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第三章
第87話 まねっこダンスゲーム・1 ~ダンス少女VSアイドル志望JC~
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あれから一週間後。真世は信司も招き、改めて麗の家を訪ねた。
「おはようございますREIさん、にょきにょき仮面さん。それと……灼熱のダンサーさん、でしたっけ」
「せっかくだから真世ちゃんのダンス、幹人にも見せてあげようと思ってあたしが呼んだの。こいつもダンサー志望だからさ」
「どうも、よろしく」
「お二人も、さっきまでダンスの練習を?」
「まあね」
二人ともTシャツとハーフパンツの練習着姿で、少し汗をかいた様子も見られる。
「宮田さんと畑山君の練習を見させて貰ったけど、二人とも更にキレが増しておりますな。ところでまよさん、僕もこうして呼んで頂けてよかったのですか?」
「勿論ですよ! 私の上手くなったダンス、にょきにょき仮面さんには真っ先に見せたかったんですから!」
ダンス部屋に向かう途中の廊下。麗は玄関での真世の様子が気になり、世間話ついでに質問してみた。
「そういえば真世ちゃん、矢島君とはどうなの?」
「勿論、毎日一緒に彩夏ちゃん語りしてますよ。流石はにょきにょき仮面さん、私の知らない知識も沢山持ってて凄いです。それに、彩夏ちゃんと同級生だったからこその話とかも……」
信司との関係の話を聞きたかったのだが、真世から語られたのは彩夏の話。所詮は単なるオタク仲間ということか。恋の予感を思わせる先程の態度はまやかしだったのか。麗はちょっとがっかりである。
「じゃ、早速見せてもらおっかな、真世ちゃんの上手くなったダンス」
そう言って麗がダンス部屋の扉を開けると――そこにはミラーボールの輝く煌びやかなダンスホールがあった。
「え、何これ」
そう声を発したのは、家主であるはずの麗である。
「模様替えですか?」
真世が尋ねると、麗は首を横に振る。
いつの間にか廊下に繋がる扉は消えていて、四人はこの場に閉じ込められていた。そしてターンテーブルから鳴り響く軽快なビート。
「ようこそ愛天使領域へ。私は愛の天使、キューピッドのルシファー」
ターンテーブルから曲を流すのは、漆黒の翼を持つ銀髪美形のDJ。そしてミラーボールの下では、鮮やかなピンクのレオタード姿の小悪魔美少女がポールダンスを踊っていた。
「ボクはアシスタントのリリムちゃんでーす!」
「えっ、凛々夢? 何、これ?」
「やっほー麗ちゃん、昨日の部活ぶりー。どうどう、ボクのこのレオタード。カワイイでしょー」
自宅の中に突然異常な光景があって困惑する麗の前に現れたのが、同級生であり部活仲間。麗の頭はますます混乱させられたのである。
本日の参加者四名のうち真世を除く三名は、以前臨海学校中に愛天使領域に召喚されている。しかしいずれもその時の記憶を全て消されているため、実質今回が初めてのようなものだ。
「これより皆さんには、脱衣ゲームに参加して頂きます」
DJルシファーはターンテーブルから飛び立ち、麗達四人の前に降りた。
「え? だ、脱衣ゲーム……? ていうかここ、どこ? あたしの家だよね?」
麗の質問に答えるつもりはなく、ルシファーは続ける。
「まずは今回の参加者をご紹介致しましょう。赤コーナー男子、二年A組サッカー部(幽霊部員)、畑山幹人! 同じく女子、二年B組新体操部、宮田麗Cカップ! 青コーナー男子、二年B組将棋部、矢島信司! 同じく女子、千代下中学校三年二組帰宅部、君島真世Dカップ! こちらのペアで、ゲームを行って頂きます! 本日のゲームは、まねっこダンスゲームです。それではルールを説明致しましょう」
ルシファーはリリムと、共に空中を移動。二人は三メートルほど離れて、向かい合って立つ。続いて参加者の四人も宙に浮いて移動させられ、ルシファーの両サイドに女子二人、リリムの両サイドに男子二人が下ろされた。それぞれパートナー同士で向き合う形である。
「これから五秒間のパーカッションに合わせて、私ルシファーとあちらのリリムが踊ります。男子は私、女子はリリムの振り付けをそれぞれ記憶して下さい。それが終わると、次は皆さんが我々を真似て踊る番です。私とリリムはそれぞれ違う振り付けで踊ります。つまり自分の正面にいるパートナーは自分とは別の振り付けで踊ることになるため、そちらにつられないようご注意下さい。皆さんが踊っている間、私とリリムはそれを採点します。採点の基準は、手本通りの振り付けをできているかです。ダンスの上手い下手は基本的に採点とは関係ありません。採点は減点方式となります。最初5点から振り付けを間違える度1点減点、間違えた状態が一秒続く毎に更に1点ずつ減点されていきます。正誤の判定はある程度甘く取りますが、あまりに手本とかけ離れすぎていたらアウトです。曲が終わった時点でその回のスコアが確定。ペアの男女のスコアを合計し、多い方がその回の勝者です。負けたペアの女子は、服を脱がなければなりません。脱ぐ部位はトップス、ボトムス、ブラジャー、ショーツの四ケ所。それを順番に脱いでいき、最初の一回目では上半身をブラジャー一枚になるまで脱がなければなりません。どちらかのペアが四敗して女子が全裸になった時点でゲームは終了。服が残っている方が最終的な勝者です」
「いやいやいやいやちょっと待って。私やるとは一言も言ってないんだけど!?」
「残念ながらゲームが終わるまで元の場所には帰れません。強制参加です。ただし、勝ったペアには私が夢を叶えてさしあげましょう」
ルシファーの説明が一区切りついた所で麗がツッコむと、ルシファーはすぐさま返答。そしてその返答に強い反応を示したのは、幹人と真世だ。
(つまりこれに勝てば、俺は人気ダンサーに……? しかも相手は素人二人、こんなん負ける要素ねーじゃんか!)
(勝てば、私の夢が……)
「これはチャンスですぞまよさん! 勝ったらアイドルデビューできるではないですか!」
だが信司がそう言うと、真世は俯き微妙な反応。
「どうかされましたか」
「あっ、いえ……何も」
「さて、それでは早速ゲームを始めましょう」
夢が叶うという言葉にざわつく中で、ルシファーは強制的に開始を宣言。この場に軽快なパーカッションが流れ始めた。四人の参加者は、慌ててそれぞれ自分の覚える振り付けに注目した。
リリムは軽やかにステップを踏む、キュートでポップなアイドル系のダンス。最初の一回目ということもあり、振り付け自体は難しい動きも無くシンプルだ。
対してルシファーは何を思ったか、幼稚園児のお遊戯会と見紛うが如き稚拙な踊りを始めた。銀髪長身の美男子が大降りに掌をパンパンと叩きながら笑顔で雑な足踏みをする姿は、見る者の困惑を誘う。
(最初の一回だから簡単なのをってのはわかるが、これは流石に俺らを馬鹿にしすぎじゃね?)
五秒が経ってお手本は終了。ルシファーとリリムはまっすぐ立った姿勢に戻る。
「はい、ここまで。皆さん覚えましたね。では、早速やって頂きましょう」
再びパーカッションが流れ始め、四人は慌てて踊り始めた。頑張って振り付けを思い出しながら拙い動きで踊る真世に対して、麗は戸惑いこそあれどきびきびとしたキレのある動きを見せる。信司はこの間の抜けた踊りが妙に様になっており、そして幹人は。
(こんなダッサい踊りを何で俺が……)
あまりやる気が出ず気だるげに踊る幹人。五秒という短いようで長い時間が過ぎると、ルシファーは「そこまで」と声を発した。
「ではスコアを発表します。まず矢島君、4点。途中までは上手くできていましたが、足踏みが一回足りませんでした」
(これだけ簡単なダンスを間違えてるようなら、俺達に負ける要素は無いな)
最初から挫いている信司を見て、幹人は余裕綽々。次はリリムが、得点を発表する。
「で、真世ちゃん、3点。最初の手の動きが上下逆だったのと、最後の辺りで脚の動き矢島君につられちゃってたので2点減点ねー」
「ああ~」
おちゃらけた様子のリリムであるが、振り付けの間違いはきっちりと見ている。
「二人のスコアを合計して、矢島君&君島さんペアは7点です。では続いてもう一方のペアを。まずはリリムから」
「はーい! 麗ちゃんは……5点! パーフェクトおめでとう!」
「よしっ」
「いやー、ボクの可愛いダンスを完コピしてくれてるのを見るのは楽しいねー」
「そりゃ間違えたら脱がされると思ったら気合いも入るよ」
無事完遂して安心した麗。その正面に立つ幹人も、自分のことのように得意げだった。
(まあ、麗なら当然だろう。それで俺もパーフェクトで圧勝だな)
「畑山君、0点」
が、直後にルシファーから発せられた言葉に耳を疑い、ぎょっとしてルシファーの顔を見た。
「は? いや待って」
「畑山君、最初に出す足は左なのに右から出していましたね。そしてそのまま最後まで手本と逆の足で足踏みし続けていたため、0点です」
幹人は絶句した。幹人は丁度手本と鏡写しになる形で、逆の足を出していたのである。
このゲームは振り付けを間違えている時間が続く度減点されてゆく。最初に一つ間違えた時点で全てが駄目になる可能性を秘めた、恐ろしいルールだ。
だがそれ以上に、そもそも幼稚なダンスだと舐めてかかったことが最大のミスだと言わざるを得ない。
恥をかかされた幹人は、拳を震わせる。
「合計して5点。よって今回の勝者は、矢島君&君島さんペアです」
「お、おお。勝ちましたねまよさん」
「そうですね」
意外にも勝ててしまったことに、当の信司と真世は喜びつつも驚いている様子だった。
「というわけで宮田さん、早速脱いで頂きましょう」
「え、ホントに脱ぐの!?」
「勿論です」
「す、すまん麗! 俺のせいで!」
「うー……」
掌を合わせて頭を下げる幹人に、麗は唸り声を上げた。
脱ぐのを渋る麗に、ルシファーはいつもの煽り文句。
「ちなみに自分で脱がない場合は、私が魔法で脱がせます」
「ええー……最悪なんだけど……」
観念してTシャツを捲り上げる麗。幹人はどぎまぎして目を逸らそうとするも、体が言うことを聞かず視線は麗へとまっすぐ向けられていた。
細く見えて適度に鍛えられている、引き締まった上半身。シンプルなグレーのスポーツブラはさして色気を感じさせるものではないが、好きな女の子の下着姿というだけで既に幹人の下半身は脈を打ち始める。
「……言っとくけど、スポブラはダンス用で普段使いはもうちょっとお洒落なの着てるから」
頬を染め幹人をじとっと横目で見つめる麗は、恥ずかしげに両掌を胸に当てた。
「では、二回戦を始めましょう」
「タンマ! もうちょっと待って!」
「駄目です」
一時停止を求める幹人に、ルシファーはきっぱりと拒否。股間の隆起を治める時間など、与えてはくれないのだ。
すぐにパーカッションが鳴り始め、ルシファーとリリムは踊り出す。
今度のリリムのダンスは、可愛い路線だった先程とは一転。麗の一番得意なヒップホップで陽気に舞う。
一方のルシファーはと言えば、踊る阿呆に見る阿呆、という歌が聞こえてきそうな阿波踊り。これには幹人も呆れた。
(またこういうやつかよ……)
だけども踊らにゃ損々である以上は踊らざるを得ず、幹人はしっかりとこの踊りを瞼に刻む。
そしていよいよ参加者四人の踊る番。正面のパートナーの振り付けにつられないように、手本と鏡写しになって逆の手足を出さないように、一回戦で起こったミスに気を付けて踊る。
両手を上げなければならない都合上、テントを張った股間を隠すことのできない幹人は非情に恥ずかしい思いをさせられる。それも目の前で好きな女の子がブラジャー丸出しで踊っているのだから、いつまで経っても勃起は収まらないのである。
だがその幹人から視姦されている麗はといえば、先程の恥じらいから一転してまるで露出を気にしていないかの如く、決め顔を崩さぬままきびきびした動きでクールに舞う。
(こいつ、俺に見られてるのが気にならないのか?)
スポーツブラ程度なら、このくらいの布面積の衣装で踊る女性ダンサーはそう珍しくもない。
それに思い起こせば麗はビキニ姿やレオタード姿を平気で幹人に見せてくるので、気にしているのは自分だけなのではと幹人を焦らせる。
(やっぱ俺、こいつから男として意識されてないよな……)
パーカッションが止み、踊る時間はそこまで。ルシファーとリリムは、得点の発表に入る。
「ではまず矢島君、4点。最初に足がもつれたので1点減点ですが、その後はよくできていました。次に畑山君、5点。おめでとうございます」
(こんなん踊れても別に嬉しかないんだがな)
複雑な気持ちになりつつも、とりあえず信司には勝った。後は女子の得点である。
「真世ちゃん、3点。頑張ってはいたんだけどねー、ちょっと付いていけてないとこがあったり、また矢島君につられちゃってたとこもあったね」
「ああー……」
「そして麗ちゃんは、また5点満点! 流石!」
「今回はあたしの一番の得意分野だからねー」
(俺だってヒップホップは一番得意なんだよ。俺にも躍らせろ)
(あはは……幹人ってば何考えてんのか丸わかり。あたしは阿波踊りも好きだけどなー)
女子だけ真っ当に格好良いダンスを躍らせてもらえて、幹人は不服が顔に出てくる。その幹人の仏頂面を、麗は苦笑いで見つめていた。
「スコアを合計して、10対7。よって今回は畑山君&宮田さんペアの勝利。君島さんは服を脱いで頂きます」
「あぅぁ……」
完敗を喫した真世は、瞳を潤ませる。
だが目の前で麗が脱ぐ姿を見ている以上、自分だけ脱がないわけにはいかない。あまり抵抗することなく、素直にTシャツを捲り上げた。
今日の真世のブラは、白地にピンクの水玉。中学生らしさを感じさせる可愛らしい一品。だけども胸の中央にはしっかりと谷間を作っており、彼女が決して幼い体型ではないことを見せつける。
(あまり意識してなかったけど、まよさん小柄な割に胸は意外と……)
信司が見つめていると、真世ははっと気が付く。信司は気まずそうに視線を逸らすが、その後真世が頬を赤くして両手で隠したのは意外にも胸ではなくお臍の辺り。
引き締まった腹筋の麗とは対照的な、少しだけお腹の出た自分のプニプニ体型。下着を見られるよりも、そちらを見られる方が真世にとっては恥ずかしい気にさせられるのだ。ましてや今は、すぐ近くに比較対象がいるのだから。
「おはようございますREIさん、にょきにょき仮面さん。それと……灼熱のダンサーさん、でしたっけ」
「せっかくだから真世ちゃんのダンス、幹人にも見せてあげようと思ってあたしが呼んだの。こいつもダンサー志望だからさ」
「どうも、よろしく」
「お二人も、さっきまでダンスの練習を?」
「まあね」
二人ともTシャツとハーフパンツの練習着姿で、少し汗をかいた様子も見られる。
「宮田さんと畑山君の練習を見させて貰ったけど、二人とも更にキレが増しておりますな。ところでまよさん、僕もこうして呼んで頂けてよかったのですか?」
「勿論ですよ! 私の上手くなったダンス、にょきにょき仮面さんには真っ先に見せたかったんですから!」
ダンス部屋に向かう途中の廊下。麗は玄関での真世の様子が気になり、世間話ついでに質問してみた。
「そういえば真世ちゃん、矢島君とはどうなの?」
「勿論、毎日一緒に彩夏ちゃん語りしてますよ。流石はにょきにょき仮面さん、私の知らない知識も沢山持ってて凄いです。それに、彩夏ちゃんと同級生だったからこその話とかも……」
信司との関係の話を聞きたかったのだが、真世から語られたのは彩夏の話。所詮は単なるオタク仲間ということか。恋の予感を思わせる先程の態度はまやかしだったのか。麗はちょっとがっかりである。
「じゃ、早速見せてもらおっかな、真世ちゃんの上手くなったダンス」
そう言って麗がダンス部屋の扉を開けると――そこにはミラーボールの輝く煌びやかなダンスホールがあった。
「え、何これ」
そう声を発したのは、家主であるはずの麗である。
「模様替えですか?」
真世が尋ねると、麗は首を横に振る。
いつの間にか廊下に繋がる扉は消えていて、四人はこの場に閉じ込められていた。そしてターンテーブルから鳴り響く軽快なビート。
「ようこそ愛天使領域へ。私は愛の天使、キューピッドのルシファー」
ターンテーブルから曲を流すのは、漆黒の翼を持つ銀髪美形のDJ。そしてミラーボールの下では、鮮やかなピンクのレオタード姿の小悪魔美少女がポールダンスを踊っていた。
「ボクはアシスタントのリリムちゃんでーす!」
「えっ、凛々夢? 何、これ?」
「やっほー麗ちゃん、昨日の部活ぶりー。どうどう、ボクのこのレオタード。カワイイでしょー」
自宅の中に突然異常な光景があって困惑する麗の前に現れたのが、同級生であり部活仲間。麗の頭はますます混乱させられたのである。
本日の参加者四名のうち真世を除く三名は、以前臨海学校中に愛天使領域に召喚されている。しかしいずれもその時の記憶を全て消されているため、実質今回が初めてのようなものだ。
「これより皆さんには、脱衣ゲームに参加して頂きます」
DJルシファーはターンテーブルから飛び立ち、麗達四人の前に降りた。
「え? だ、脱衣ゲーム……? ていうかここ、どこ? あたしの家だよね?」
麗の質問に答えるつもりはなく、ルシファーは続ける。
「まずは今回の参加者をご紹介致しましょう。赤コーナー男子、二年A組サッカー部(幽霊部員)、畑山幹人! 同じく女子、二年B組新体操部、宮田麗Cカップ! 青コーナー男子、二年B組将棋部、矢島信司! 同じく女子、千代下中学校三年二組帰宅部、君島真世Dカップ! こちらのペアで、ゲームを行って頂きます! 本日のゲームは、まねっこダンスゲームです。それではルールを説明致しましょう」
ルシファーはリリムと、共に空中を移動。二人は三メートルほど離れて、向かい合って立つ。続いて参加者の四人も宙に浮いて移動させられ、ルシファーの両サイドに女子二人、リリムの両サイドに男子二人が下ろされた。それぞれパートナー同士で向き合う形である。
「これから五秒間のパーカッションに合わせて、私ルシファーとあちらのリリムが踊ります。男子は私、女子はリリムの振り付けをそれぞれ記憶して下さい。それが終わると、次は皆さんが我々を真似て踊る番です。私とリリムはそれぞれ違う振り付けで踊ります。つまり自分の正面にいるパートナーは自分とは別の振り付けで踊ることになるため、そちらにつられないようご注意下さい。皆さんが踊っている間、私とリリムはそれを採点します。採点の基準は、手本通りの振り付けをできているかです。ダンスの上手い下手は基本的に採点とは関係ありません。採点は減点方式となります。最初5点から振り付けを間違える度1点減点、間違えた状態が一秒続く毎に更に1点ずつ減点されていきます。正誤の判定はある程度甘く取りますが、あまりに手本とかけ離れすぎていたらアウトです。曲が終わった時点でその回のスコアが確定。ペアの男女のスコアを合計し、多い方がその回の勝者です。負けたペアの女子は、服を脱がなければなりません。脱ぐ部位はトップス、ボトムス、ブラジャー、ショーツの四ケ所。それを順番に脱いでいき、最初の一回目では上半身をブラジャー一枚になるまで脱がなければなりません。どちらかのペアが四敗して女子が全裸になった時点でゲームは終了。服が残っている方が最終的な勝者です」
「いやいやいやいやちょっと待って。私やるとは一言も言ってないんだけど!?」
「残念ながらゲームが終わるまで元の場所には帰れません。強制参加です。ただし、勝ったペアには私が夢を叶えてさしあげましょう」
ルシファーの説明が一区切りついた所で麗がツッコむと、ルシファーはすぐさま返答。そしてその返答に強い反応を示したのは、幹人と真世だ。
(つまりこれに勝てば、俺は人気ダンサーに……? しかも相手は素人二人、こんなん負ける要素ねーじゃんか!)
(勝てば、私の夢が……)
「これはチャンスですぞまよさん! 勝ったらアイドルデビューできるではないですか!」
だが信司がそう言うと、真世は俯き微妙な反応。
「どうかされましたか」
「あっ、いえ……何も」
「さて、それでは早速ゲームを始めましょう」
夢が叶うという言葉にざわつく中で、ルシファーは強制的に開始を宣言。この場に軽快なパーカッションが流れ始めた。四人の参加者は、慌ててそれぞれ自分の覚える振り付けに注目した。
リリムは軽やかにステップを踏む、キュートでポップなアイドル系のダンス。最初の一回目ということもあり、振り付け自体は難しい動きも無くシンプルだ。
対してルシファーは何を思ったか、幼稚園児のお遊戯会と見紛うが如き稚拙な踊りを始めた。銀髪長身の美男子が大降りに掌をパンパンと叩きながら笑顔で雑な足踏みをする姿は、見る者の困惑を誘う。
(最初の一回だから簡単なのをってのはわかるが、これは流石に俺らを馬鹿にしすぎじゃね?)
五秒が経ってお手本は終了。ルシファーとリリムはまっすぐ立った姿勢に戻る。
「はい、ここまで。皆さん覚えましたね。では、早速やって頂きましょう」
再びパーカッションが流れ始め、四人は慌てて踊り始めた。頑張って振り付けを思い出しながら拙い動きで踊る真世に対して、麗は戸惑いこそあれどきびきびとしたキレのある動きを見せる。信司はこの間の抜けた踊りが妙に様になっており、そして幹人は。
(こんなダッサい踊りを何で俺が……)
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「ではスコアを発表します。まず矢島君、4点。途中までは上手くできていましたが、足踏みが一回足りませんでした」
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最初から挫いている信司を見て、幹人は余裕綽々。次はリリムが、得点を発表する。
「で、真世ちゃん、3点。最初の手の動きが上下逆だったのと、最後の辺りで脚の動き矢島君につられちゃってたので2点減点ねー」
「ああ~」
おちゃらけた様子のリリムであるが、振り付けの間違いはきっちりと見ている。
「二人のスコアを合計して、矢島君&君島さんペアは7点です。では続いてもう一方のペアを。まずはリリムから」
「はーい! 麗ちゃんは……5点! パーフェクトおめでとう!」
「よしっ」
「いやー、ボクの可愛いダンスを完コピしてくれてるのを見るのは楽しいねー」
「そりゃ間違えたら脱がされると思ったら気合いも入るよ」
無事完遂して安心した麗。その正面に立つ幹人も、自分のことのように得意げだった。
(まあ、麗なら当然だろう。それで俺もパーフェクトで圧勝だな)
「畑山君、0点」
が、直後にルシファーから発せられた言葉に耳を疑い、ぎょっとしてルシファーの顔を見た。
「は? いや待って」
「畑山君、最初に出す足は左なのに右から出していましたね。そしてそのまま最後まで手本と逆の足で足踏みし続けていたため、0点です」
幹人は絶句した。幹人は丁度手本と鏡写しになる形で、逆の足を出していたのである。
このゲームは振り付けを間違えている時間が続く度減点されてゆく。最初に一つ間違えた時点で全てが駄目になる可能性を秘めた、恐ろしいルールだ。
だがそれ以上に、そもそも幼稚なダンスだと舐めてかかったことが最大のミスだと言わざるを得ない。
恥をかかされた幹人は、拳を震わせる。
「合計して5点。よって今回の勝者は、矢島君&君島さんペアです」
「お、おお。勝ちましたねまよさん」
「そうですね」
意外にも勝ててしまったことに、当の信司と真世は喜びつつも驚いている様子だった。
「というわけで宮田さん、早速脱いで頂きましょう」
「え、ホントに脱ぐの!?」
「勿論です」
「す、すまん麗! 俺のせいで!」
「うー……」
掌を合わせて頭を下げる幹人に、麗は唸り声を上げた。
脱ぐのを渋る麗に、ルシファーはいつもの煽り文句。
「ちなみに自分で脱がない場合は、私が魔法で脱がせます」
「ええー……最悪なんだけど……」
観念してTシャツを捲り上げる麗。幹人はどぎまぎして目を逸らそうとするも、体が言うことを聞かず視線は麗へとまっすぐ向けられていた。
細く見えて適度に鍛えられている、引き締まった上半身。シンプルなグレーのスポーツブラはさして色気を感じさせるものではないが、好きな女の子の下着姿というだけで既に幹人の下半身は脈を打ち始める。
「……言っとくけど、スポブラはダンス用で普段使いはもうちょっとお洒落なの着てるから」
頬を染め幹人をじとっと横目で見つめる麗は、恥ずかしげに両掌を胸に当てた。
「では、二回戦を始めましょう」
「タンマ! もうちょっと待って!」
「駄目です」
一時停止を求める幹人に、ルシファーはきっぱりと拒否。股間の隆起を治める時間など、与えてはくれないのだ。
すぐにパーカッションが鳴り始め、ルシファーとリリムは踊り出す。
今度のリリムのダンスは、可愛い路線だった先程とは一転。麗の一番得意なヒップホップで陽気に舞う。
一方のルシファーはと言えば、踊る阿呆に見る阿呆、という歌が聞こえてきそうな阿波踊り。これには幹人も呆れた。
(またこういうやつかよ……)
だけども踊らにゃ損々である以上は踊らざるを得ず、幹人はしっかりとこの踊りを瞼に刻む。
そしていよいよ参加者四人の踊る番。正面のパートナーの振り付けにつられないように、手本と鏡写しになって逆の手足を出さないように、一回戦で起こったミスに気を付けて踊る。
両手を上げなければならない都合上、テントを張った股間を隠すことのできない幹人は非情に恥ずかしい思いをさせられる。それも目の前で好きな女の子がブラジャー丸出しで踊っているのだから、いつまで経っても勃起は収まらないのである。
だがその幹人から視姦されている麗はといえば、先程の恥じらいから一転してまるで露出を気にしていないかの如く、決め顔を崩さぬままきびきびした動きでクールに舞う。
(こいつ、俺に見られてるのが気にならないのか?)
スポーツブラ程度なら、このくらいの布面積の衣装で踊る女性ダンサーはそう珍しくもない。
それに思い起こせば麗はビキニ姿やレオタード姿を平気で幹人に見せてくるので、気にしているのは自分だけなのではと幹人を焦らせる。
(やっぱ俺、こいつから男として意識されてないよな……)
パーカッションが止み、踊る時間はそこまで。ルシファーとリリムは、得点の発表に入る。
「ではまず矢島君、4点。最初に足がもつれたので1点減点ですが、その後はよくできていました。次に畑山君、5点。おめでとうございます」
(こんなん踊れても別に嬉しかないんだがな)
複雑な気持ちになりつつも、とりあえず信司には勝った。後は女子の得点である。
「真世ちゃん、3点。頑張ってはいたんだけどねー、ちょっと付いていけてないとこがあったり、また矢島君につられちゃってたとこもあったね」
「ああー……」
「そして麗ちゃんは、また5点満点! 流石!」
「今回はあたしの一番の得意分野だからねー」
(俺だってヒップホップは一番得意なんだよ。俺にも躍らせろ)
(あはは……幹人ってば何考えてんのか丸わかり。あたしは阿波踊りも好きだけどなー)
女子だけ真っ当に格好良いダンスを躍らせてもらえて、幹人は不服が顔に出てくる。その幹人の仏頂面を、麗は苦笑いで見つめていた。
「スコアを合計して、10対7。よって今回は畑山君&宮田さんペアの勝利。君島さんは服を脱いで頂きます」
「あぅぁ……」
完敗を喫した真世は、瞳を潤ませる。
だが目の前で麗が脱ぐ姿を見ている以上、自分だけ脱がないわけにはいかない。あまり抵抗することなく、素直にTシャツを捲り上げた。
今日の真世のブラは、白地にピンクの水玉。中学生らしさを感じさせる可愛らしい一品。だけども胸の中央にはしっかりと谷間を作っており、彼女が決して幼い体型ではないことを見せつける。
(あまり意識してなかったけど、まよさん小柄な割に胸は意外と……)
信司が見つめていると、真世ははっと気が付く。信司は気まずそうに視線を逸らすが、その後真世が頬を赤くして両手で隠したのは意外にも胸ではなくお臍の辺り。
引き締まった腹筋の麗とは対照的な、少しだけお腹の出た自分のプニプニ体型。下着を見られるよりも、そちらを見られる方が真世にとっては恥ずかしい気にさせられるのだ。ましてや今は、すぐ近くに比較対象がいるのだから。
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「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
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