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第二章

第53話 恥ずかしい秘密を言えなきゃ×××を見せるゲーム・1

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 天体観測会を終えて旅館の大部屋に戻ると、学年一のイケメン柊一輝は大きな溜息をついた。

「どうした一輝、何かあったのか?」

 孝弘が尋ねると、一輝は苦笑い。

「まあ……察してくれ。彼女がいるって言ってんのにその彼女の実在疑われたら敵わないよ」

 この機会に一輝と思い出を作りたい女子達から告白をされ続け、一輝は疲れ切っていた。
 そんな一輝の話を聞いて、割り込んできたのは当真である。

「ぶっちゃけ俺も一輝の彼女の実在疑ってんだよな。だって絶対写真見せてくれないし」
「いちいち人に見せる必要を感じないだけだ」
「一輝の彼女、中学生っつったっけ。一輝と同じ中学って誰だっけ?」
「俺と刃、それと大山寺もだな」

 健吾が手を挙げて答えた。

「中学ん頃から俺と柊は女子の人気を二分してたんだぜ」
「で、どうなんだよ。中学の後輩にそれっぽいのいたのか?」

 自慢げに言う茂徳をスルーしつつ、当真は健吾に詰め寄った。

「さあ……その頃から彼女がいることを理由に告白全部断ってたけど、肝心の彼女については誰も知らないんだよな」

 健吾の言葉に、刃と茂徳も頷く。

「こりゃあマジでエア彼女の可能性出てきたな……」
「いや本当に実在してるから。写真は見せられないけど」

 どうしても写真を見せたがらないせいで、ますます疑われる一輝である。
 なお、一輝に片想い中の女子は皆ルシファーから一輝とのペアで脱衣ゲームに参加する資格は無しと認定されている。これこそ一輝の彼女がちゃんと実在する何よりの証拠なのだが、勿論普通の生徒達にはそんなことを知る由は無い。



 本日の女湯。

「凛々夢ー、まさか今日もあのゲームやるの?」
「ううん、今日は違うよ。ただし、今日配るタオルは全員このミニタオル!」

 そう言ってリリムが持ってきたのは、昨日のゲームでは三回戦で脱落した人に配られていたハンカチサイズのミニタオル。勿論この一枚では、胸と股間の両方を隠すことはできないのである。

「えーっ!?」
「別にいーじゃん。どーせ昨日みんなすっぽんぽん見せ合ってるんだし」
「それはそうだけど……」
「ささっ、隠せる所は一つだけ。みんなならどこ隠すー? ちなみにボクはおっぱい派」

 リリムは下半身を丸出しにしたまま、ミニタオルを絶壁のような胸に当てて隠した。


 リリム同様に胸を隠しているのは、相川凛華、倉掛里緒、永井百合音、野村菊花、桃井宏美、渡乃々可、神埼彩夏の七人。胸に何かしらのコンプレックスのある子が多い様子だ。
 なおその中でリリムと全く同じように胸だけを隠しているのは百合音、菊花、乃々可の三人。下半身のヌードに自信があったり、下半身を同性に見られてもさして恥ずかしくないと感じている面々だ。
 凛華、里緒、宏美、彩夏はそれに加えて股間にも掌を当てて隠している。両方隠したいけど強いてどちらか一方だけと言われたら胸を隠したい面子である。
 股間にミニタオルを当てて隠しているのは、島本悠里、須崎美奈、高梨比奈子、田村響子、富岡櫻、宮田麗、目黒冬香の七人。胸にタオルを当てるよりも貞淑な印象を感じさせる隠し方ということもあり、どちらかといえば大人しめな性格の子が多くなっている。
 その中で胸を丸出しにしているのは美奈一人だけである。他は皆股間にミニタオルを当てつつ胸にも手や腕を当てて隠している。なおその中でも両乳首を完全ガードしているのは悠里と響子の二人。片胸は掌できっちり隠せているものの腕で隠しているもののもう片方は多かれ少なかれずれていて見えてしまっているのが比奈子、櫻、麗、冬香の四人である。
 そして昨日と同じく、一人だけお尻にミニタオルを当てて隠しているのが三鷹佐奈。勿論前面は上も下も丸見えとなっている。

「おっ、綺麗に八人ずつに分かれたねー。よし、上半身隠してる子は『おっぱい隠すチーム』で、下半身隠してる子は『おまた隠すチーム』ね。佐奈ちゃんはお尻だけど。今日はこの二チームに分かれてゲームします! というわけで、こちらにくじをご用意しました。こっちの箱はおっぱい隠すチーム用、そんでこっちがおまた隠すチーム用。それぞれ一枚ずつ引いてってねー」

 言われた通り、それぞれのチームの箱からくじを引いてゆくB組女子の面々。どちらの箱にも1から8までの数字が書かれた紙が一枚ずつ入っていた。

「はい、同じ数字を引いた人が、今回のゲームの対戦相手です。数字の順番にゲームをやりまーす」

 とは言ったものの、今日はまずは一旦普通に入浴を始めるのである。
 そして全員が湯船に入ったところで、リリムが立ち上がった。

「それではこれより、本日のゲームを始めます! さっきのくじで同じ数字を引いた人同士でジャンケンをします。負けた方の人は、こちらの箱からくじを引いて貰います」

 リリムは一度湯船から出て、大浴場の隅に置いておいた箱を持ってきた。先程のくじを入れていたのとは別の箱である。

「このくじにはお題が書かれていて、負けた人はそのお題に沿って自分の恥ずかしい秘密を打ち明けなければいけません。なお、秘密を打ち明ける時は立ち上がってみんなに裸を見せながらやります。その際に隠してはいけません!」
「ええーっ!」

 恥ずかしい秘密と裸を隠せないことの二重の羞恥。なかなか恐ろしい罰ゲームを考えてくるものである。

「それでは早速一回戦! 恋咲凛々夢VS富岡櫻ちゃん! よーし、勝負だよ櫻ちゃん!」
「ええ、負けませんわ」
「ちなみにー、恥ずかしい秘密がどうしても言えない時は、代わりにアナルを見せるでも可!」

 そう言ってリリムは昨日と同じようにお尻を突き出し左右に開いて見せる。
 さも罰ゲームがどうしても嫌な人への救済策のように言うが、果たしてどちらがマシかという代物である。

「そんな、いくら同性といえど彼以外の方に見せるだなんて……」
「彼氏になら見せられるんだね櫻ちゃん」
「それは、まあ……」

 櫻はポッと頬を染めた。


 そんな下世話な話はさておき、早速一回戦のジャンケンが始まった。

「ジャン、ケン、ポン!」

 リリムが出したのはグー、櫻はパーである。

「ゲーッ、ボクの負けぇー? しょーがない、くじ引くか」

 前回に続き、体を張ってルール説明をする羽目になったリリム。箱から一枚くじを引き、そのお題を皆に見せる。

「お題は、えっちの話! ボクの得意分野じゃーん」

 ムフッといい笑顔を浮かべた後、リリム堂々と立ち上がり幼児体系な裸体を見せびらかしながら自分の「恥ずかしい秘密」を話し始める。

「実はボク……彼ピとのえっちでいつも先に何度もイかされちゃいます!!!」
「それどう考えても自慢だろ!」

 真っ先にブーイングを飛ばしてきたのは美奈である。

「彼氏がH上手いこと自慢したいだけだろ!?」

 リリムと同じチームであるはずの里緒までもがブーイングしだす。先日奇跡のように相性抜群の彼氏と巡り会えた里緒であるが、以前は短小な上にヘタクソな彼氏に悩まされる身であった。

「えーっ!? これ結構ガチで恥ずかしいやつだよー!?」

 淫魔の価値観では、それは相当恥ずかしいことなのである。

「えー……せっかくボクが超恥ずかしい秘密を打ち明けたのにブーイングまみれでしたが、二回戦始めます。倉掛里緒ちゃんVS宮田麗ちゃん!」
(うーん……Hの話で恥ずかしい話だったらネタ豊富ではあるけど……負けたくないなー……)

 そう思いながらジャンケンに臨む里緒はグーを出し、対する麗はチョキ。

「よっしゃ勝ったー!」
「うひぃー、なんかあたし昨日といい貧乏くじばっか引いてない!?」
「それじゃあ麗ちゃん、くじ引いて!」

 リリムに箱を手渡された麗は、できる限り簡単なお題でありますようにと願いながらくじを引いた。

「えー? 小学生の頃の話かー」
「はいはい麗ちゃん、話す前に立ち上がって」
「ええー……」

 胸と股間を隠しながら渋々立ち上がる麗であったが、今度はリリムに隠さないのがルールだと言われて隠していた手を渋々と退ける。脚をぴったりと閉じ、拳を握って恥ずかしさに耐えながら麗は話し始めた。

「んー……じゃあ、言います。あたし小学生の時、先生のこと間違えてお母さんって言っちゃったことあります! 以上!」

 そう言い切ると、麗は飛び込むようにしゃがんで湯に裸体を隠した。

「おー、あたしもやったことあるわー」

 美奈がそんな反応を返し、他にも身に覚えがあると感じた者が複数。万人に刺さる定番のあるあるネタである。だけどもそれに共感できないのがリリムであった。

(んー、ボクはそういう経験無いなー。淫魔学校でもそんなの見たことなかったし。淫魔は親子の概念希薄だもんね。ボクだって両親の顔と名前くらいは知ってるけど、殆ど会ったこともないし)

 中学生までに相応する時期を、他の生徒とは全く違う環境で過ごしてきたリリム。皆とそういう気持ちを共感できないことに、どこか寂しさを感じたのである。


 三回戦は、相川凛華VS目黒冬香。

「恥ずかしい秘密……ね。お題が何か次第ではあるけれど……」

 冬香はそう言いながら、思い当たることを色々と思い出している様子。

「よーし、行くよ目黒さん」

 気合を入れる凛華。そして二人の出した手は――凛華がパーで冬香がチョキ。

「ええー……」
「私の勝ちね」

 鼻で笑って勝ち誇る冬香。凛華はくじ箱に手を入れて取った紙を開くと、何だか嫌そうな顔をした。

「うわぁー……Hの話だよー……」

 それはリリムが引いたのと同じお題であった。

「はいはい凛華ちゃん立って立って。体は隠さない」

 立ち上がって両腕を胴体の横にぴったりと付けた凛華は、その優れたスタイルを皆に見せる。

「Hの話とか言われても私まだ龍之介君とHどころかキスすらしてないんだけど……もう付き合って九ヶ月も経つのに」
「だったらアナル見せる?」
「どう考えてもそっちのが恥ずかしいよね!? 大体そんな所まだ龍之介君にだって見せたことないんだから!」
「じゃあ、凛華ちゃんに特別大ヒント! えっちってのは、実は一人でもできるんだよねー」

 そう言われて、凛華ははっとする。

「ああもう、言えばいいんでしょ! 私は、龍之介君とのHを想像しながら一人Hしてます! 以上!」

 半ばヤケクソ気味に言い放ち、凛華は湯に体を隠した。

「へぇー、凛華ってそうなんだ。私はTL漫画派ー」

 まだゲームをやってもいないのに、自分の使っているオカズを暴露してくれる佐奈。悠里は親友二人のそんな話を聞いて顔を真っ赤にしていた。凛華と佐奈と悠里の三人は下ネタ方面の会話をすることは滅多にないので、親友のそういった一面を知るのは新鮮であった。


 四回戦。渡乃々可VS須崎美奈。

「乃々可ちゃんの恥ずかしい話って、お題次第では相当エグいのが来そう」

 澄ました顔をする乃々可を見て、そう予想するリリム。

「そうね。ヴァージンにはきっと刺激が強いだろうから、場合によってはアナルで手を打つわ」

 とうに人から見られ慣れている乃々可は、他の女子が躊躇うことを堂々と言い放った。

「あたしはケツ穴見せるのは勘弁したいなー。ケツ毛ボーボーで汚いし」
「でも山本君はそれ好きなんでしょ」
「まあ、ね」

 一方の美奈は、お題を問わず恥ずかしい話をする方向で固める。
 そして二人がジャンケンで出した手は、乃々可がパーで美奈がグー。

「うげっ、マジかー……マシなお題であって欲しいなー」

 とは言ったものの、割と普段から大地との情事の話を女友達に平気でしている美奈である。えっちの話が出てもさほど困ることはなさそうに見える。
 そしてくじを引いた美奈は、そこに書かれた「自分の体の話」を見て苦笑い。

「これさっきのケツ毛の話でよくない?」
「一回話しちゃったからもうダメー。別の話で!」
「ええー……ん、じゃあ……」

 腰に手を当てて立ち上がる美奈。ポーズがポーズだけに皆の視線が自然と腰部に向き、剛毛ぶりが際立って見える。

「あたし、冬はワキ毛剃ってません! 以上!」

 手を腰から頭の後ろに移動させ、腋見せポーズで衝撃の事実を暴露。今は人に見られる機会の多い時期であるため綺麗に剃っているが、ズボラ故に冬にはこれが見るも無残なことになるのである。

「で、今年の冬はどーすんの?」
「今年はまあ、見せる相手がいるわけだし……」
「でも山本君の毛フェチぶりから察するにさあ、案外腋毛にもハマりそうな気しない?」
「いや、いくらアイツでも流石にそれは……」

 と言ってみたものの、内心ありえなくはないと美奈は思ってしまった。
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