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第四章

第129話 淫魔の授業はセックスです

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 ルシファー先生初めての授業。生徒達は、体操服に着替えて体育館に来ていた。
 整列した生徒達を見るルシファーの視線が、一人だけ制服を着たままのリリムに向く。

「リリム、体操服はどうした?」
「ふふーん、ボクの魔法を先生に見せたくってねー」

 そう言って一歩前に出たリリムの足元に、光る魔法陣が現れる。着ている制服が弾け飛んで一瞬リリムが全裸になったかと思うと、その身に学校指定の体操服が纏われた。
 ちなみに淫魔学校の女子体操服はブルマである。それもお尻の割れ目の上辺りから生えた尻尾を出せるように、鼠径部を露出するくらいのローライズ状となっている。尤も、男子のハーフパンツも同様に股上が浅く作られているのだが。

「きゅぴーん。どうどう? ボクの十八番、お着替え魔法! カワイイでしょー!」
「ほう、領域外でこれだけの魔法を使うとは。俺が学生だった頃には考えられなかったことだ」

 ルシファーがそう言うと、ジークがすっと挙手した。

「全てルシファー先生のおかげですよ。ルシファー先生の積極的に領域外で魔法を活用するスタイルに感化されて淫魔が使うための魔法の研究が進み、今では学校で当たり前に習うようになったんです」
「ああ、それで種族全体の能力が底上げされたならそれは良いことだ。では諸君、早速ではあるが君達の実技を見せてもらう。俺の指定した二人で組んで、男子から攻めろ。まず一組目は……そうだな、ジークとルーシャ。二組目は……ロイドとヒルダ。三組目はギルバートとメイアだ」
「ボク余っちゃった! てことはボクの相手は先生!?」

 リリムが期待に満ちた表情でルシファーの顔を見る。

「生憎だが子供とする趣味は無い。これが終わったら次はパートナーを替えて女子が攻める番だから、お前はそれまで見学だ」
「えーっ、前の先生は余った女子の相手しくれてたのにー!」
「俺には俺の教育方針がある。前のと同じやり方だとは思うな」
「むー……八百年前のお爺ちゃんのやり方とか押し付けられても困るんですけどー」
「八百年前に俺の担任だった教師は、普通に生徒と行為をする奴だった。俺はあれのやり方を踏襲するつもりはない」
「だから何なのー? むー……」

 リリムが頬を膨らませている間に、男子三人はそれぞれパートナーの女子を脱がし始めていた。王子様系、ワイルド系、クール系と各属性を取り揃えたイケメン三人衆のお手並み拝見である。
 ルシファーが注目するのは、ルシファーを尊敬していると語った王子様系美少年のジーク。パートナーは爆乳ボーイッシュのルーシャだ。
 ジークの愛撫は優しく丁寧で繊細。ルーシャはくすぐったそうに身をよじって悶え、とても大きな胸をぷるぷると揺らした。ジークはその胸にそっと触れて敏感な所を擦り、不敵な微笑みを湛えながらルーシャと見つめ合い濃厚なキスを交わす。
 女の子の理想を詰め込んだようなセックスに、彼にはなかなか見所があるとルシファーも評した。相手の好みを瞬時に見抜きそれを的確に実行する変幻自在のプレイスタイルがルシファー最大の持ち味だが、こういうセックスを求めている女性というのは実際多いものなのである。この方向性を極めていけば、間違いなく彼は優れたインキュバスになると確信が持てた。

 続けてルシファーが視線を向けたのは、三人の中で最も雄を感じさせるワイルドな雰囲気のロイド。パートナーは一見サキュバスらしからぬ清楚で上品な雰囲気のヒルダである。

「おらっ、エロいケツしやがって!」

 体育館の天井に響くのは、白いお尻を平手で叩く音。ロイドは言葉責めを交えながらのスパンキングで、サディスティックに攻めてゆく。ヒルダが「痛っ」と声を上げ涙目で振り返っても手を止めないが、叩こうとしたところを手で振り払われると流石にストップした。
 指を割れ目に挿れていじくる方向に切り替えたロイドであるが、そこからそう時間も経たない内にいきり立った巨砲を割れ目へとねじ込んだ。

 ルシファーは少々顔を顰めつつ、次のペアへと目を向ける。知的な印象のクール眼鏡男子のギルバートと、むっちり気弱なメイアのペアである。
 ギルバートは真顔かつ無言のまま、メイアに跨り大きな胸を揉みしだいている。一方のメイアは頬を染めつつもそっぽを向いており、行為への集中を欠く。このマグロぶりは劣等生と言われても致し方なしと、ルシファーは溜息。
 ギルバートは表情に焦りと苛立ちを見せ始めていた。ここで乳首責めに切り替えると、メイアはびくっびくっと身を震わせてようやく反応らしい反応を見せた。しかし声を出すのを堪えているのは変わらずのようである。

 程なくして、ロイドら以外の二組も本番を開始。強く腰を打ち付ける男が三つ、体育館の天井に響く。
 ルシファーがあまり機嫌のよくなさそうな顔をしながら三組の様子を見ていると、突然その眼前に女性器が現れた。

「せんせー、せっかくだからボク達もしようよー」

 いつの間にか服を脱いで素っ裸になっていたリリムが脚を大きく広げた状態で翼を羽ばたかせルシファーの眼前に浮かび、女の子の大事な所を指で左右に開いていた。ルシファーは全く関心を持つことなく、リリムを手でどけた。

「邪魔だ。静かに見学してろ。よし、全員そこまで。行為を止めて整列。これより評価を告げる」

 ルシファーがストップをかけると、生徒一同は驚くほどあっさりと行為を止めルシファーの指示に従った。少しは抵抗して粘るかと思っていたルシファーは、逆に拍子抜け。

「まずはジーク。前戯については高く評価する。肉体的な技術ではまだ未熟と言えるが、精神的に気持ち良くする技術は優れていると言えるだろう。だが本番が始まってからはどうした? それまでの精神面重視の優しく愛でるようなセックスから一転して稚拙に腰を打ち付けるばかりになった。ペースの変化を上手く活用するでもなく、それまでのプレイを阻害し自分の持ち味を殺したようにした見えなかったが」

 褒められてからの急転直下。辛辣な言葉に、ジークの表情が曇る。

「ボルテックス先生――前の先生が、そうしろと言ったんです。これが一番相手を気持ちよくできると」
「全員体位は違えどほぼ同じ腰の動かし方をしていたが、それも全て前の担任に矯正させられたということか?」

 ルシファーが尋ねると、他の二人を含む男子三人が揃って頷いた。

「こういうプレイで攻めると決めたなら最後までそれを一貫すべきだ。最初は甘やかして後から激しいプレイに変えるのは上手くやれれば効果的だが、お前のような経験の少ない奴がやるべきじゃない。お前はお前の得意なプレイを極めろ」
「は、はい!」
「次にロイド。前戯の時間が短すぎる。何故あんなに早く挿入した?」
「いや、ボルテックス先生が、お前はチンコがデカいからそれだけで十分イかせられると……」
「馬鹿野郎。お前はデカいんだからむしろ念入りな前戯でしっかり濡らさないと痛いばかりで気持ち良くさせられねえんだよ。ドSぶるのは勝手だが相手を気持ち良くさせられなかったらただの暴力だ。それで困るのは魔力を得られないお前自身だぞ」
「……すいません」

 ボロクソに言われて意気消沈するロイドにメイアは声をかけようとするが、ルシファーがすぐに続きを言い始めたので踏みとどまった。

「どの程度の痛みが快感になるのかは人それぞれ違う。相手をよく観察しそこを完璧に見極めることが良いSMプレイをするコツだ。独りよがりに動かず相手の立場になって考えろ。持って生まれたお前の才能を生かすも殺すもお前次第なんだ」
「は……はい!」

 ロイドは顔を上げ、こぶしに気合を籠めながら頷く。

「最後にギルバート。つまらなそうにセックスをするな。相手もお前を見ているんだ。お前の態度を見たら興が削がれるのは当然だろう」
「これは相手が人間、即ち我々の敵をを想定した訓練ですよ。俺は自分のテクニックに淫魔族の誇りを背負って戦い屈服させているんです。常に自分が優位であるべきで、そのためにポーカーフェイスを貫くのは当たり前でしょう」
「それも前の担任の受け売りか?」
「いいえ、俺自身の考えです」
「はっきりとした自分の考えを持つのは良いことだ。後はそれを貫けるだけの実力だな。幸いお前は指の柔軟性と動きの精細さは一際優れている。慢心せず腕を磨き続ければ、いずれは本当に誇りを背負えるほどになるだろう」

 ギルバートはルシファーと目を合わせず、返事もしなかった。

「では、次は女子から攻めてもらう。ペアはまず、リリムとジーク。次にルーシャとロイド。そしてヒルダとギルバートだ。メイアは見学とする」
「やったー! ボクの番!」

 退屈でうずうずしていたリリムは、ぴょんと跳ねて笑顔で拳を空に突き上げた。
 メイアが胸と股間を隠しながらそそくさとこちらに来ると、リリムは彼女に声をかけた。

「あ、メイアちゃんメイアちゃん。この先生誘ってもうんともすんとも言わないんだよ。メイアちゃんも試してみなよ」

 リリムの提案に、メイアは「ぴえぇ……」と情けない声を発した。そしてルシファーの方をチラチラと窺いつつ、掌を少しずらして胸の先っぽを少し見せてみる。
 が、やはりルシファーは無反応。メイアは「恥ずかしい……」と呟いてまた隠し、身を縮こませてしまった。
 そんなメイアの方をチラチラと見るのはロイドである。

「何ぼさっとしてんだよロイド」

 隙だらけなロイドの竿を、両胸で挟むルーシャ。突然のことに驚いたロイドであったが、一先ずはそれを素直に受け入れた。
 残りの二組も、行為を開始したようである。

「よろしくねー、ジーク君」
「こちらこそ、リリムさん」

 互いに挨拶を交わすと、リリムはすぐさまジークの竿を小さな舌で舐め始めた。

「始めましょうか、ギルバート君」
「……フン」

 ヒルダに耳元で囁かれたギルバートは、平静を装いつつも身体から力が抜けてその場に崩れ落ちた。

 前戯を十分に楽しみルシファーにテクをアピールした後、各ペアは本番に入る。そこでふと、ルシファーは気付いた。

「メイア、女子は男子と違って腰の動かし方等に画一化された癖が見られないが……」
「私達、ボルテックス先生からあまり技術を教えてもらえなかったんです。男子に自分の技を教えるための道具くらいにしか見られてなかったみたいで……それで皆、自主的に学習して自分なりのやり方を確立させていったんです」
「なるほどな……ボルテックスとの行為は気持ち良かったか?」
「いえ、それほどは……大人とのHってもっと凄く気持ち良いのかと思っていましたが、意外と大したことありませんでした」

 淫魔の教育職は、慢性的な人材難を抱えている。人間界帰りとなった淫魔はもう人間界で十分働いたのだからと魔界に帰ってまで働くことを拒み、ハーレムでスローライフすることを望んでばかりいるのである。
 それ故に一人の教師が異性も含めた生徒全員を指導することが多く、ましてやそれが異性側のテクニックに精通していない者であることも往々にしてあるのだ。
 ルシファーの前任者であるインキュバス“雷帝のボルテックス”はまさにそういう人物であり、あまつさえ男子に対しても自分の稚拙な技術を最も優れたものだとして模倣させることを強要していた。
 碌に何も教えなかったことがかえって女子達の自習を促し、男子よりも女子の方が技術面で優るようになったのは皮肉と言うべきか不幸中の幸いと言うべきか。

「いぇーい、射精一番乗りー!」

 そうこうしている間に、リリムがジークを射精させたようである。

「どうだった先生、ボクのテクニック。ボクとしたくなったでしょー!」

 幼げな容姿とは裏腹に、騎乗位で艶めかしく腰を動かしていたリリム。ルシファーから見ても、そのテクニックは生徒達の中でずば抜けていた。
 やがて他二組もフィニッシュすると、ルシファーが終了を告げる。

「そこまで。では評価を告げる。まずリリム。技術面では非常に優れている。前戯本番共に高く評価しよう。今後もこの調子で技を磨いていくといい。だが自分が一番優れているという慢心はいずれ破滅を招く。それだけは心得ておくように」
「はーい」
「次にルーシャ。積極的に攻めていく姿勢や笑顔で楽しそうに行為をする姿は良い。技術面では勢い任せで行き当たりばったりな部分が目立つ。そしてヒルダ。初めは丁寧だったが途中から早く射精させようと焦っている様子が見られた。それはせっかくのお前の持ち味を殺すものだ」

 ルシファーからの的確なアドバイス。その内容に元から薄々自覚のあった二人は、俯きながら話を聞いていた。

「あの、私は……」
「メイア、お前はマグロすぎる。恥ずかしくてもちゃんとした反応はしてやるべきだ」
「うぅ……」

 終わってみれば欠点をビシバシ指摘されて、生徒達は意気消沈。体育館はすっかり静まり返っていた。

(しまった、厳しくしすぎたか)

 教師としては全くの素人であるルシファー。生涯で教えを受けた教師はウルスラとギガンティスの二人だけ。授業も手探りでやらざるを得ないのだ。
 だがそれでも、教師をやると決めた以上はルシファーにできることをひたすらやるしかない。
 幸いにも、生徒達はいずれも伸ばすべき長所と克服すべき短所がはっきりとしている。ここから彼ら彼女らをどう指導していくかが、史上最強淫魔の腕の見せ所なのだ。
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