脱衣ゲームでカップル成立 ~史上最強の淫魔、光堕ちしてキューピッドになる~

平良野アロウ

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第二章

第65話 ルシファー先生の性教育特別授業

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「おはようございます黒羽先生。おや、その左手はどうされましたか」

 職員室に入って早々、ルシファーは輪島から左手のことを訊かれた。
 ルシファーの左手は現在、包帯で覆われている。魔族が聖剣によって負った傷は、そうそう簡単には治らない。夜通しリリムと体を交えて回復力を高めても、脇腹の刺し傷と左手の火傷はルシファーの身を蝕み続けるのだ。

「ああ、これですか。実は今朝、熱々の鍋にうっかり触れてしまいまして」
「それは災難でしたね」
「ははぁ、最近怪我が多くて憂鬱になりますよ」

 そう言いつつもさほど気にしてはいないアピールのように、ルシファーはへらへら笑ってみせた。
 そのルシファーの瞳には、輪島が一夜明けても経験人数が変わっていないことが見えていた。即ち結局坂本と体の関係を持つには至らなかったことを意味している。
 と、そうしていたところで、水泳部の朝練から戻った沖田が職員室に入ってきた。

「おはようございます」
「おや沖田先生、おはようございます」

 ルシファーが挨拶を返すと、一人の教師がそこに割り込むようにこちらにやってきた。中年童貞教師の渡部である。

「おはようございます沖田先生。先日の合コンは如何でしたか?」
「あー、その……特に成果はありませんでした」
「それは良か……残念でしたね」

 一瞬本音が出た渡部である。

「残念といえば、彩夏ちゃんがうちの学校に来るのもこれが最後なんですよねぇ。どうせならずっといてくれてもよかったのに」

 続けて渡部が言う。目的を果たした彩夏にとって綿環高校にいる意味はもう無く、一学期の終業式である今日を最後にこの学校を去り元の学校に戻ることとなったのである。


 そんな彩夏は、案の定教室にてその件で同級生達に囲まれていた。

「彩夏ちゃん、急に転校なんて悲しすぎるよー!」
「ごめんねー。私にも芸能活動の都合があるから」

 寂しがる麗に、彩夏は苦笑いしつつ優しい口調で答える。

「彩夏ちゃん! 僕、これからもずっと彩夏ちゃんを応援し続けるよ!!」

 信司は熱い想いを告げるが、それは愛の告白ではなく今後もファンでい続けるという宣言だ。あくまでも彩夏への感情は恋愛感情ではないことの明確化でもある。


「そういえばニュース見たか」

 彩夏が仲の良い生徒達と楽しく話しながら別れを惜しんでいるのを遠目で見ながら話すのは、クラスの地味男子筆頭である健吾と刃である。

「阿僧祇那由太失踪したんだってな」

 健吾が何気なく言ったその言葉に、彩夏がピクリと反応して真顔になる。

「彩夏ちゃんが気にすることじゃないよ。悪いのはテュポーンなんだから」

 リリムが小声でフォローすると、彩夏は作り笑いを返した。
 するとそこで担任の黒羽が教室に入ってきたので、皆は会話を切り上げ自分の席に戻る。

「あれ、黒セン手ケガしたんスか?」
「ええ、それが……」

 大地に尋ねられ、ルシファーはここでも左手の件について説明することとなった。
 そして彩夏本人が話したことにより既に皆知っていたことではあるが、このホームルームにてルシファーの口から改めて彩夏の転校が告知された。
 その後体育館に移動して終業式が執り行われたが、彩夏本人があまり騒ぎになることを望まなかったためそこでは彩夏の転校については触れられず。教師陣と2年B組の生徒達だけが知らされることとなったのである。


 終業式を終えて職員室に戻った教師陣は、帰りのホームルームで配るプリントを教頭から受け取った。その内容は主に夏休み中の生活態度について書かれたものである。

「こういうの貰ってもさ、結局それを無視して羽目外す馬鹿は出るものなんですよねぇ」

 プリントに目を通しながら、渡部が嫌味ったらしく言う。

「羽目外しまくってハメまくる奴とかさぁ」

 それに更に若干わかりにくい上に品の無いオヤジギャグを付け加えられ、職員室は静まり返った。

「妊娠して退学になる奴とか、毎年のように出てくるんですよね。高校生の分際でパコパコパコパコと……もういっそ校則で恋愛禁止すればいいのに」

 そしてその滑った話を構わずまだ続けるのである。オヤジギャグはともかくとしても彼の言っていることはそれなりに筋が通っており、教育者としてそういったことを問題視するのは間違ってはいない。だが彼が生徒の恋愛をこうも強く敵視するのは、彼自身がそんな青春時代を送れなかったことへの妬みに由来することはこの場の誰もが察していた。

「不純異性交遊ですよ高校生のセックスは。黒羽先生もそう思いませんか」

 急に同意を求めてこられたルシファーであるが、それについては予想はしていた。同じ独身中年として、渡部は黒羽を非モテの同類として見ているところがあるのだ。
 ただ勿論ルシファーとしては、この男を同類として見てはいない。そこはきっちり反論しておくのだ。

「高校生のセックスについて私見を申すのでしたら……ちゃんとした恋人同士が同意のもと、適切な避妊を施した上でするならば健全な交際の範疇だと考えております」

 同類だと思っていた相手に正反対のことを言われ、渡部はぽかん。ルシファーは続ける。

「とはいえ実際に不十分な避妊等、セックスにまつわるトラブルで辛い目に遭う生徒が度々出てしまうのは事実です。そもそも日本の性教育は高校生以下はセックスをしないことを前提に作られている部分があり、正しいセックスの仕方を教えません。結果としてアダルトビデオを始めとしたポルノコンテンツをセックスの教科書として使ってしまい、不十分な避妊や相手を傷つけてしまうようなセックスをそれが正しいものと誤解して覚えてしまう人が後を絶たないわけです」
「私も保健教科を教える身として、それは痛感しています」

 ルシファーの話を聴いていた沖田が挙手した。

「ですが我々の勝手な判断であまり踏み入った性教育をするのは、教育委員会や生徒の保護者等からクレームを入れられることに繋がりもどかしい所です」

 そういった話がされる中で、気まずそうにしているのが渡部だ。便所の落書きやチラシの裏のような感覚で言ったしょうもない愚痴だったのが随分と真剣かつ深刻な方向に話が進んでしまい、言い出しっぺながら話に加われなくなっていたのである。

「ほら、そろそろホームルームの時間ですよ。無駄話はここで切り上げて、各自教室に行きましょうか」

 そして遂にはそう言って、自ら話を打ち切るに至ったのである。



「それにしても、黒羽先生がこうも熱く語られるとは驚きました」

 教室が隣同士であるルシファーと沖田は、そう話しながらそれぞれの教室に向かう。

「私はただ、生徒達に素敵な恋をして幸せになって欲しいだけですよ。ま、こんなおじさんがそんなロマンチックなこと言っても気持ち悪いだけなのは自覚してますがね」
「そんなことはありませんよ。黒羽先生の生徒を思う気持ちが伝わってきました」
「そう言って頂けるなら私も少しは気が楽になりますよ。あ、それでは私はこれで」

 先に自分の教室に着いたルシファーは沖田に別れを告げて、教室の扉を開けた。
 帰りのホームルームでプリントを配り夏休み中の諸々について話したら解散となり、いよいよ本当に一学期終了である。
 だが彩夏と直接話ができるのはこれが最後だと思うと皆彩夏と話しに行っており、なかなか教室を出て行かなかった。教室はさながらプチお別れ会の様相である。

「黒羽先生」

 ルシファーが暫く教卓から見守っていると、彩夏の方から声をかけられた。ルシファーは立ち上がってそちらに行く。

「短い間でしたが、大変お世話になりました。先生には大変ご迷惑をおかけしましたが、そんな私にもとても良くして頂いてとても感謝しきれません」
「いえいえ、私の方こそ神崎さんの担任を務めたことは良い経験になり、貴方から教わることも沢山ありました。貴方の活躍を、今後も陰ながら応援していますよ」

 深々と頭を下げて感謝を口にする彩夏に、ルシファーは穏やかな笑顔で返した。


 プチお別れ会もようやく終わって学級委員の二人と共に教室の最終チェックを済ますと、鍵を閉めて教室を後にする。

「それでは島本さん、佐藤君、さようなら」
「はい、さようなら黒羽先生」

 学級委員の二人と別れて職員室へと向かうルシファーであったが、その足は途中の人気の無い場所で止まり姿が消える。
 かねてより立てていた計画を、今こそ実行に移す時が来たのだ。



 一緒に帰ろうと二人で校内の廊下を歩いていた悠里と孝弘は、気が付くと教室のような場所の席に腰掛けていた。

「えっ?」

 突然の事態に驚き、辺りをキョロキョロと見回す二人。この場には他にも綿環高校の生徒が沢山おり、皆同じように驚いた様子だった。

「ようこそ愛天使領域キューピッドゾーンへ。私は愛の天使、キューピッドのルシファー」

 お馴染みの台詞と共に、その黒板の前に設置された教壇に姿を現したのは二枚の黒翼を携えた銀髪の美男子。この場に集められた生徒達の何名かにとっては、既に知った顔だ。
 佐藤孝弘と島本悠里。山本大地と須崎美奈。二階堂篤と高梨比奈子。横田健輔と野村菊花。香坂直樹と秋月穂乃可。都築秀と赤沢詩織。木崎大悟と新谷千穂。木場流斗と葉山千鶴。安西哲昌と幸村暦。芝田敦也と手島友恵。伊藤琢己と葉山好美。森沢元治と白浜譲。霧島司と姫川舞子。岡本清彦と倉掛里緒。志藤克義と蘇我陽毬。
 これまでルシファーによって結ばれた全ての校内カップルが、この領域に集められている。
 だがそれだけではない。
 川澄龍之介と相川凛華。久保謙哉と永井百合音。波川健とその彼女。一色英治と京本琴子。その他諸々、ルシファーによって結ばれたわけではない校内カップルも全て集められているのだ。

「ちょっと、またあんたなの!?」

 これで領域に召喚されるのが三度目となる暦が文句を言ってくるが、ルシファーは気にせず進める。

「これよりカップル限定・夏休み前特別授業を始めます。内容は端的に言うならば性教育です。皆さんの中には既に今のパートナーと体の関係を持っている方、この夏休みに体の関係を持つことを考えている方、そういうのは自分にはまだ早いと考えている方等、様々な立場の方がいるでしょう。ですがその中にもセックスについて碌な知識の無い方や、自分はセックスに詳しいと思っているけど実は間違った知識を覚えているという方は多いはずです。そこで今回皆さんには改めてセックスについて考え、学んで頂く場をここに用意しました。講師は私、ルシファーが務めさせて頂きます」

 今日の職員室でも話題になったことは、実は以前からルシファーが不安に思っていたことだった。せっかく自分が結んだカップルが、セックスに関するトラブルで不幸になって欲しくはない。そこでずっと計画を立てていたのが、この催しであった。
 高校教師としてでなく、キューピッドとして性教育を行う。それがこの問題に対してルシファーの出した答えなのだ。

「ここで教えるのは正しく安全な避妊並びに性病予防の方法や、相手を尊重し心身共に傷付けることなくお互い気持ちよくなれるセックスの仕方等です。既に経験のある方は自分がどのようなセックスをしていたか振り返り、今後より良いセックスをできるようにするための機会として。近いうちに初めてのセックスを考えている方はそれに向けての予習として。そしてまだ早いと思っている方にとっても、将来必ず役に立つことであり学ぶ価値の大きなものです」

 ルシファーがそう話す間にも、生徒達はざわついていた。既に脱衣ゲームを経験した生徒達はまだしも、そうでない生徒達の困惑は大きかった。

「最後には小テストを行い、皆さんがどれほど真剣に授業を聴いていた採点致します。なお、その小テストは脱衣ゲームとなっております。回答を間違えた分だけ服を脱がされますので、ご注意ください。なお、今回は個人ごとの採点となり男子も脱がされます」

 そして今回の肝はこれである。小テストを脱衣ゲームという形で行うことによって、脱衣ゲームに参加しなければ紋章を刻めないという条件をクリア。ルシファーによって結ばれたわけではない全ての校内カップルにも天使の加護を与え、淫魔や性犯罪者からの被害に遭うことを防ぐのである。

「こちらに教科書とノート、筆記用具をご用意しました。ご自由にお使いください」

 生徒達の机の上にルシファーの言った三点セットがポンと現れる。これまた魔法を見たことのない生徒にとってはびっくりすることだ。

「では、これより授業を始めます」



 特別授業を終えて校庭を出ようとする大地と美奈は、どこか呆けた様子で晴れ渡る夏空を見上げていた。

「なんっつーか、さ……俺のやってたセックス……っつーか、AVでやってるセックスって間違いだらけだったんだなーと……」

 大地は典型的なAVを手本にセックスしていたタイプであり、それだけにカルチャーショックも大きかったのである。

「なあ美奈、正直に言って欲しいんだが、お前セックス中俺にされて嫌だったこととか痛かったことって、ある?」
「ん、まあ、多少は……」

 美奈は大地から顔を逸らして斜め下を見つつ、頬を掻いて苦笑い。

「すまん、マジですまん」

 掌を合わせて頭を下げてきた大地に、美奈はぎょっとしてしまう。

「ちょっ、そこまで謝んなくたっていいって! 別にそこまで気にしてないし!」
「やー……でも俺無意識にお前のこと傷つけちゃったりしてたわけだろ?」

 本気で申し訳なさそうにしている大地を見て、美奈はむしろ自分が悪いことしている気にさえさせられた。

「それに大地、あんなに真剣に授業聞いて、最後の小テスト百点満点だったじゃん。大地のそういうとこ、あたし好きだよ?」

 直近の期末試験こそ全教科赤点回避の実績を残したものの、普段は赤点常習犯の大地である。他の受講者の中には授業を全く聞かず全裸にされていた男子もいたにも関わらず、これは物凄い快挙だ。

「まあ、そりゃあ、俺と美奈にとって大事なことだからな……」

 普段おちゃらけているだけにこういう真剣なことを言うのには照れがある大地。こちらも美奈から顔を背け、口をすぼめてぼそっと言った。

「ところで美奈よ」

 そこから一転、普段通りの明るい声色で美奈の顔を見る。

「これから俺んち来ないか。今日学んだことを実践したいんだが」
「ん、オッケー」

 ロマンチックさの欠片もないお誘いだが、美奈はキラリと前歯の光る笑顔で快く承諾。これがこのカップルのスタイルなのである。


 同刻、家が隣同士の幼馴染である篤と比奈子も二人で帰路を歩んでいた。

「あー、その、ひな……?」
「なぁに、あっくん」

 手を繋ぎながら上目遣いでこちらを見てくる比奈子に、篤の心臓が高鳴る。

「さっきの授業のことなんだが……」
「えへへ……えっちのお勉強、しちゃったね……」
「ん、ああ……」

 マタタビを浴びた猫のようにとろんとふやけた笑顔を向けられて、篤はますます心臓を撃ち抜かれた。
 大地と美奈が「既に体の関係があるカップル」なのに対し、この二人は「夏休みに初体験することを考えているカップル」に該当する。
 臨海学校でリリムの仕掛けた混浴ハプニングにてファーストキスをした上で一気に距離を縮め、初体験一歩手前まで行った二人。再び一緒に入浴する約束は交わしているものの、今は篤にとって部活の大会を控えた大事な時期であるためまだその約束は果たせていない状態である。

「ひな、あまり外でそういう話するな。他の人に聞こえる。それにそのデレデレの顔も……他の男に見せたくないから」
「うん、わかった」

 そう言ってきりっとした顔を作って見せる比奈子だが、すぐに綻びてご機嫌そうな笑顔になった。
 そんな比奈子の手を握りながら、篤は思う。

(正直俺はあの手の知識には疎くて、ひなを傷つけることなくちゃんとできるか不安だった。だからあの授業を受けることができてよかったと思ってる)

 恋人には勿論、誰にも打ち明けられない悩みを持つ少年の心にルシファーが灯した希望。この先に待つ未来は、幸せでいっぱいだ。


 そしてもう一組。孝弘と悠里は手を繋いで帰りつつも、お互いにそっぽを向いて顔を合わせられずにいた。
 まだキスもしていない純情カップルがいきなりあんな話を聞かされれば、少なからず気まずくなるのは当然の話だ。

「えっと……悠里?」

 とりあえず何か会話をしようと孝弘が声をかけると、悠里はびくりと体を震わせた。

「さっきの授業についてだけど……」
「わっ、私達にはまだ早いよね! そういうの!」

 裏返った声で、挙動不審気味な返答。
 実際授業が始まった当初の悠里はまさにこんな感じでひどく恥ずかしがっていた。だが途中からはとても真剣な表情でノートを取っていたことが孝弘は印象に残っている。

「ん、ああ……」

 明確にまだ早いと言い切られて、男としてちょっと期待していた孝弘は若干がっかりもしてしまう。
 だが悠里はそう言った後、また孝弘から背けて俯いた顔を真っ赤に染めていた。

「……でも、将来的にはきっと必要なことだから……今日の授業を受けられてよかった」
「ああ、俺もそう思う」

 悠里のいじらしい姿にときめきつつ、孝弘は悠里の手に絡めた指に優しく力を入れた。

「それにしてもあのルシファーって人――というか天使? 俺達が気持ちを伝え合う手助けをしてくれた上にこんなことまで面倒見てくれるなんて、本当に凄い人だよな」
「うん、無償の人助けをあんなにできるだなんて、きっと本当に優しい人。ちょっと現実味ないけど、天使って本当にいるんだって思っちゃう……」

 そう言う悠里は、ふとルシファーに関して気付いたことを思い出していた。

(そういえばあの人、黒羽先生と同じ所に包帯巻いてた……)

 当然ルシファーは、左手に包帯を巻いたまま今回の授業を行っている。

(まあ、偶然だよね)

 とはいえルシファーと黒羽の印象があまりにも違いすぎるので、いかに細かい所に気が付く悠里といえどそこに関係性を見出すまでには至らなかったのである。



 そしてそのルシファーはといえば。

「先生のバカ! アホ! おたんこなす! 要介護老人! あんな人数一度に召喚したらぶっ倒れるに決まってんでしょー!」

 彩夏との対決後と同じく馬乗りになって泣きながら腰を振ってお説教するリリムに対し、最早体も碌に動かせないルシファーは床に大の字になり無抵抗でされるがままにしていた。
 全員を領域に召喚した時点で、既にルシファーの魔力はほぼ尽きていた。にも拘らず、気合と根性で平静を装って最後まで授業を続けたのである。それが終わるや否やプツンと糸が切れたかのようにぶっ倒れたのは言うまでもない。
 暫く行為を続けて喋れるくらいにはなったルシファーは、リリムの顔を見上げてフッと息を漏らす。

「お前がいてくれるから、安心して無茶ができるんだ」

 度重なる無茶な魔力消費と、リリムによる回復。最早今のルシファーは、リリム無しでは立ち行かない体になってしまっている。普段粗雑に扱っているようで、本心では常々感謝しているのである。
 ましてやこうして酷く消耗した状態では、ポロっと本音が出てしまうのも無理はない。
 そしてそんな弱気で素直なルシファーの姿を見せられて、上に乗るリリムは顔を真っ赤に火照らせて腰の動きもピタリと止まっていた。
 今は自分が優位のつもりだったのに、たった一言で完璧にノックアウト。この男にはどこまで行っても敵わないと、つくづく思い知らされたのである。
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