智だから耐えられているのであり、これが沙雪だったらとっくに倒れていることだろう。

 その沙雪はといえば、左手赤と左足黄が出ていた。後ろを振り返り、足を置ける黄色の位置を確認。すると沙雪は、思わずある一点に目が向いてしまったのである。
 優也はふと違和感に気付いた。何か妙な視線を感じる。そうである。後ろ側に手を置き腰を浮かせた今の姿勢は、男性特有の反応を示している股間が嫌でも表に出てくるのである。
 優也が首を後ろに向けると、顔を赤らめ口元をもごもごさせながら優也の股間を凝視している沙雪と目が合った。

「……ぴぃぁ」

 スケベな視線を向けていることがバレて、奇声や悲鳴と言うにはあまりにも小さな声が沙雪の口から漏れた。
 彼女のイメージ的には目の前で男子が股間にテント張っていたら目を逸らしそうなものだが、むしろガン見していたことに優也は驚きを禁じ得ない。
 沙雪はばつが悪そうに目を泳がせ、頭から湯気を沸かせていた。そしてはっとして慌てて左足を優也の腰の下の黄色に入れようとしたその時だった。
 勃起した股間を女の子から注視されることに耐え難くなった優也は、フリーになっている右手で右手で股間を覆った。
 だがそれが良くなかった。体の支えを一つ失ったことでバランスを崩した優也は、沙雪が足を入れる前にシートに尻をついたのである。

「小森君、アウトー」
「あ……ご、ごめん……」

 赤らんだ顔が一転して青くなり、優也は身を強張らせた。
 対する亮一は、助かったと胸を撫で下ろす。が、それからすぐにこちらも顔を青くした。

(勝ったってことは、これから沙雪が脱ぐってことだよな……?)

 心臓が爆音を立て酷く汗が噴き出すが、視線は沙雪から離せない。



「では立松さん、服を脱いで下さい」
「……はい」

 皆の注目が集まる中躊躇いながらも立ち上がった沙雪は、意を決してTシャツの下に両手を入れた。少しくすんだ白無地の芋ダサショーツを一気に下ろして足を抜くと、Tシャツの皺を手で伸ばし股間の辺りと思わしき場所に申し訳程度に手を置いた。

「こ、これでいいですか」
「ええ」

 これにて残りはTシャツ一枚。だが少なくとも表面的な見かけは何も脱いでいない状態から何も変わっていない。
 しかし男子達にとっては、決して軽く流せるような状態ではないのだ。

(立松さんが、ノーパン……)
(沙雪が……ノーパンッッッ!!!)

 唖然とする優也。胸の高鳴りに嫌な焦りが加わり、情緒がどうにかなりそうな亮一。その亮一を、下着姿の真智は後ろから見つめていた。

(あと一回……あと一回相手がミスすれば、あたしは進藤君と付き合えるんだ)

 願いが叶う瞬間が、着々と近づいてきている。自分の努力が遂に報われるのだ。なのにどういうわけか、真智は胸の奥にチクリと刺さるような感覚を覚えた。

(進藤君は、ちゃんとあたしを好きになってくれるのかな……? 今もあんなに沙雪ちゃんのことばかり見てるのに……)

 それは脱衣ゲームの本質。たとえゲームに勝利したとしても、洗脳のような手段で好意を持たせられるわけではないのだ。
 勝てばカップル成立とは、参加者を奮い立たせるための方便に過ぎない。本当に二人を結ぶものは、参加者自身の相手に好かれようとする努力なのである。

(ただ形だけ付き合うんじゃ、嫌。ちゃんと進藤君に、あたしを好きになって欲しい)

 真智はぐっと両手の拳を握る。
 彼女が本質に気付いたことを表情で察したルシファーは、ポーカーフェイスでいつつも内心では微笑んだ。
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